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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百九十二話

前回のあらすじを三行で


ディーナ困惑

古龍、蒼太の仲間たちを分析

竜人族へと案内


『ところで、お主たちは竜人族の居場所のあたりはつけておるのかのう?』

 先ほど話をしていた谷のはるか上空で蒼太たちを背中に乗せて飛びながら、古龍は尋ねた。

「おそらくここだろうというのは予想はしている」

「えっ!? 本当ですか?」

 ディーナは蒼太の言葉に驚いていた。


「あぁ、といっても想像の範疇を出ないがな……これだけ竜人族の居場所についての情報が出てこないということは、地上にはいないだろうと予想できる」

 蒼太の指摘にディーナはなるほどと頷いている。

「と、なるとだ、残ってるのは海の中か……空の上ってことになるだろ」

 蒼太はにやりと空を指差しながら答える。

『ふむ、やはりお主は色々と聡いようだのう』

 古龍は蒼太とディーナのやりとりを聞いて、目を細めて笑みを浮かべていた。


「本にあった竜人族の聖地みたいな場所を示す言葉に、遥か空の彼方っていうのがあった。普通に考えればすごく遠い場所、の比喩表現と受け取れる。実際ディーナもそう思っていたようだからな」

 ディーナはうんうんと何度も頷いていた。

「だが、そのままの意味で受け取れば空にあるんじゃないかと想像できた。空を飛ぶことができるやつなんて限られてるから、余計に秘密になるんだろうな」

 古龍は蒼太の推理に感心していた。


『かっかっか、やはりお主は面白いのう。お主が予想している通りだ、我はこのまま高度を上げて雲の上にでる』

 そう言うと古龍はものすごい速さで飛行角度を上げて雲の中へと突っ込んでいった。

「きゃあ!」

 ディーナが声をあげたが、すぐに蒼太が風の防壁を張って雲の影響をゼロにした。

「大丈夫か?」

「は、はい。ありがとうございます」

 ディーナは魔法による変化に気づいて、蒼太へと感謝の言葉を述べた。


「おい、急に角度を変えすぎだぞ」

『悪い悪い、しかし実際この方向にあるから仕方ないのう』

 口では謝っていたが悪びれた様子もなく、いたずらを成功させたように楽しげに古龍は雲の中を飛び続けていく。

「わ、私なら大丈夫ですから」

 飛び立った当初に比べて今では蒼太が作りだした風の防壁で顔や身体にあたる水滴や風を防ぐことができたため、ディーナにも余裕が出てきていた。


『私も大丈夫だ、エド殿も大丈夫なようだな』

 蒼太はディーナだけではなく全員を覆うほどの大きな防壁を張っているため、諸々の影響を最小限に留めることができていた。

『うむうむ。ほら、そろそろ抜けるのう』

 その声に合わせて、古龍は雲の壁を突破した。そこは雲の下とはまるで別世界のように静まりかえっている。眼下には雲のじゅうたんが先が見えないほど広がり、上空もまた澄み渡る青空が広がっていた。

「ここにあるのか?」

『まあ、そう焦るな。ほれ、あの雲の塊が見えるかのう?』

 古龍が顔を向けて指し示した先には、大きな雲が楕円形の形で集まっていた。


「あれがそうなんですか?」

『うむ、あの雲の中に浮遊島があってのう。そこが竜人族の住処になっているんだのう。さて、行こうかのう』

 ディーナの言葉に返事を返すと、古龍は雲の塊に向かって行く。

「あれ、もしかして……」

 蒼太は何かを感じ取って、風の防壁に土の属性を加えて張りなおしていく。

 古龍が雲の中に入るとそこは雷が荒れ狂っていた。


「やっぱりか!」

 蒼太は防壁の強度をあげていく。

『かっかっか、さすがだのう。これを予想して防壁の属性を変更するとはのう』

 古龍は雷の属性も持っているため、自身へは影響がなかった。

「これを教えないところにあんたの意地の悪さを感じてるところだよ!」

 雷は特殊な軌道を描き、まるで蒼太たちを狙うかのように次々に古龍の背中に向かって来た。


 ディーナは目を瞑り、蒼太にしがみついていた。アトラとエドもこれほど間近で雷を見たことがなかったため蒼太とディーナに寄り添うように集まっていた。

「安心しろ、俺の防壁以上の威力じゃないから防げるはずだ。それに最悪何かあったら、こいつの背中に夜月を突き立ててその命を持って責任をとってもらうから」

 仲間を守るためなら何も厭わないという意思を持った蒼太の言葉に古龍はおもわず顔を青くする。

『だ、大丈夫だのう。我も防壁を張っておるから、お主たちにあたることはないのう』

 蒼太の防壁の威力の高さはわかっていたため古龍は手を出さないつもりだったが、その言葉を聞いてから慌てて自身の周囲に防壁を張っていく。


「ったく、最初からそうしていればいいんだ」

 蒼太は腕を組んで、古龍を睨みつけていた。

『す、すまんのう。からかいが過ぎたようだのう』

 焦りから汗が頬を伝うのを感じながら、古龍は蒼太たちへと謝罪した。

「わかればいいさ……それより、そろそろ抜けるところか?」

『う、うむ。ほれ見えてきたのう』

 雷雲の先に青空が広がっているのが見えた。


「これが竜人族の聖地か……」

 雷雲の中にいるはずだったが、なぜか上空には広々とした青空が広がっている。そして、明らかに外見の雲の体積よりもはるかに広い空間の中に、これまた巨大な島が浮かんでいた。

「さっきの雲はある種の結界のようですね……」

 ディーナは目の前に広がる光景に目を奪われつつも、冷静な分析を口にする。

『うむ、お主たちが持つマジックバッグや空間魔法の類に似たものかも知れんのう。あの雲を境界に、この空間と繫がっておる』

 古龍は誰かに説明されたわけではなかったが、この空間の仕組みを理解していた。


『強い気配を感じる。あの島に竜人族が住んでいるというのは本当のことのようだな』

 アトラは蒼太や古龍の言葉を疑っていたわけではなかったが、現状確認のためにそんな言葉を口にした。

「とりあえず、村だか街だかわらかんが集まっている場所を向かってくれ」

『承知したのう』

 蒼太の指示通りに古龍は浮島へと近づき、竜人族の村へと向かっていく。


 蒼太たちが竜人族の存在を察知したように、竜人族も一行の存在を感知しており、戦闘の準備を進めていた。古龍だけならいつものことだと受け入れていたが、他の気配は彼らの危機意識を刺激するには十分だったようだ。


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