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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
再召喚された勇者は一般人として生きていく?

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第百五話

前回のあらすじを三行で


蔵書をチェック

昼休憩はいつもの店で

シェフのお勧め!!

蒼太とディーナは期待を裏切らないシルバンの料理に舌鼓をうち、ルードレッドは初めて来た繁盛していない店で食べた料理が一流のシェフのものと比較して勝るとも劣らないものであったことに衝撃を受けていた。

「なぜ……」

「ん?」

ルードレッドのつぶやきに蒼太が反応する。


「なぜ、このような料理を出せる店が繁盛していないんですか! これは由々しき事態ですよ!! この店はもっと広く知れ渡るべきだ!!」

ルードレッドは思わず立ち上がり、熱弁をふるった。

ゾフィはその反応をしてくれるのは嬉しいが、店のスタイルとしてはあまり熱くなられると困る。といった複雑な表情になっていた。

「ルードレッド、気持ちはわかるが一旦落ち着け」

蒼太はルードレッドの服を引っ張り座らせた。


「お前が思わずそう言いたくなる気持ちはわからなくはない、だがそれはこの店の二人の気持ちを慮ってのことじゃないだろ? あくまで自分の考えを言ってるだけだ」

蒼太の指摘にに加え、ゾフィが困った表情になっていることでルードレッドの頭は一瞬で冷えた。


「すいません、思わず熱くなってしまいました……」

「うふふ、いいんですよ。それだけ褒めてくれる気持ちはとても嬉しいです」

「あぁ、俺の料理を気に入ってくれたのは嬉しいことだ」

大きな声を出すルードレッドが気になったのか、シルバンが厨房から姿を現した。


「あ、あなたがこの料理を作られた方ですか。このような料理が食べられるとは、私感動しました!」

ルードレッドはシルバンの右手をとると、握手をする。

「お、おう。それだけ言ってくれるのは確かに嬉しいが、この店は別に有名にならなくていいんだ。こいつらみたいにふらっと立ち寄って、気に入ったらまた来てくれる。それで十分だ」

心の底からそう思っている。そんな顔を見せられルードレッドは自分の頭を掌で軽くはたいた。

「申し訳ない、自分の考えで突っ走ってしまうところでした。私も気に入ったので通わせてもらいますよ」

「それで頼む。まぁ、またここにたどり着けたらだがな」


ルードレッドは思わず腕を組んで考え込んでしまう。

「確かに、ここまでどうやって来たか思い出せないですね。まるで迷路のようでした」

「機会があれば、俺がまた連れてきてやるよ。どうせしばらくは城通いなんだ、機会もあるだろ」

「是非!」

ルードレッドは今度は蒼太の手をとった。


「ほう、お前城にでも勤めるのか?」

シルバンは興味深そうに蒼太に尋ねた。

「いや、ちょっと用事があってな。しばらく通うことになってるだけだ」

蒼太はルードレッドの手を振りほどき、シルバンへと向き直った。

「昼休憩はとるから、ここには来させてもらうよ」

「そうか、しばらくは休みの予定もないからずっと開いてるはずだ」

「よかったです!」

シルバンの言葉にディーナの目は輝いていた。


「さて、長居しててもあれだ。そろそろ作業に戻らないと、あれは終わらないぞ……」

書庫の状態を思い出しながら、蒼太はげんなりとした表情になっていた。

「ですね……」

ディーナも蒼太につられて同じような表情になった。

「いやあ、それはなんともすいません」

ルードレッドは思わず二人に向けて頭を下げた。


「……なんだかよくわからんが、まぁ疲れたらここに来い。疲れが吹き飛ぶような飯を作ってやる!」

シルバンの言葉に蒼太とディーナのやる気を取り戻していた。

「それじゃ、明日のシルバンの料理に期待してがんばってくるか」

「はい!!」

二人は立ち上がり、精算を済ませ城へと向かう。

「ま、待ってください! 私も行きます!」

ルードレッドも自分の支払いを終え、蒼太達を追いかけていく。


城の書庫に戻ると蒼太とディーナは作業へ入った。ルードレッドは二人に応援の言葉を言うと自分の業務へと戻っていった。

「さて、ディーナ。午前中と同じ流れで進めていくぞ、とりあえずは数をこなして俺達に必要なものをピックアップしていこう」

「はい、がんばりましょう!」

午前同様二手に分かれ二人は作業を続けていくが、日が傾く頃になっても一向にグレヴィンの書籍へとたどり着く様子はなかった。


夕方の鐘が聞こえると、二人は作業の手を止め顔を挙げた。

「……今日はこのへんで切り上げるか」

「そう……ですね」

最初に作ったスペースは既に確認済みの本で埋まっており、新たに作られたスペースも既に本で埋まっていた。一日のほとんどを本の確認に費やした二人の身体は疲れきっていた。

「とりあえず、持っていく本のリストも作ったからこれをルードレッドに見せに行こう」

部屋を出ると、そこにはルードレッドが待機していた。


「そろそろだと思いました。明日からは私のほうで蔵書の整理を行いますので、お手伝いできることがあったらおっしゃってください」

「それはありがたいが、普段の業務のほうはいいのか?」

「えぇ、しばらくの業務は今日の午後を使って済ませておきました。残りは私がいなくてもなんとかなるよう指示も出しておきました」

そう言うルードレッドの顔には蒼太たち同様、疲労が浮かんでいた。

「悪いな、そこまでしてもらって」

「いえ、全ては私のためなので……あの店に連れて行ってもらうために!」

ルードレッドの言葉は謎の熱さを持っていた。


「そのためにここまでしたのか、あんた……なかなかわかってるじゃないか」

「えぇ、さすが大臣になるだけの方ですね」

二人はルードレッドの言葉に何度も頷いていた。

「お二人こそ、よくぞあの店を探し当てましたね。さすがの慧眼です」

食事のためにかける思いに立場による差はない。そんな共通した熱い思いを三人は持っていた。

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