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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百六十四話

前回のあらすじを三行で


それってペットじゃないんですか?

森であったこと

アトラ獣魔登録

 蒼太とディーナとアトラとエドは屋敷に戻ることにした。

 

 屋敷に戻ると、エドから馬車を取り外す。

「エドちょっと待ってろよ。先延ばしになっていたのを何とかするからな。ディーナ、アトラは先に入っていてくれ」

 蒼太は、ディーナに鍵を渡すとエドをその場に待機させエドの寝所へと向かう。

「作ると言ってたのに全然だったからな……」

 亜空庫から木材をとりだして土魔法を使いながら土台を作って、馬房を組み上げていく。


 先に行くよう言われたディーナとアトラは、かなりの速度で組み上げられていく様子をぽかーんとして見ていた。

「あとは、中に藁を敷いて……」

 蒼太が仕上げとして、中に藁を敷いていくと着手から完成まで三十分とかからずに馬房が作られた。

「す、すごいです」

 あまりの速度、そして見事な出来栄えにディーナは思わず声が漏れる。


「ん? あれ、二人ともまだいたのか」

 蒼太は余った木材などを亜空庫に仕舞っていたが、ディーナの声に気づいてそちらへ振り向いた。

「は、はい。ちょっと、その、いえすごくすごかったので」

 ディーナの語彙はどこかにいってしまったようで、そんな感想だけを返した。

『ソータ殿は戦闘だけでなく、大工仕事も見事なのだな』

 アトラも蒼太の手際の良さに舌を巻いており、素直に賛辞を送った。


「あー、まあ錬金術とか鍛冶の修行だって言われて色々と作らされたからな」

 蒼太は千年前に各勇者たちに弟子入りしており、その際に創作系の修行で大工仕事なども仕込まれていた。

「な、なんていうか変わった修行だったんですね」

 大工と錬金術と鍛冶がディーナの中で結びつかなかったため、そんな返ししかできずにいた。

「あー、何か色々理由は言われたんだけどな……とりあえず、今役立ってるから無駄にならなくてよかったよ」

 話しながら蒼太が続けていた片付けは終わり、馬房が開放されると、エドは自ら馬房へと入っていく。


「ヒヒーン」

「よかった、気にいったみたいだな。それじゃ二人とも中に入ろうか」

 エドは自らの馬房に喜んでおり、蒼太に向けて感謝の声をあげた。その表情もどこか嬉しそうで、馬房の隅々をチェックして喜んでいた。蒼太はその様子に満足して、屋敷の中へとディーナ、アトラを伴って入っていった。


 リビングルームに戻ると、ディーナが二人分の紅茶とアトラ用にミルクを用意する。それを見た蒼太は、エンペラーウルフの姿を思い出しながら子犬じゃないんだからと突っ込みをいれようかとも考えた。

 しかし、アトラは気にしていないようで喜んでミルクをぴちゃぴちゃと舐めていた。


「それで、小人族の集落の話だが……獣人国に近いのか?」

『あぁ、領内に入りはしないがそこまで目と鼻の先といったところだな。私がいた頃から移動していなければ、という条件付にはなるが』

 アトラはミルクを舐めるのを止めて、蒼太の質問に返答する。

 蒼太は獣人国までの行き帰りの道中を思い出すが、それらしいものは思い当たらなかった。

『……一応言っておくが、道沿いには集落はないぞ』


 蒼太は考えてたことを見透かされたため、少し動揺する。

「そ、それくらいはわかっているさ。でも、じゃあどこらへんになるんだ?」

『うーむ、口で説明するのは少し難しいな。獣人国までの街道を途中で横に逸れると大きな森があって、そこの中心にその集落がある』

 アトラは思い出しながらそれを口にするが、大雑把な説明のため蒼太とディーナには伝わらなかった。

『だから難しいと言ったのだ。だが安心しろ、私が一緒に行けば道を覚えているから問題はない』

 アトラは自信満々にそう言ったが、年月の経過による環境の変化は考慮にいれていないようだったため蒼太は一抹の不安を覚えたが、アトラがドヤ顔でそう言ったため信じることにした。


「今日は休んで、明日出発するか。まぁ、たまには少しゆっくりしてもいいかもしれないが……」

 せっかく家を手に入れたものの、ゆっくりしている時間がほとんどなかったためそんな考えも浮かんでいた。

「あー、そうですね。私もこの街をゆっくり楽しんでみたいかもしれないです、以前来た時もすぐに獣人国に旅立ってしまったので」

 ディーナも蒼太の考えに同意する。新しい場所に行く楽しみはもちろんあったが、蒼太が拠点としているこの街についてもっと知りたいと思う気持ちも持っていた。

『私はどちらでも構わない。この街も来たばかりだからな、ただ、まあせっかく来た街ではあるから色々と見て回るのも悪くないだろう』

 アトラもこの街に多少なりとも興味を持っていた。


「だったら明日は三人で街を回ってみるか。前に寄った屋台が俺の国の料理に似たのを出してたからやってたら寄ってみるか」

 蒼太の言葉に二人も頷いた。

 その後、蒼太は一人で、ディーナはアトラと入浴を済ませ、同じ組合せで部屋割りし就寝した。


 翌朝は、ゆっくりと食事を食べた後二人と一匹は街にくり出していく。

「さて、どこから行こうかね」

「うーん、どうしましょうか……といっても、あんまり知らないからなあ」

 蒼太の言葉にディーナは考え込んだ。

『ここはソータ殿が色々と案内するのが一番だと思うが』

 アトラに指摘されて今度は蒼太が考え込む。アトラは周囲に人がいないことを確認して、他者に聞こえない範囲で二人に話しかけていた。


「そうだなあ、とりあえず屋台めぐりをして……そうだ、図書館にも行ってみるか。久しぶりにあの二人に会うのも面白そうだからな」

 蒼太の提案にディーナはぽんっと手を打つ。

「いいですね、あのお二人が仲良くなっていたりしたら楽しそう」

 ディーナはレナとガイの二人に会うことが楽しみになってきていた。

 アトラは二人、というのが誰のことを言っているのかわからなかったが二人が楽しそうに話しているのを見て満足していた。

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