第77話 巫女巫女魔法少女! 巫女巫女魔法少女! 元祖フルプリ! 巫女巫女魔法少女!だまんごー。
「私、樹になります!」
平田公萬、通称『おまん』は、大きな声を出した。静かな森の中に、一瞬だけざわめきが起こる。
「そうか……ありがたい。では、其方にはこれを授けよう。『マンゴスチン・ハート』じゃ!」
薄暗い夜中。月の光が、おまんと世界樹を照らしていた。おまんからはよく見えなかったが、世界樹の根元あたりがモゾモゾと動いた。
ポンッ
と音と共に、世界樹の根元の辺りに、何かが転がる。
「これが、『まんごすちんはぁと』でございますか?」
おまんは、世界樹に近寄り、その根元に転がった不思議な物体を手にする。おまんがこれまで見たことがなかった、なにやら果物のようなものであった。
(そうじゃ。妾が、『マンゴスチン・ハート』じゃ。其方が、新しい主人か……。これからお世話になるぞ!)
その果物のようなものも、世界樹と同様に突然話し始めた。最早それに驚くこともなく、おまんはそれを平然と受け入れる。
「それは、果物型変身装置じゃ。それを使えば、魔法少女に変身できるのだ。これから先、其方が世界樹となる地を見つけるまでの間、其方の好きパートナーとなってくれるであろう。さぁ、早速、魔法少女に変身するがよい。そして、其方の兄上に会いに行ってくるのだ。妾はここで待つことしかできぬが……。其方が戻ってくるのを信じておるからな……。」
世界樹の言葉に、おまんはコクリと頷いた。彼女は、兄上に会った後はここにきちんと戻ってくる覚悟を決めていた。彼女にとっては、一度死んだ命であった。もう一度、兄に会わせてもらえる機会がもらえただけで上等だったのだ。
(では、主人。変身のための呪文を教える。それを唱えるとよい……。)
マンゴスチン・ハートは、そう言って、おまんに変身のための呪文を教えた。元々、言語に強いおまんである。その呪文を一度でサラリと覚えてしまった。
おまんは、右手に『マンゴスチン・ハート』を握りしめ、それを天に掲げる。
「では、参ります!
マンマンマンゴスゴスゴスチン!
赤黒の衣に包まれし、清らかなる純白!
溢れる甘き果汁をその身に浴びて!
果物の女王の誇りを胸に刻む!
平田公萬! 妾は汝と共に歩まん!
まんごすちんはぁと! かじゅう! ひゃくぱぁせんと!」
キューイーン
ピカーーーーーン
おまんが持つマンゴスチン・ハートが、桃色に光り輝いた。
そして、マンゴスチン・ハートから放たれた桃色の光が、おまんを包む。
おまんが着ていたスッケスケでエッロエロな白い装束が消えた。
夜中の森の中には人っ子一人いないので、全裸になっても問題ない。むしろ、スッケスケでエッロエロな白い装束よりも、全裸の方が健全かもしれない……。
桃色の光が線状になり、おまんの体にぐるぐると巻きつく。
まずは真っ白な肌襦袢が、おまんの全身を包んだ。そして、その上に、薄桃色の巫女服が現れた。
おまんの艶やかな黒髪は、桃色の光を纏い、より強い光沢を放つ。
杖のような長い棒が右手から現れ、その先端にマンゴスチン・ハートがくっついた。
「魔法少女『フルプリマンゴスチン』、変身完了です!」
桃色の光が消えてなくなると、そこには、魔法少女『フルプリマンゴスチン』になったおまんが立っていた。
「なかなか似合っておるではないか。さぁ、行って来るがよい。魔法少女になれば、空を飛ぶことも容易い。兄上もすぐに見つかるであろう」
「ありがとうございます! では、行って参ります!」
おまんは、世界樹に向けてお辞儀をした。そして、凛々しい表情で顔を上げ、そのまま力を込めて、空へと飛び立った。
「うふふっ……。月が眩しいですわ……。」
地上から見る月と違う、空を飛んだ時に感じる月の明るさに、おまんは少し目を細めた。下を見下ろせば、森が広がっていた。先ほどまで対峙していた世界樹も、豆粒のように小さく見える。
森の縁にある深山家の屋敷には、数カ所の灯りが見えた。その他には目立った明かりもなく。おまんは夜空を飛ぶことに少し寂しさを感じた。
「空を飛ぶなんて、書物の中の世界のことだけだと思っていました。事実は小説よりも奇なりとも言いますか。私がこのように魔法少女になって空を飛ぶことがあろうとは……。あっ……兄上の元へ急ぎませんと。兄上、どうかご無事で……。」
おまんは、空を飛んだことに感動していたが。暫くして、落ち着きを取り戻した。そして、平田家の屋敷があった方角へと、進路を変える。
月明かりが照らす夜空を飛ぶ魔法少女おまん。
兄の元へ! 急げ、おまん!
――――――――――――――
「こっ、これでいけるか……?」
的場菜奈は、水を口に含み、それを高村まんごの口元にもってゆく。『マンゴスチン立ち』を構えていたまんごは、『バナナの極み』によってぶっ飛ばされ、壁に打ち付けられた衝撃で気を失っていたのだ。
んくぅ
っぷぅ
菜奈は、まんごの唇に自分の唇を重ねる。そして、わずかにできた隙間から、口に含んでいた水を、まんごの口中に移した。
ゴクリ
まんごは、口の中に入ってきた水をゴクリ音を立てて飲み込んだ。
そのまんごの顔を覗き込む菜奈の顔は、真っ赤である。もちろん、耳まで真っ赤だ。
堀江沙耶香は、まんごに手際よく口移しをしていたのだが、菜奈はそれに抵抗があったのだ。何度か躊躇した末に、やっとのことで口移しを成功させたのだ。
(作者注:沙耶香ちゃんの口移しは、第38話です。忘れた方は、第38話をお読みくださいませ)
「大丈夫か……? これで起きてくれるといいんだが……。」
菜奈の横では、彼女の父親であり的場道場の師範の『的場光一』が、心配そうに2人を見ている。昨今の世知辛い事情により、男性の光一ではなく、女性の菜奈が口移しをしたほうが良いということになった。そのため彼は、娘の頑張りを応援することしかできないでいた。
「あぁ〜〜。すっごく恥ずかしいんだけど……。」
菜奈の顔は、まだ赤い。
まだ起きないまんごに、二回目の口移しをしようと、もう一度、水を口に含みかけた。その時……。
「うっ……。」
菜奈と光一の2人が見守る中、まんごはゆっくりと目を開けた。
「よかった〜。高村! 心配したぞ!」
「おおぅ。良かった!」
菜奈と光一は、安堵の息を吐いた。
「あっ……、あれ? そうか……。マンゴスチン立ちが、いきなり破られちゃったね。てへへ」
まんごは、舌をペロリと出す。状況はすぐに理解できたようだった。そう。『マンゴスチン立ち』は『バナナの極み』に破られたのだ。意味深!
「はは……。まぁ、そうだな。今から修行して、ちゃんとした技として完成してゆけばいい。技の弱点、そして己の力量を知ることは大事だ。あれは、今の私の本気だったからなぁ……。そのうち私じゃ破れなくなるかもな……。」
菜奈は、フゥと息を吐く。
「へへへ。そうかな〜。じゃあ、師匠! 私、これからも頑張るから。よろしくお願いします!」
まんごは、ゆっくりと立ち上がる。これと言った大きな外傷もなく、ちょっと気を失っていただけのようだった。
「ははは。頑張るのはいいけど、ほどほどにな……。稽古初日からヒヤヒヤしたよ。まぁ、大事にならなくて本当に良かった。今日はお疲れ様。また続きは、次回ね!」
光一は、笑いながら、まんごの肩をポンと叩く。
こうして、まんごの稽古の初日も終わった。彼女にとって長い修行の大きな一歩だった。
次回へ続く。
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私、高村まんご。小学3年生。
的場道場で修行を始めたんだ。まだまだ未熟な魔法少女ですっ!
さて。今回も、気絶した割には、さっと目覚めたからね〜。よかったよかった。重症にならないでよかったね〜。
うん。
夢の中の話も順調だね〜。いいことだよ。おまんちゃんも魔法少女になったんだよね〜。
え?
あっ、そうそう。気になるよね〜。おまんちゃんが手に入れたのも、私が持ってる果物型変身装置と同じ、『マンゴスチン・ハート』だったね〜。
でも、衣装はちょっと違ったよね……。
色々謎めいてるよね〜〜。こんな謎も、いつかスッキリ解けちゃうのかなぁ〜?
だって、真実はいつも一つ! だしっ(笑。
まぁ、そのうちね〜〜〜。
お兄ちゃんとパパの稽古初日も、私の稽古初日も終わったし。うん。キリがいいね〜ってことで。次回は……。
またしても番外編だよっ!
こういうことしてるからストーリーが進まないんだよっ!
早く完結したいんとちゃうんかいっ!!
まぁ、急がない。慌てない。じっくり〜。弱火でじっくり〜。
ということで、唐突に始まる番外編だよっ!
ドリアちゃんもスネイクさんも、最近登場してなかったからね〜。2人から、早く出せって圧力が……ね。
ということで。うん。
次回は、2人が『ピーマンの肉詰め』を作るらしいから。
楽しみにね〜。
次回!
魔法少女 マンゴ☆スチン Tropical FruitS
『スネイクとドリアの気まぐれお料理教室〜ピーマンに、肉を詰めるでございますわ〜』
だよっ!
絶対に読んでねっ!
マンゴスチン! カジュー! ヒャクパーセントー!




