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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百三十九話

前回のあらすじを三行で


米はたくさん買っておこう

謎の金属を使おう

熱気と疲労

「教えてもいいが……結構アレな素材を使ってるんだぞ? 本当に聞くか?」

 蒼太は目つきを鋭くして、アントガルに確認する。

「お、おぉ。き、聞かせてもらおうじゃないか」

 アントガルは、口元をひくひくさせながら強がるようにそう言った。

 かけつけたディーナは一体何があったのかと、不穏な雰囲気の二人をはらはらしながら見守っていた。


「これの主原料は、癒しの木の葉だ」

 蒼太は別段特別な材料だとは思ってはいないが、エルフの国でのやりとりがあったため他の者にとっては貴重品であることはわかっている。

「い、こ、これに?」

 アントガルが予想していたのは、何かの尻尾だとかそういうグロいものだった。しかし、予想に反して高級という言葉すら生ぬるいほどの稀少素材が使われていることに、自分でどんな声を出しているのかわからないような始末だった。


 蒼太は混乱しているアントガルに向かって大きく頷いた。

「お前がさっき一気に飲み干した栄養ドリンクには、いやしの木の葉が使われている。それも一瓶に対して複数枚だ」

「ひっ!」

 あまりの驚きにアントガルは、目を回してその場に倒れてしまった。

「アントガルさん! もう、ソータさん。驚かせないであげてください」

 ディーナは倒れたアントガルへと回復魔法をかけようとする。


「ディーナ、大丈夫だ。ちょっとどいてろ」

 蒼太はアントガルに近寄ると、水魔法をアントガルの顔に浴びせていく。

「ちょっ!」

 ディーナは蒼太の暴挙に驚いて声を上げた。

「う、うーん。一体なんだ、つめたっ! なんで俺濡れてるんだ……?」

 当のアントガルは目を覚ましたが、自分の現状を把握できずにいた。倒れた身体を起こし立ち上がったが、さっきのやりとりを覚えておらず、首を捻っている。

「まぁ、覚えていないならいいんじゃないか。それよりも、お互い汗もかいたし服も濡れているみたいだから一旦綺麗にしよう」

 蒼太は魔法でお互いの身体を清潔にし、更に服に乾燥の魔法をかける。


「ディーナ、急で悪いんだがメシの用意って頼めるか? 例のドリンクで何とか疲労はとれたんだが、腹が減った」

 蒼太もアントガルも腹をおさえて空腹を訴える。

「あ、はい。用意してあるので、温めますね」

 ディーナは小走りにキッチンへと向かった。蒼太とアントガルも作業場をできる範囲で片付けると、その後を追うように移動していく。片付けにはそれなりに時間がかかり、ダイニングへ向かうと既に夕食の準備は整っていた。


「いつもありがとうな」

 蒼太は用意された料理を見て、ディーナへと感謝を伝える。

「いえいえ、当然のことですから!」

 急な蒼太の言葉にディーナは慌てて両手を大きく横に振るとキッチンに戻ってしまった。その言葉を発した蒼太はというと、首を捻りながら席についた。

「あんたらは仲がいいな」

 そんな二人を見たアントガルはしみじみとこぼす。


 その後はディーナも落ち着きを取り戻し、一緒に夕食を食べるまでに回復していた。

「作業のほうだが今日は中断という形にして、明日朝から始めようと思うんだがどうだ?」

 二日連続で昼前からの開始になっていたが、既に竜鉄の抽出は終わっており作業も今日の続きをやるとわかっているので蒼太はそのほうが終了が見込めると考えていた。

「あぁ、それで構わない。俺も今日はベッドで寝ようと思ってる……」

 アントガルは昨日、一昨日と二日連続で金属と共に眠ってしまったため反省していた。睡眠時間だけは確保できていたが、身体の疲労や睡眠不足は品質に影響することがある。


「今日はノリまくってたから、作業に影響はなかったが明日は冷静な状態から始めそうだからな。ゆっくりと休ませてもらうよ」

「それがいい、俺もさすがに今日のは少し疲れたからな。食い終わったら宿に戻って寝よう」

 蒼太は肩を回し肩のコリをほぐそうとする。そのしぐさから疲労が残っているのがうかがえた。

「戻ったら少しマッサージしますね」

「あぁ、頼む」

 ディーナの発言と、それを当たり前に受け入れている蒼太の反応を見てアントガルはやれやれと首を横に振っていた。


 その後宿に戻ると、早速蒼太はディーナのマッサージを受ける。ディーナの腕前は見事なもので、蒼太はあまりの気持ちよさにあっという間に眠りについてしまった。ディーナはその寝顔に満足すると、蒼太の頭を一撫でしてから自分の部屋へと戻る。


翌早朝


 アントガルの工房では既に二人の作業が始まっていた。たっぷりと睡眠をとった二人の体調は完全になっており、昨日以上に作業は熱を帯びていた。

 二人の振り下ろす槌の音は、まだ火が灯っていない近隣の工房の主たちを目覚めさせていく。生活音がまだひしめいていないことで、いつもよりも遠くまで槌の音は響いていく。槌の音に起こされた者たちは、こんな朝早くから作業を行っている馬鹿は誰なのかと外に出て確認する。結果、工房の周囲には初日を遥かに越える人数が集まることとなる。


 アントガル工房の目覚めはどんどん広がっていく。


 工房内の二人はそんなことになっているとは知らず、槌を振り下ろしていく。室内の気温も早朝だというのに、既に滝のような汗が流れるほどに上がっていた。

 午前中、一度も休憩はとらずに作業が続いていく。外にいる住民たちは、その槌の音がいつ鳴り止むのかとわくわくしながら聞いている。作業音から作り出そうとしている物がとんでもないものだと肌で感じ取っていたからであった。

 昼にさしかかろうかというところで、一度音が鳴り止んだ。


「「「「おぉ!」」」」

 歓声が響き渡る。

 しかし、それは終わりではなく次の魔力込め作業の始まりの合図だった。


 工房内の蒼太とアントガルは、槌を魔力用に持ち替え作業に移っていた。再び外に響く音。それを聞いた住民たちから再度歓声があがった。

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