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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百七十三話

前回のあらすじを三行で


地図の説明

小人族は外敵に狙われてる

アトラが再びやってくるという伝承

 蒼太たちは教えてもらった集落へと向かうために、一度街道へと戻る。周囲の気配を探り誰もいないことを確認すると、馬車を取り出しエドへと装着していく。

「さて、それじゃあ地図の場所へ出発するか」

 長にもらった地図では、長老がいると思われる集落は現在いる場所よりも獣人国を越えて、更に北のドワーフ国に近かった。まずは獣人の国に向かい、その後ドワーフの国方面へと向かう予定になっている。


「なんか、この間来た道を戻るみたいですね」

 ディーナの言葉だけ聞けば辟易しているようにも聞こえるが、その顔には笑顔が浮かんでおり楽しそうであった。

「そうだな、前回と比べてアトラが増えてる。それだけでも、道の印象は変わるものだな」

 蒼太は隣に座るディーナの言葉にではなく、表情から読み取れる気持ちに対して返事を返した。ディーナはそれが嬉しかったらしく、鼻歌を歌いながら、首を動かしリズムにのっていた。


 アトラは通常の狼サイズでエドと並走しており、魔物などが現れた際には素早く飛びかかり撃退していた。以前の旅では蒼太が気配を察知し、ディーナが銀弓で倒していたが、今回の二人は御者台でまったりと旅を楽しんでいた。

 魔物の撃退はアトラ自身が買って出たことであり、街にいた間は戦闘がなかったため自分の身体の調子を維持するためにも戦いは必要だと考えていた。ただ、アトラは出てくる魔物のレベルが低いことと、その出現頻度の低さにだけは不満を覚えていた。


 しかし、道中の休憩で出される食事にはとても満足していた。

『正直なところを言えば、このレベルの食事が毎回食べられるのであればそれだけでもついてきたかいがあるというものだ』

 蒼太が買いためていた料理とディーナが作る料理はアトラの胃袋をガッチリとキャッチしていた。

「この世界に来てから料理には恵まれている気がする。トゥーラではゴルドンが、獣人国ではシルバンの店に早い段階でたどりついたし、ドワーフ国ではディーナの手料理を食えたからな」

 蒼太は食事に手をつけながら何気なく言ったが、ディーナは自然と満面の笑みになっていた。


『ソータ殿……』

「ん? どうかしたか?」

 ディーナの気持ちの動きに気づいたアトラが声をかけるが、蒼太は気づいていない様子だった。

「アトラちゃん、しっです!」

 そんなアトラにディーナは内緒にするよう合図した。

『承知した』

 二人のやりとりを見て蒼太は首を捻ったが、ディーナとアトラはこの場限りの同盟を結んでいるようであった。


 そんなやりとりを何度かして、何度目かの朝に獣人国へと一行は到着する。


「今回は素通りさせてもらうか……」

「そうしましょうか」

 蒼太の提案にディーナは反対しなかった。ただ単に盲目的に肯定しているわけではなく、この街でゆっくりと過ごすことで現在の小人族に会える可能性が遠のいていくような気がしていたためであった。

『私もその方がいいような気がしている。長も言っていたように、長老がその集落にいるのは今だけかもしれない。それにこの街であれば集落と違い、そうそう何かが起こるということもないだろう』

 アトラも二人の意見に同意したため、買い物だけして街を出発することにした。

 買い物でも蒼太は目ざとく屋台を見つけ、一つ味見用に購入し気に入れば大量に購入していく。


『……かなりの量を買ったな』

 蒼太とディーナは気になったものを次々に購入していき、最終的には相当量の買い物となっていた。それを見ていたアトラは少し呆れ気味に二人を見ていた。ちなみにだが、アトラは街に入る前に子狼サイズへと自身の判断で変化している。

 注目を集めまいとしての判断だったが、ディーナの腕に抱かれているため余計に注目を集めてしまっていた。まずディーナの容姿に目を引かれ、そしてそのまま目線を下に下ろしたところで子狼のアトラの可愛さに注目してしまうというコンボであった。


 蒼太はその状況を理解していたが、それが店での値引き交渉にも役立っていたので咎めることはしなかった。老若男女問わず、二人の容姿に篭絡されており、アトラの頭を撫でさせることで値引きなどは当たり前になっていた。

 結果、量としては相当なものになったが値段としてはかなり格安に抑えられていた。

「二人のおかげでだいぶ予算を抑えられたよ」

 アトラは自覚があったが、ディーナは自覚がないようで人差し指をあごにあてながら首を横に傾げていた。

「よくわからないですけど、安くなったならよかったです。大会で結構稼ぎましたけど、お金は無限じゃないですからね」

 ディーナは自分の所持する金を考えながらそう言った。


 一行は色々な意味で注目されていたが、シルバンの店は丁度忙しい時間帯であり、城の面々も業務に追われ、外に出ることがなかったため誰にも出会わずに旅立つこととなった。

「誰にも会わずにすんでよかったな。会えばきっと色々と聞かれるだろうからな」

『ふむ、人間もなかなか大変なものだな』

「アトラちゃんだって、小人族の村でたくさんの人に話しかけられていたじゃないですか。人間もエルフも魔物も同じですよ、誰かと繫がりがあればそれだけ声をかけられる可能性はあるものです」

 ディーナの言葉にアトラは深く頷く。

『言われみれば確かにその通りだな。ふむ、また一つ勉強になった』

 反論することなく、アトラはディーナの言葉を自分なりに考え、そして吸収していく。


 アトラは数百年という単位で蒼太とディーナ以外とは話す機会がなかったため、自分が人類のそういった機微に疎いと自覚しており、二人と同行していく上ではそういった部分を刷り合わせていくことが必要だと考えていた。


「さて、小人族の村へ向けて出発だ」

 地図によると、この間立ち寄った集落と同様街道を進んで行き、途中でわき道にそれた先にある森の中心に長老のいる集落があるとのことだった。その分岐路に行くまでの間だけは、一行はまったりとした旅路を進んでいく。

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