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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百九十九話

前回のあらすじを三行で


馬車で移動

二人の呼び方

怖いディーナ

 この浮島にも一日があり、夕方になると徐々に日が落ち夜には暗くなる。そのため、いつも通り蒼太達は夜間は聖域のテントで休み、昼間は行軍という流れで動いていた。夜間の見張りはアトラと古龍が買って出てくれた為、蒼太たちは疲れをとることができた。

 ゆっくりとした速度ではあったが馬車での移動であったため、蒼太達は四日で目的の神殿に辿り着いていた。


「ここが神殿か」

「すごいですねえ」

 大きな石造りのそれは神でも祭っているのかというくらいに荘厳な雰囲気をかもし出しており、ディーナは見上げながら感嘆の声をだしていた。

「すっごいでしょ、あたしたちはずっとここに住んでるけど。もっとずっとずっと前からこの建物はあるんだってさ」

 レイラは自慢げに胸を張っている。

「それで、今はグレヴィンの手が加わってる、と。やっかいなことになってそうだな、わざわざ族長専用ルートがあるってことはそれ以外は、お察しってことだろうな」

 蒼太はうんざりした顔でそう言った。


『グレゴール殿がもし全力を出していたら、と思うと震えるものがある』

「またまた、そんなあ。みんななら余裕でしょ! あれ? ほ、本当に?」

 アトラが真顔でそんなことを言ったため、レイラは茶化した。しかし、アトラが変わらない表情で見返してきたため、レイラは首を横に向け蒼太やディーナの表情を確認する。

「正直なところを言えば、俺も積極的に行きたい場所だとは思えない」

「私もです」

 二人も真顔で言ったため、思わずレイラの動きが固まる。


『かっかっか、それは楽しみだのう。お主らがそんな顔をするとは、歯ごたえがありそうだのう』

 古龍は一人嬉しそうに言ったが、それに乗れるようなテンションの者はいなかった。

「一応説明しておくが、グレヴィンは俺の錬金術の師匠だ。一緒に旅をしていた時点で様々なアイデアを持っていて、俺の知識も吸収して色々なアイテムを作り出していた。魔王との戦いで死んだと思っていたが、その後数百年生きたとなると俺の想像を超えるようなものを作っていても不思議じゃないな」

 その言葉にディーナとアトラは大きく頷いていた。


「あ、あの、そろそろ帰りましょうか」

 レイラは怖気づいて、一人戻ろうとするがその襟首を蒼太に掴まれる。

「お前がいないと話が進まんから、さっさと行くぞ」

 蒼太はレイラをアトラの背中に投げて乗せ、そのまま入り口へと向かう。

「エド」

「ブルル」

 エドは蒼太に名前を呼ばれただけで全て察していると頷き、神殿の端に移動してそこに腰を落ち着けていた。


「よし、行くか」

 蒼太はそれ以上は何も言わずに一行の先頭を進んだ。

 レイラは起き上がってアトラに跨っていたが覚悟を決めたのか諦めたのか、逃げるそぶりはなくアトラから落ちないように掴まっていた。

 神殿の中に入ると、自動的に松明に灯りが灯って行く。このあたりもグレヴィンの作った装置だろうと蒼太は納得する。

「ふえー」

 レイラにはそれが物珍しいようで、口をぽかーんと開けて神殿の中を見回していた。


 しばらく直進していくと、大きな扉の前に辿り着いた。

「これが竜人族じゃないと入れないってやつか」

 正面の扉とは別に何やら不思議な装置が扉から離れた場所にあったが、そちらは族長専用らしく古龍が近寄っても反応を見せなかった。

「それじゃあ、レイラ頼む」

「わかったよ!」

 レイラは返事をすると、アトラから飛び降り扉の前へと進む。


「……えっと、どうすればいいんだろ?」

 意気揚々と扉の前に立ったレイラだったが、何をすればいいのかわからず振り向いて首を傾げた。

「お前……知ってるんじゃなかったのか? 自信満々に自分が行くと言ってたから当然知ってるもんだと思ったんだが」

「いやあ、行けば何とかなるかなあと思って……」

 そう言って頭を搔くレイラのことを一同はしらーっとした目でみている。


『おそらくこれに触れるのではないかのう』

 唯一周囲の探索にあたっていた古龍が扉の横に何かあるのを発見した。

「それらしいのはこれくらいか……とりあえず手でも置いてみてくれるか」

「はーい」

 レイラが手を壁に当てるが何かが起こる様子はなかった。

「何も起こらないですね」

 ディーナが正面の扉をぺちぺちと叩いて確認するが、反応は見られない。


「ちょっと俺に見せてくれるか」

 蒼太が壁の横の装置を調べて行く。グレヴィンが作ったものならわかるかもしれない、そう考えた彼は仕組みを調べていく。

「これなら、何とか……これか」

 装置は板状だったが一枚捲くることができ、そこに手のマークが記されていた。

「レイラ、ここに手をあててくれるか?」

 蒼太は場所を移動し、装置の前をレイラへと譲る。


 レイラはまた何も起こらないのでは? とドキドキしながら手を合わせる。すると、大きな音をたてて扉が開いていく。

「本当に開いた……」

 自分が扉を開けたことにレイラは驚き、手と扉を見比べている。

「いつ閉まるかわからん、さっさと入るぞ」

 蒼太の声に一行は慌てて扉の中へとその身を滑り込ませた。そして、扉は蒼太の予想通りに再び大きな音をたてて閉まっていく。


『ふむ、よく閉まるとわかったのう』

「開きっぱなしだったら誰でも入れるだろ。だったら閉まる可能性も考えないと」

 蒼太は当たり前のようにいったが、他の面々は扉が開いたことに気を取られていたためその可能性を失念していた。

「あんたは冷静なんだね。色々知ってるみたいだし、実は結構すごい人?」

 レイラはここにきて初めて蒼太のことを見直していた。


「どうだろうな? とりあえず先を進もう。こっから先は気を引き締めていかないと何が起こるかわからないぞ」

 真剣な表情で言う蒼太に古龍も含めた全員が頷き、進行方向に目をやった。

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