第十八話
蒼太は避け切れなかった返り血を清潔の魔法で綺麗にすると、再び山を登り始める。
前情報通り、山には高ランクのモンスターが多かった。
最初に出会ったロックリザード。
炎の羽根を持つフレアバード。フレアバードは攻撃性の高まりに比例してその羽根は熱量を増していき、生半可な武器では触れているうちに溶かされてしまう。また火属性の魔法を得意としており空から遠距離で魔法を使われた場合それを防ぐことは難しい。
蒼太のマントの材料にもなっているサラマンダーはその皮は弾力性があり、斬撃を弾いてしまう。またその表面には特有の油が分泌されているため、切れ味の鋭い武器でも滑ってしまいその威力を受け流される。
表皮がトゲで覆われており一定の長さまで伸縮自在のそれを飛ばしてくるニードルベアー、そのトゲは防御にも使われ攻防一体となっている。
森でも出会ったキングボアなどもいた。
そのいずれもがAランク、ないしはBランクでも上位に指定されているモンスターであった。
そして、そのいずれもが蒼太によって一刀両断に切り伏せられていた。
山頂に近づくに従いあたりに漂う魔素は濃さを増していく。
それに比例するように、蒼太に襲い掛かる魔物の数も増えていく。
魔物の量も増えていく状況だったが蒼太にあせりなどはなく、むしろ口元には笑みを浮かべている。
また、手にした十六夜も切れ味が鈍ることはなく、その剣戟は鋭さを増していく。
これらは十六夜が持つ特性によるものであった。
蒼太は以前、一緒に旅をしていたドワーフ族とともに刀を作り上げようとした。
しかし蒼太の知識はうろ覚え、実物を知らないドワーフ、この二人で作ろうというのだから何度も失敗を重ねた。
そして、素材も少なくなってきて最後にもう一振りだけ打とうと決めた時にドワーフは言った。
「なあソータ……同じことをしてもまた失敗するのだから、最後に色々ぶっこんで試そうじゃないか」
蒼太もその意見に賛成し、本来なら使わないであろう素材をあれやこれやといれ、二人で創りあげた。
出来たのは一振りの刀で、後に魔刀十六夜と命名され蒼太の愛刀になる。
この刀、製作過程でいれた素材のせいでいささか変わった特性を持っていた。
手にしている間中、魔力を吸い続け、その魔力により刀身の状態を最高のものに保つ。
これが一つ目の特性で、常人と比べて格段に高い魔力を持つ蒼太だからこそ使える武器である。
二つ目の特性は、持ち主に高揚感を与えること。斬る度にそれは増していく。
三つ目は同種の魔物を斬れば斬るほどその切れ味を増していく。
これら三つの特性から、蒼太とドワーフは魔刀と名づけた。
斬る度に切れ味が増し、斬り続けることで爽快感が強くなり、気持ちが昂ぶっていき、加えて刀の状態は常に最高。
精神力の高い蒼太でもその効果を制御しきることは難しく、口元の笑みに繋がっていく。
以前の召喚時でも対多数の戦いでは多用していたが、この特性のため対魔族のような瞬間瞬間の判断が重要になる戦いでは使用を控えていた。
今も、森の戦いの時も多くの魔物と戦うため十六夜での戦いを続けている。
戦いながらも前進をしていくと、徐々に魔物は数を減らしていく。蒼太が倒した以上にその場から姿を消していき魔物の数は眼に見えて減っていった。
ふと台風の目に入ったかのように魔素が薄くなる。そこに至る頃には魔物たちがその姿を完全に消していた。
「これは……ここが頂上ってことか」
そこは大きく開けた広場のようになっていた。ここに至るまでの山道の荒れ具合とは異なり、中央の一部を除いて花々が咲き乱れている。
蒼太がその広場へと足を踏み入れ、中央の花のないところへと進もうとすると空から強い気配を感じ、その後を追いかけるように強い風がふいてくる。
その風にやや眼を細めながら、目線を上に向けると目的の竜が降りてくるところであった。
竜は燃えるような赤色の鱗をしており、その身はここまでに現れた魔物のどれよりも巨大な身体をしていた。
しかし、竜種としてはやや小柄で成長途中であるようにも見える。
街での情報収集の際、この竜と戦って帰ってきたという話は聞くことは出来なかったが、空を飛ぶ姿は目撃されておりその色から炎の属性を持つ竜だと推測できていた。
蒼太は武器を十六夜から、竜斬剣という片手剣へと持ち替える。
ドラゴンキラーなどの竜殺しの武器に比べると格は落ち、竜種に対する威力増大の特性は持っておらず、竜を斬れるくらいに切れ味を鋭くした剣だったが蒼太が持つ対竜武器の中では上位のものだった。
竜の翼は徐々にはためきがおさまり、着地する。
「ぐるるおおおぉぉ!!!!!」
咆哮が山中に響き渡る。その声は自分のテリトリーに入られたことに対する怒りに満ちていた。
その気配にあてられ、頂上にたどりつくまでに逃げ出した魔物たちはその身をすくませ、恐怖にその身を震わせていた。
蒼太が以前会った竜は古竜と言われ、知能も高く会話も成立していたが、この竜は若いためか意思の疎通を行うことが出来ない。
目的が目的だけに仮に意思の疎通が図れたとして、よりこじれるだけだったが。
竜は蒼太を睨み付けると、次の瞬間大きく息を吸い込む。
その口には炎の魔力が集まっている。
「ぐおおおおおおおお!!」
声とともに魔力は解放され、炎のブレスが蒼太へと放たれる。
竜種は若いものでもSランクに指定され、成長し魔力が高まるにつれSSランク、SSSランク、特級危険種と言われるものではEXランクなどに認定される。
そしてそのランクの通り、とてつもないほどの熱量を持ち、ここまでに蒼太が戦った魔物であれば一瞬にして溶けてしまうであろう、そのブレスは蒼太の身を喰らい尽くそうと一直線に向かってくる。
既に放たれたそのブレスの速度は速く避けるにもその範囲は大きく、蒼太の身は飲み込まれていく。
お読み頂きありがとうございます。
日間一位継続ありがとうございます!!
そろそろ落ちそうな予感もありますが…
ネット小説大賞に参加させて頂きました。一次だけでも通って欲しい。。。
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