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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百四十六話

前回のあらすじを三行で


謁見の間に入る

蒼太とディーナを褒める王

鉱石わけて?


「ここに置いてもらえるか?」

 将軍の案内で倉庫まで行き、倉庫番へ話をすると中の空いたスペースへと案内される。

「わかった。ディーナ、バッグを貸してくれるか」

「はい、どうぞ」

 蒼太の言葉に、ディーナは自分のマジックバッグを手渡す。そして、蒼太はバッグの中からある程度の量の鉱石を取り出す。それは蒼太たちの採掘量からすればほんの一部であったが、将軍と倉庫番はその量に驚いていた。


「こ、こんなに採れたのかね。これでは君たちの分がなくなってしまうのでは?」

「俺の目的の物は既に作れたし、これだけあればそちらも十分だろ?」

「こちらとしては助かるが……こんなにもらっては報酬に困るな」

 予想以上の量を提供されたため、将軍は眉間に皺を寄せていた。量が多いことは本来であれば喜ぶべきところであったが、昨今の流通量の少なさから考えると、相応の対価が必要になってしまう。


「それなら、この倉庫の中を見させてもらってもいいか? 色々と珍しい物がありそうだから俺は現物支給でも構わないぞ」

「ううむ、どれでも持っていって良いとは言えんが……それでもここの物で気に入るものがあるなら、大抵のものならわしの権限で許可を出そう。三人で採掘したものだ、アントガル殿とディーナリウス殿もご覧下され」

 将軍は蒼太の提案に少しだけ考え込んだが、これだけの鉱石を逃す手はないとすぐに切り替えてその案を飲む決断を下す。


「いいんですか! 何がいいかなあ?」

「お、俺もか。何にしよう」

 既に倉庫内を物色している蒼太の後に続くように二人も色々な品物を眺めていく。

 倉庫内には、今回提供した鉱石の他にも様々な鉱石が置いてある。素材がほしいアントガルはその中で珍しいものはないかと見ていく。ディーナはといえば女性ならではだろう、アクセサリなど細かい彫金細工の物を順番に見ていく。凝り性な職人気質の国だけあり、彫金も細かいデザインがなされ、よそではなかなか見られないような高度な技術の作品が多かった。

 一方で蒼太はそれらには見向きもせずに、どんどん奥の方へと向かっていく。鉱石や武器、防具、アクセサリなどは比較的手前のほうに置かれていたが、奥のほうにはドワーフ族にはあまり興味を持たれないようなものが収蔵されていた。


「これだな」

 蒼太はある棚の前で足を止めた。奥に行くほど暗くなっていたため、小さな灯りを魔法で出している。その棚には本が並べられていた。ドワーフ族は技術の伝承は口伝や見て学ぶことが多く、書物に残すことは少なかった。そういった種族性から、本を読むこと自体も少なくなっていた。ゆえに、本の重要性もこの国では低かったようだ。

「何かないか……」

 目についたものから一つ、手にとってはパラパラと捲っていき、棚に戻す。それを何度か繰り返していくうちに面白そうなものを発見した。

「これだな……これも、これとこれもだな」

 一つ見つかると雪崩式に何冊も欲しい本が見つかっていく。

 そうしてそれぞれが一時間程見てまわると欲しいものをすべて見つけることができたため、入り口へと集まった。


「ふむ、欲しいものは決まったかの? 見せてくれ」

 将軍はそれぞれが決めた物を確認していく。

「俺はこれで頼みます」

 アントガルは両手で大量の鉱石や金属のインゴットを抱えていた。

「おうおう、これは大量に持ってきたものだな。だが、お主たちが持ってきた鉱石に比べれば微々たるものじゃ、構わんぞ」

「ありがとうございます! 悪い、これバッグに入れていってくれないか? 持ってきたのいいが、さすがに、重い……」

「わわわ、ちょ、もうちょっとだけ頑張ってください」

 隣にいたディーナが慌ててアントガルが抱えているものを次々にバッグに入れていく。


「ふう、落とさずにすんでよかったです。次は私ですね、私はこれです」

 ディーナはアクセサリを三つ程提示する。

「おや、それっぽっちでいいのかね。欲のないものだ、それくらいならその倍持っていってもらっても構わんよ」

 ディーナの提示したものは特殊な効果のあるものだったが、それでも価値としては鉱石より遥かに劣るものであった。


「最後は俺か。俺の選んだのはこれだ」

 蒼太は近くの大きな箱の上に本を出していく。本が高くなっていくにつれて将軍は頬を引きつらせていく。棚にあった本の七割がそこに積み上げられていた。

「これは……すごい量だな」

 アントガルも目を丸くしてその山を見ていた。


「こ、これだけの量を持っていくとは思わんかったが……まあ、わしらは本はほとんど読まんからな、構わんじゃろ」

 将軍もドワーフ族であるため、本には興味を持っていないため許可を出すのは簡単だった。

「それはよかった。面白いものはないかと探してみたが、まさかここにまでグレヴィンの本があるとは思わなかったよ」

「えっ、グレヴィンさんの本ですか!?」

 蒼太の言葉にディーナが大きく反応し、蒼太はそれに対して深く頷いた。


「この国には武器のためだけに来たんだが、まさかこんなオマケまでもらえるとは……来てよかったな」

「はい! 後で私にも読ませて下さいね」

「もちろんだ」

 本の話題で盛り上がる蒼太とディーナを見て、その価値がいまいちわからないアントガルと将軍は首を捻っていた。


「おほん、何にせよそれぞれが希望のものを見つけられたようでよかった。それから、これは王より賜った金貨じゃ、三人で分けてくれ」

 将軍が取り出した袋を一番近くにいたアントガルが受け取ったが、受け取った瞬間に中身の多さがわかるほどずしりと重かった。

「こ、こんなに貰っていいんですか?」

「うむ、今回の鉱石だけでお釣りがくるからの。足らない分は先程のもので補填という形じゃな」

 将軍は当然のことだと腕を組んで言うが、三人はどこか気まずい思いがあった。


「だったら……もう少し追加しておこう」

 蒼太は自分のバッグから、追加の鉱石を取り出して先程の鉱石の隣に取り出していく。

「ま、まだあったのか。しかし、これ以上は何も出せんぞ?」

「切り札は後で出したほうが効果的だろ? それにこれを出したのは俺たちが貰いすぎたと判断したからだ。気にするな」

 蒼太の行動にディーナとアントガルも蒼太の言葉通りに貰いすぎたと考えていたため、ほっとした気持ちになっていた。

「すまない、正直に言えば助かる」

 将軍は感謝の気持ちを表すように深く頭を下げた。

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