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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百二十三話

前回のあらすじを三行で


暑い

魔素濃い

竜と黒い鎧の騎士

 蒼太は広場へと足を踏み入れる前に、ディーナとアントガルへと身体強化の魔法を付与する。

「俺はあの鎧の相手をする。二人はあの炎の竜を相手できるか?」

 蒼太は二人の目を見ながら尋ねる。もし難しいという回答が帰ってきたら蒼太は一人で両方を相手取るつもりでいた。しかし、二人はその問いに対して縦に首を振ることで答えた。

「わかってるとは思うが、あの竜はかなり強い……死ぬなよ」

 答えを確認した蒼太は二人へと耐熱強化の魔法を付与し、自分への付与も終えると黒い鎧の騎士へと向かって歩いていく。

 ディーナとアントガルもお互いの顔を見合わせ頷くと、広場へと入り竜へと向かって行った。


 竜は三人が広場へと入った時点でおたけびをあげ威嚇してくる。黒騎士はその場を動かず、どこからか剣を取り出し蒼太たちへ顔を向けていた。中身が空洞の鎧のため表情などは読めなかったが、蒼太たちを敵と認識しているであろうことは予想できていた。

「俺は竜の横をぬけてそのまま黒騎士に向かうからそっちは頼んだぞ」

 蒼太は返事を確認することなく、そのまま走りだした。


 竜は蒼太が向かって来るのを見ると、蒼太の行く手を遮るように火の玉を吐き出す。蒼太はそれを竜斬剣で斬りおとし、黒騎士へと迫っていく。竜は自分の攻撃を全て防がれたことに機嫌を悪くしたのか蒼太へ噛み付こうと襲い掛かってくる。

「お前の相手は……俺たちだ!!」

 アントガルは大きく口を開いた竜を、下から槌でかちあげる。

「ぐるおおおおおおおおぉぉぉ」

 その一撃は竜の口をガチンという音とともに閉ざし仰け反らせた。竜はたたらを踏み、後方へ数歩下がる。

「私もです!」

 がら空きになった竜の腹へディーナは精霊によって強化された水魔法を次々撃ちこんでいく。

「ぐらあああああ」

 竜は叫びながら、後方へと吹き飛ばされていった。


 蒼太はその様子を横目で確認すると一つ頷く。そして前を向くとその眼前には黒騎士が迫っていた。先程までは竜の近くで動かずにいたが、蒼太が視線を外した一瞬の隙をついて距離を詰めていた。右手に持った剣は蒼太へと振り下ろされている。

「おい!」

 蒼太は慌てて竜斬剣を頭上に構え、黒騎士の一撃を防ぎそのまま弾いた。

「やっぱりただの鎧じゃないようだな」

 蒼太と黒騎士は向かい合いそれぞれが武器を構えていた。


 蒼太が動き出すのと同時に、黒騎士も走り出していた。今度は蒼太の竜斬剣による攻撃を黒騎士が防ぐこととなるが、黒騎士は押し込まれることなく、蒼太の攻撃を防いでいた。

「再召喚されて最も強い敵ってのが中身のない鎧だっていうのも、皮肉なもんだな」

 口にしながらも蒼太の攻撃は止まらない、それどころか徐々に攻撃速度が上がっていた。しかし、黒騎士はそのことごとくを受けきっていた。

「ちっ、鎧のくせしてやるな。これはもっと気合をいれないとまずいな」

 蒼太は竜斬剣に流し込む魔力を高めていく。斬れ味の鋭い剣は更にその鋭さを増していく。自分の剣の威力を高めて、相手の武器を削っていく。それが蒼太の作戦だった。


 蒼太の攻撃によって、黒騎士の武器は削れていくがそのそばから回復していた。武器もその鎧の一部であり、黒騎士の魔力によって補修されていた。結果としては黒騎士の魔力自体は削れていくが、攻撃に使う体力に対して微々たるものであった。

「それだったら、これだ」

 蒼太は亜空庫から十六夜を取り出し、左手に持ち二刀流で攻撃をしていく。蒼太の攻撃速度は更に上がっていき、黒騎士は捌ききれなくなっていく。蒼太は、その変化に気づき十六夜で相手の剣を強く弾き、がら空きになった胴体を竜斬剣で薙いでいく。

 その一撃は黒騎士の胴体を真っ二つに斬り裂いた。

「やったか?」


 蒼太は手ごたえがあったため、そう言ったが鎧は動き出し再びくっつき一つの鎧に戻ってしまう。そして、再び剣を構え蒼太へと向かってきた。

「こいつは、ただむやみやたらに斬っただけじゃダメなタイプか」

 このまま戦闘を続けていけば、蒼太か黒騎士かどちらかの魔力が切れるまで続いてしまう。しかし、ただ斬ったのでは先程と同じように修復されてしまう。蒼太はどうしたものかと考えていたが、方法は一つだけ浮かんでいた。

「核を見つけて壊すしかないな」

 リビングアーマーは鎧をベースとした魔物だが、その身には核がありそこが唯一の弱点となっている。しかし、魔物によって核のある位置は異なるため、外見からはその位置の特定は難しかった。


 蒼太は再度黒騎士に二刀で斬りかかり、今度は真っ二つではなく、四つ八つ十六に斬りわけていく。再び魔力によって修復されていくが、先程よりも細かく斬られているためその修復にも時間がかかっている。

 その隙に蒼太は気配察知スキルを高め鎧の中で最もその気配強い部位を探っていく。

「……あそこか!」

 蒼太はその部位を特定すると、剣を構え黒騎士へと斬りかかる。


「し……ね……」

 修復を終えた黒騎士は、冥府の底から聞こえてくるような深い憎しみの篭った声を出し蒼太へと襲いかかってきた。その目には先程までにはなかった光がともっていた。

「!?」

 声を出したことに蒼太は驚いた。しかも、エンペラーウルフや古龍のような念話ではなく、直接耳に届く声だった。また、リビングアーマーというのはあくまで鎧であり、声帯はもっておらず声を出す種というのは聞き覚えがなかった。


「一体なんなんだお前は!」

 蒼太は黒騎士の変わり様に驚く。

 黒騎士の身は闇の魔力に覆われていた、それは剣にも宿っており一撃の威力を高めている。その攻撃を十六夜で受けると、刀身にヒビが入ってしまった。竜斬剣を主の武器として使っていたため十六夜を覆う魔力量が少なく、黒騎士の攻撃を受け止め切れなかった。


 蒼太は目を見開き驚くが、それを隙とせずにすぐに切り替え竜斬剣を黒騎士に振り下ろした。その一撃は、黒騎士の核へと吸い込まれるように繰り出される。核の位置は頭部の左目のあたりにあり、竜斬剣により真っ二つになった。

「……」

 黒騎士はなにごとか話したようだったが、それは蒼太の耳には届かなかった。鎧はその場に崩れ落ちるとさらさらと灰になって風に飛ばされていった。

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配信は電子コミックサービス「 LINEマンガ 」、漫画担当は濱﨑真代さんとなります。

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