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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百五十九話

前回のあらすじを三行で


ランクの高い魔物たち

魔物に襲われそうになるディーナ

援軍エンペラーウルフ、アトラ

『私が貴様と別れたあと、この森は平和そのものだった。魔物以外の動物なども徐々にではあるが戻ってきていた。そもそも食い物も魔素の影響で成長が早かったからな。脅威がなくなれば住みやすい場所なのだろう』

 アトラは蒼太と別れたあともこの森で生活をしていた。

『貴様たちの言い方で言えば、ふた月というところか。それくらい前まではそれが続いていた、変わらずに魔素は濃かったが今ほどではなく、大きな影響もなかったように思える』

 そこまで言うと、アトラの表情が険しくなった。


「たった一、二ヶ月でここまでになったのか……自然発生とは思えないな」

 蒼太は森を見渡し、現在の異常さからその結論へ至る。

『その通りだ……そもそもこの森を覆うほどの魔素の濃さはこのふた月の変化ではない』

「えっ? それってどういう……」

 ディーナは疑問が口をついた。


『この魔素は、ある日急に増えたのだ。何の前兆もなかったように思える……私が眠りにつき、目を覚ました時には既にこの状態になっていた』

 その言葉に蒼太とディーナは驚きを隠せない。

「何か変わった気配があったとか、そういうのもなかったのか? お前クラスで気づかないとなると、相当な手練れの仕業だぞ」

 蒼太は一瞬で起こったことよりも、それを起こしたものが気になっていた。


『突発的な現象という可能性もゼロではないだろうがな……何にせよ、私は何も事前の変化を感じ取ることはなかった』

「そんな、これほどのことを一晩でなんて……」

 ディーナは蒼太とは違い、起こった現象の規模に恐れを抱いていた。


「とりあえず、このままってわけにもいかないか。放っておいたら魔物の大量発生は何度も起こるだろう。アトラ、最も魔素の濃い場所に案内してもらえるか?」

 蒼太は、魔素溜まりを解消することで少しでも問題を先送りにするつもりだった。

『構わんぞ、ここからならさほど離れてはおらん。真っすぐ向かったほうだ』

 アトラが顔で指し示す方向は、蒼太とディーナが魔物の群れを殲滅するために向かっていた方角を更に進んだ方向であった。


「ディーナ、いけるか? とりあえずこれを飲んでおけ」

 蒼太は先程まで疲れをみせていたディーナを気遣い声をかけ、魔力回復ポーションと体力回復ポーションを手渡す。

「ありがとうございます。さすがに魔力をだいぶ使ったので助かります」

 ディーナは受け取ると、一気にそれを飲み干す。蒼太はポーション類にも細工をしており、口当たりを良くして飲みやすくしていた。

『そろそろ案内してもいいか?』

 蒼太とディーナのやりとりを待っていたアトラが口を開く。


「あぁ、本気だと困るがある程度なら走ってもらって構わないぞ」

 蒼太の返事を聞き、アトラは走り始める。

 先程倒した魔物たちがこのあたりに群れていた魔物の全てだったらしく、目的地までの道中では魔物姿はちらほら見かける程度であった。

 時間にして数分走ったところで、目的の場所へと到着する。


『ここだ、見てわかると思うが』

「あぁ、ここだけ集中して魔素が濃いな。ここを中心にして凄い勢いで魔素が拡散している……」

 目の前の魔素溜まりは、以前にこの森で見たものよりも格段に濃く溜まっているいうよりは噴出しているという言葉が適切だった。

「二人は下がっていてくれ、俺があれが噴出しているもとを見てくる」

 ディーナとアトラは、頷きその場で待機することにする。その間もディーナは武装を解除することなく、アトラも周囲の気配に気を配っていた。


 蒼太が吹き出し口へと近づこうとすると、その魔素の中から何かが飛び出して蒼太へと襲い掛かった。

「なんだ!?」

 それまで全く気配を感じることはできずいた蒼太は、急な攻撃に声をだしていまう。

 蒼太に襲い掛かってきたのは、ゴブリンの姿をしていた。しかし、今までに見たことのあるどのゴブリンとも違っていた。その表情はどこか理性的でその手には片手剣が握られていた。

 ただの片手剣だったら、疑問に思うところではなかったがゴブリンが手にしているのは魔剣であり、まがまがしい魔力を放っていた。


 魔剣による攻撃は夜月によって阻まれ蒼太に届くことはなかったが、ゴブリンは再び魔剣を構えなおして蒼太に向かって攻撃を繰り出してくる。その攻撃は、考えられた攻撃でフェイントも交え、また急所を的確に狙っていた。

「お前は一体何者だ!」

 蒼太の言葉を理解している様子で、にやりと笑うがゴブリンは何も答えなかった。


「答えないか、ならさっさと倒させてもらおう。俺が用事があるのはお前じゃなく、その吹き出し口の方だからな」

 ゴブリンはそれを聞いて、笑みを消し蒼太を睨みつけた。

「お前はただの冒険者とは違うようだな。この先へは通さんぞ、死ね!」

 初めて口を開いたゴブリンからは流暢な人語が聞き取れた。

「話せたのか、だがさようならだ」

 ゴブリンが魔剣を振り上げ襲いかかるが、蒼太は一度夜月を鞘へと納めていた。


 蒼太とゴブリンが交錯する瞬間、蒼太は鞘から夜月を抜きゴブリンの身体を魔剣ごと一刀両断にした。

「ば、ばかな」

 その声はゴブリンからではなく、その手を離れた魔剣から聞こえてくる。

「お前が本体か。ゴブリンがあれだけの知性を持っているとは思えなかったから、もしやとは思ったが……操っていたな?」

「ぐ、ぐう、そこまでわかっていたのか。だ、だが俺を倒しても……」

 そこまで言うと魔剣はさらさらと粉状になり、風に飛ばされて消えてしまった。刀身部分が本体である魔剣は、二つに分かれたためその身を維持することができないようだった。


 蒼太とゴブリンの姿は未だ噴出している魔素によって覆われていたため、外のディーナとアトラからは戦いの一部始終を見ることができなかった。また、あまりに濃すぎる魔素のため、気配察知なども乱され正確に把握できない状態であった。


「この世界も相変わらず色々と面倒なことがおきてるな……」

 蒼太は夜月を鞘に納めると、面倒臭そうにそう呟いた。

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