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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百七十一話

前回のあらすじを三行で


旅立ち

街道から逸れる

村に到着、これは一体?

「お前たちは何者だ!」

 蒼太たちを取り囲む小人族のリーダーらしき男が一歩前に出て蒼太たちを詰問する。

「俺たちは……」

「勝手に口を開くな!!」

 蒼太が話そうとすると、先程とは別の男にそれを中断させられた。質問されたのに答えられない状況に蒼太は肩をすくめてリーダーらしき男に視線を送った。


「……いい、話せ。許可しよう」

 このままでは話が進まないと判断した男は、蒼太に発言の許可をする。

「やれやれ、大変なことだ。俺たちは旅の冒険者だ」

「嘘をつけ! ここは結界が張られているんだ、そうやすやすと入り込めてたまるか!!」

 これまた別の男が声を荒げている。小人族にしては大柄で、顔を見るに短気という言葉がよく似合いそうな男だった。


「ドク! ちょっと黙っていろ。この者たちにも言い分はあるだろう。最後まで聞こうじゃないか」

 ドクと呼ばれた男が興奮していたせいで、リーダーらしき男は冷静になり嗜めた。

「悪いな、続けてくれ」

 蒼太は頷いて、続きを話す。

「俺たちは旅の冒険者だが、ここには目的があってきた。さっき怒鳴ったやつが言った通り、そうでもなければ結界の中には入ってこれなかっただろう。結界に気づいたのも、アトラがいたおかげだからな」

 蒼太がアトラという名前を出すと、小人族はざわめきたつ。


『私は何代か前の族長と契約を交わしたアトラという。今はこちらにいるソータ殿と契約を交わしているため、主の希望によりここの集落へと案内をした。私と契約していた族長との約束では、集落の出入りは自由にして構わないという話だったはずだ』

 アトラといえば小人族の集落を狙う数々の敵から、その身を呈して見事守りぬいた守護獣として小さい頃に親からおとぎ話として聞かされるのが風習になっていた。それゆえにアトラのことは小人族であれば誰でも知っている。

「し、しかし、あんたが伝説の守護獣のアトラだという証拠がないだろう。それに、アトラは巨大な身体をしていると言われているが、あんたは普通の狼程度だろう」

 狼の魔物がしゃべるという段階で、信じるにたる要素ではあったが、それでもリーダーらしき男は判断を間違えるわけにはいかないと、アトラに対して問いかけた。


『ふむ、まずは見た目から証明しよう……これでいかがだろうか?』

 アトラは本来のエンペラーウルフの姿に戻ることで、一つの証明をする。

「こ、これは……まさか、そんな」

 リーダーらしき男の動揺は周囲へと広がっていく。

『それから、私がアトラであるという証拠だったか?』

 アトラは何処から出したのか、お守りのようなものを咥えてリーダーらしき男に差し出した。


「…………!」

 彼はそれを受け取ると、絶句した。それは、代々の小人族の長老しか持つことを許されないお守りで、送り主と送った相手の名前が記されていた。その言葉を

「信頼の証としてこれを送る。グレゴールマーヴィンよりアトラマーヴィンへ……こんなものを見せられたら信じる他はないようだ。彼らは敵ではない! 我ら小人族に伝わる伝説の守護獣アトラとその友だ! 歴代の長老たちに代わりこの集落の長として俺は彼らを歓迎する!!」

 長の声に続き、小人族たちが声をあげアトラの周りに集まっていった。


「……何にせよ、これで話を聞いてもらえそうだな」

「そうですね……」

 最初の強い敵対心と、今の盛大な歓迎ぶりのあまりの違いに蒼太とディーナは取り残されていた。

「ささ、お二人もこちらへどうぞ」

 アトラが先に長の家に案内されると、小人族の男がアトラのあとに続くように二人を長の家へと案内する。


「ソータ殿といったか、先程は武器を向けてすまなかった。そちらのお嬢さんにも申し訳なかった」

 二人が家に入ると、長は頭を下げ謝罪する。

『すまない、小人族は昔から外敵に狙われていたため、侵入者に対する警戒心が人一倍強いことを忘れていた』

 先に来ていたアトラは再び通常の狼サイズに戻っており、長に続いて頭を下げてくる。

「二人とも気にしないでくれ。別段被害があったわけではないし、誤解もすぐに解けたから構わない。それよりも俺たちは聞きたいことがあって訪ねたんだが」


 蒼太の言葉に長は頷く。

「えぇ、アトラ殿のお連れの方ですし、こちらが失礼を働いた謝罪もありますので何でも答えたいとは思っています。ですが……」

「ですが? 何かあるのか?」

 長は少し困ったような顔をしている。

「気づかれたかはわかりませんが、この村に住んでいるのは年齢の若い者だけなのです」

「言われて見れば……」

「そうですね」

 長に言われて、改めて囲まれてからここに来るまでの間に、年老いた者どころかそこまでいかずとも年齢の高いものを見かけなかったことを蒼太とディーナは思い出していた。


「以前はここの集落も様々な年齢の者がいたのですが、一度襲われて散り散りになってしまいまして……。その後、しばらくしてから私を中心とした一団がこの集落の復興のために集まって、そこに同年代の賛同者が集まったというわけなんです」

 長は自分のことを語る形になったので、少し照れまじりで話していく。

「なるほどな……ということは、あんたは小人族の中心の族長というわけではないのか」

 蒼太の質問に長は深く頷いた。

「はい、私はあくまでもこの集落の代表というだけの肩書きです。長老は別の集落にいると思います」


『では、その場所を教えてもらっても構わないか?』

 アトラのその問いにも長は頷く。

「もちろんです、長老もアトラ殿に会えるとなれば喜ばれるはずですからね。今地図を用意しますので、少々お待ち下さい」

 長はそう言うと、奥の部屋へ地図を用意をしに向かった。


「ここじゃなくなっているとはな」

「長老さんがいる集落が近ければいいですね」

 蒼太とディーナが気楽に話していたが、アトラの表情だけは険しかった。

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