第55話.下呂っとマーチ
「ほら、お兄ちゃん、起きて!毛呂駅に着いたよ!」
「んっ···ああ、すまん、危うく寝過ごすところだった···」
「昨日は慌ただしかったし、疲れが溜まってるんだよ。今日は温泉に入ってゆっくりしよ!」
絵美とのエオンデートの翌日、土曜日だったこともあり、さっそく”高級温泉旅館ペア宿泊券”を使い、咲夜に宿を手配してもらった俺たち兄妹は、日本三名泉と称される”毛呂温泉”を訪れたのである。
岐阜県の山の中の”秘湯”的な立地ではあるが、名古屋駅から乗り換え無しの電車一本で約1時間半と、学生の小旅行としては申し分ないアクセス条件だ。
そういうこともあってか、山中の静かな温泉地のイメージとは裏腹に、温泉街の通りには、10代20代の若い旅行客が多く見受けられた。
それも、アルカリ性の泉質故に、”美人の湯”として親しまれていることもあってか、若い女性の2〜4人組が多いように感じられた。
大学生や専門学校生だろうか?
どちらにせよ、自分よりも年上の若いお姉さん達が大勢いるその様は、それだけで地方民の俺からして”非日常”的に感じられた。
「毛呂温泉って、こんなに若い女性客が多かったんだな」
「お肌がツルツルになるみたいだし、単純泉だから温泉特有の臭いが弱くて、そのうえ肌への刺激も少ないクセの無さが若い娘にウケが良い理由かもね」
「流石は”美人の湯”といったところだな」
まぁ、皆さん、温泉の効能に頼らずとも、既に十分な美人ですけどねぇ···でゅふふ♡
普段俺が目にしている高校生たちと違い、観光地ということも相まって、服装もメイクもバッチリキマってるお姉様方。
右を見ても、美人。左を見ても、美人。
”地方民あるある”かもしれないが、生活圏から飛び出して観光地に来たときに、その美人の多さにビビってしまう。
おぉっ!あの前を歩くお姉さん、パンツラインが丸わかりじゃねーか!あんなのもう、男を誘ってるようなもんだろ!
本当なら後をつけて、背後からじっくりと”鑑賞”したいところではあるが、今回は俺の隣に”邪魔な女”が付帯しているので断念せざる終えない···無念だ。
チラッと、俺の隣の女に目を向ける。
「美人の湯か···既に”美”の上限に達している私が今以上に美人になったら、どうなるんだろ···スーパービジン人3とか、美女5になっちゃうかも!」
ネーミングはどうあれ、兄としては妹が突如として金髪や白髪になるのは勘弁願いたいところではある。
うほっ!あの足湯につかりながらプリンを食べておられるお姉様なんて、ドチャクソ美人じゃねーか!
明るく染められた長髪が醸し出す”遊び慣れてる感”が、緑川や春子とはまた違った味わいがあってそそるねぇ〜♡
ヨシ!ここはひとつ、彼女が食べ終えた後のスプーンをゴミ箱から回収して、ベロベロと舐め回すとしますかな、でゅふふ♡
「お兄ちゃん、鼻の下が伸び過ぎなんだけど···」
「ん?もしかして、温泉の効能によるものかな?」
「いや、私たち、まだ温泉に入ってないし···仮にそれが効能の1つだとしたら、そんなヤバい湯が”美人の湯”と称されるわけがないよね。どうせ、あのプリン食べてるお姉さんを見てエロいこと考えてたんでしょ!」
エロいこと、というよりはキモいことだけど。
「あのお姉さんよりも、もっとお兄ちゃん好みの可愛い女の子がいるよ!」
「え!?どこどこ!?俺好みの女の子、どこ!?」
「お兄ちゃんの隣にいるでしょ♡スーパー美少女の青山円香ちゃんが♡」
「···確かに、否定できねぇな、それは」
「えっ!?///いや、そんなリアクションされたらさ、コッチが調子狂うじゃん///どうしちゃったの、お兄ちゃん///」
確かに、らしくなかったかもしれない。
もしかしたら、旅先の非日常感にアテられているのか、俺は。
って、あのお姉さん、足湯から脚を上げてタオルで拭いておられるが、無防備にも拙者の角度からピンクのおパンツが丸見えでやんす!!!
うひょひょ〜♡たまらんでやんすね〜♡
「お兄様···」
「あっ···ま、円香、コレはお前の調子が狂わないように、”調律”として普段の俺をあえて演出する事でだなぁ···」
「お兄ちゃん、普段”やんす”とか言わないでしょうが!まったく、温泉の効能で”浮気症”が治ったりしないかなぁ」
そんな都合のいい温泉は、”妹のアタマがまともになる薬”以上に有り得ないだろう。
それに···
「円香、俺は浮気なんてしてないぞ。だって、俺にとっての”1番”は、いつだってお前だからな」
「お兄ちゃん···そういうセリフを言うときぐらい、すれ違う美人を目で追うのはヤメた方がいいと思うよ」
「···善処します」
その後俺たちは、しばらく温泉街の散策を楽しんだ。
「飛騨牛串と飛騨牛肉まん、美味し〜!私、コレなら何個でもイケちゃうよ!」
「お前の胃袋の前に、お兄ちゃんの財布が音を上げると思うのだが···」
「お兄ちゃん、牛串もう1本食べたいなぁ〜」
「ぐっ···」
「ねぇ、いいでしょ、後から私のPaiPaiで”支払う”からさぁ〜♡」
「···おじちゃん、牛串(大)もう1本お願いします」
「はいよ!」
「えへへ、ありがとね、お兄ちゃん♡」
俺は将来、女で身を滅ぼすのかもしれないなぁ···
「お兄ちゃん、見て見て。ここのお土産物屋さん、色んなカラーのサルボボのストラップが売ってるよ!カワイイね〜」
岐阜県定番のお土産ということもあり、ストラップをはじめ、かなりの量のサルボボグッズが展開されていた。
「サルボボの”サル”は”猿”だとして、”ボボ”ってなんだろうな···もしかして!!!」
「”鼻毛真拳”使いの金髪アフロは関係ないと思うよ」
「···そうか」
世代じゃないのに、よく分かったなお前。
「お兄ちゃん、カエルの神社があるよ!でも、何でカエルなんだろ?何か伝承とかあるのかな?」
「毛呂だからだろ」
「···」
せめてなんかコメントしてやれよ。
「せっかくだし、何かお願いしてこっか」
「ああ」
各自100円を投入し、2礼2拍手1礼。
神様、どうか、お願いします···
緑川の”等身大デカ乳輪コースター”が手に入りますように···
あと、ついでに妹の命が救われますように···
「お兄ちゃん、何をお願いしたの?」
「もちろん、お前の命が無事に救われるように、神様に頼んどいたぞ。お前は何をお願いしたんだ?」
「和哉殿には内緒であります、ゲロゲロリ」
もしかして、地球侵略か?
「あ、お兄ちゃん、”手湯”があるよ!」
「おお、コレがあると、”温泉地”感が増して良いよな」
2人で、その名湯に手をつけてみる。
「あったか~い、きもち〜」
「これが美人の湯か」
湯がついた自らの手の甲を撫でてみる。
が、正直そのツルツル感というやつは、イマイチよくわからなかった。
「?俺の肌だと、あんまよくわかんねーな」
「手だけじゃ分かりにくいんじゃない?あっちのお店の前に足湯があるから入ってみようよ!」
円香の案内でお目当ての足湯に辿り着いた俺たち。
「じゃあ、入るとするか」
「うん!」
靴を脱いで俺の隣の座席に腰掛け、靴下を脱ぐために脚を上げる円香。
「ば、バカっ!お前、ミニスカートでそんな脚開いたら、見えちまうだろうが!」
円香のスカートの中は俺から丸見えで、その太ももの間からは薄水色の可愛らしいパンツがお目見えしていた。
「妹のパンツが見えたぐらいで、なにそんな動揺してんの?キモっw」
「ちげーよ···その···ココだと人目もあるし、他の男に見られたくねーんだよ···」
「うえ〜、妹に対して”独占欲”剥き出しとかキモっ!キモ過ぎる!キモキモのキモじゃんw」
そんなキモキモ言わんでもええやん···
「ほんと、お兄ちゃんは情けないクソキモ童貞だよね〜。まぁ、そういうダメなところが可愛くて好きなんだけどさ///」
···コイツも将来男で身を滅ぼしそうなタイプだな。
靴下を脱ぎ終えた俺たちはを、その”名湯”に足をつけた。
「ふぇ〜、あったか~い、きもちいい〜、イっちゃいそ〜」
足湯でイかないでくれ、周りの方に迷惑だから。
足湯には俺たちの他に、若い女性2人組と若いカップルの2組の先客がいた。
「いやしかし、イきはしないが、コレは歩き疲れた足が生き返るな〜」
一度湯につけていた足を引き上げ、手で擦ってみる。
うん、確かに、手よりは足の方がスベスベ感が分かりやすいように感じた。
「わ〜、スベスベ〜、おもしろ〜い」
円香も、自分の脚を撫でて楽しんでいる。
「ちょいとお兄ちゃんの足も触らせてよ」
「いいぞ」
サスサス、サスサス。
「ん〜、確かにスベスベとはするけど、基が悪い分ちと物足りないな〜」
悪かったな、基が悪くて。
「ほれ、お兄ちゃん、私のムチムチの太ももにお湯をかけて触ってみてよ!あまりの気持ちよさに飛ぶよ!」
ドヤ顔が少しムカつくが、そこまで言われたら触ってみるか。
ミニスカートから生えるその太い太ももに、足湯から手ですくったお湯をかけて撫でてみる。
サスサス、サスサス。
うおっ!?確かにこりゃ凄い!
ツルツルかつスベスベ、いうなれば”ツベツベ”なその手触り。
湯を弾くムチムチな太ももの上を、俺の手が滑る、滑る。
まるで”潤滑油”だ。
水を得た魚のように、俺の左手はその肌を撫で続ける。
サスサス、サスサス。
うむ、コレは癖になりそうだ。
JKのムチムチの太もも×名湯”美人の湯”···おそるべし。
サスサス、サスサス。
「···ねぇ、お兄ちゃん///」
「ん?」
呼ばれたので円香の顔を見る。
先ほどと比べ、紅く染まった頬。
「どうした、まさか足湯でのぼせたのか?」
「あ、いや、そうじゃないんだけどね///えっと···そんなに熱心に撫でられると、その、濡れちゃうっていうか···///」
「あ、わりぃ、スカートの裾にお湯が当たっちまったか?」
「いや、違くて···///だから、そんなに”愛撫”されるとさ、その///」
「ば、バカ野郎!”愛撫”ってなんだよ!俺は別にそんなつもりじゃなくて···」
「で、でも、周りの人たちも『うわ、コイツらおっ始めやがったぞ···はぁ〜、お盛んだねぇ〜』みたいな顔して早々に去っていったよ」
確かに、太ももに夢中になっていたので気が付かなかったが、他の利用客は既にいなくなっていた。
「···お兄ちゃんのせいで”濡れ”ちゃったし、足の力が抜けて立ち上がれないんだけど···バカ///」
「わ、わりぃ···」
しかし、立ち上がれないという話であれば、俺だってそうだ。
この”えのき”が鎮まるには、もう少し時間が必要だ。
「もぅ〜、お兄ちゃん、こんなところでそんなガッツイておっ始めなくてもさ、後からゆっくり、私の”好きなところ”を好きなだけ触らせてあげるのに///」
「え?」
「だ、だって、温泉旅館に若い男女が一泊するんだよ···それってつまりさ、”そういうこと”、でしょ···///」
円香さん、”そういうこと”って、どういうことでしょうか···




