第27話 立ちはだかる強敵!力の無さを嘆く瞬間!だまんごー。
「桃矢お兄様、ご機嫌麗しゅう。お話はお聞きしましたわ……。わたくしには何も言えませんが、気を確かに持ってくださいませ……。」
高村家にドリアが遊びに来た。
早速、まんごと共に子供部屋に入ったドリアは、桃矢の姿を見つけ、挨拶をした。
「あぁ……。」
桃矢は、ベッドの上で横になりながら、漫画を読んでいた。ドリアの挨拶に、ぶっきらぼうな態度で応える。
ドリアは、冬の祭典『マン・セレ 2020冬』に向けて原稿を完成させるための打ち合わせを兼ねてまんごの家に遊びに来たのだ。
もちろん、コスプレ衣装の打ち合わせもする。この即売会では、コスプレ衣装を着用しながらの販売が認められているからだ。
「ドリアちゃん……。やっぱり、リビングで遊ぼうか?」
まんごは、ドリアの耳元で囁く。
「はい。では、お兄様、後ほど……。」
「……。」
ドリアは、桃矢に微笑みかけたが、桃矢は、それを無言で一瞥しただけだった。
桃矢はここのところずっと荒れていた。まんごとの会話も以前より格段に少なくなっており、ほとんど話さなくなっていた。
まんごは、ドリアが来れば、桃矢もちょっとは話をしてくれるかとも期待していたが、ドリアですら邪険に扱われてしまったのだ。
――――――――――――――
高村家のリビングで、まんごとドリアは、話をしている。
「最新話もサイコーでございましたわよ。今、絵を描いていますので、原稿の完成まではもう少しお待ちくださいませ」
先日まんごが完成させた最新話の『美熟女魔法剣士 ポッチャリン〜今日も旦那のために天婦羅を揚げるのです〜』を、ドリアは漫画にしている最中なのだ。
「サイコー? そう言ってもらえて良かった〜」
まんごはドリアに笑顔を向ける。
「怪人がいいキャラをしていましたですわ〜」
「いい怪人でしょ? 今度の即売会でも、あの怪人のコスプレとかもできちゃうかな?」
まんごたちが話しているのは、ポッチャリンに無残にやられてしまった怪人『天かすマン』のことである。
彼は、今のところ、『フルキン』の作品の中で数少ないキャラクターのうちの1人なのだ。
「そうなんですのよ。わたくしも、あの怪人を気に入りましたので、コスプレ衣装の製作も予定しておりますのよ」
ドリアは、大きく頷く。
「わぁ〜。すごい! でも、誰がその衣装を着るの?」
「スネイクが着るでございますわぁ〜」
「あ……。そっか……。」
「今回は、スネイクの名前で当選していますので、スネイクには会場に居てもらわないといけないのでございますわ。それなら、『天かすマン』の衣装を着ていただいた方がよろしいかと」
「あ〜なるほど。確かにそうだね!」
まんごは、ウンウンと頷く。
「衣装は、わたくしとスネイクで作りますわ〜。あっ、でも、わたくしは、原稿を仕上げるのに忙しいですので、主にスネイクにお願いすることになりますわ」
スネイクは、料理だけでなく、裁縫も得意なのだ。
「さて、とりあえずは、衣装を作るために、体のサイズをはからないといけないですわ〜」
ドリアは、そう言って、ポーチの中から、巻尺を取り出した。
――――――――――――――
バンッ
と、大きな音でリビングの扉が開く。
「まんご! うるさいぞ!」
子供部屋からやってきた桃矢が、リビングの扉を開けたのだ。
桃矢は、まんごとドリアのきゃっきゃとはしゃぐ声が大きくて、それを注意しに来た。
「あっ……。お兄ちゃん……。」
「あっ……。桃矢お兄様……。」
まんごとドリアは、コスプレ衣装の作製のために体のサイズを採寸しているところだった。
偶然にも、おパンツ一丁のまんごが、おパンツ一丁のドリアの上半身に、巻尺を巻いていたところだった。
「あ……。とりあえず! うるさいんだよ! あ〜もう! 俺の気持ちも知らないで、楽しそうに笑いやがって……。 いい気なもんだよ!」
桃矢は、とっさに目をそらしたが、ドリアの上半身はガッツリと見ていた。巻尺にちょうど『ぽっち』が隠れていたということもなく、しっかりと『ぽっち』も見てしまった。
そして、桃矢は、気まずさのためか、色々と叫んでしまった。
「あっ、ごめん! お兄ちゃん。うるさくして、ごめん。でも締め切りが……。」
まんごは、もじもじしながら言う。怒っている桃矢は苦手なのだ。
「あ〜、そうかぁ。締め切りが忙しいもんな〜。じゃあ、俺が邪魔にならないように出て行くから……。ごゆっくり〜」
バタン
扉をわざと大きく音が出るように閉めて、桃矢は玄関に向かった。
「あっ、お兄ちゃん!」
まんごは桃矢を追いかけようとしたが、おパンツ一丁であることに気が付き、追うのを戸惑った。
「申し訳ございませんですわ……。」
「ううん。ドリアちゃんが謝ることじゃないよ……。」
まんごはそう言って、ため息をついた。
ドリアも、落ち込むまんごを見て、しょんぼりとする。
――――――――――――――
「クッソ……! どうしてこんなことになるんだ……?」
桃矢は一人で、外を歩いていた。ブツクサと独り言を言いながら、道に転がっている小石を蹴る。
ドリアの裸を見てテンパってしまったために、まんごたちに色々と言い過ぎてしまったことを、後悔していた。
落ち込んでいることを心配してくれるまんごとは仲良くしたいと思っているのだが、自分の中でも色々と処理しきれないでいた。
病院から帰って来てからというもの、落ち着かないのだ。
そして、不幸は、不幸を呼ぶのであろうか……、一人で道を歩いていた桃矢は、『巨大なカマキリ』に遭遇した。
その巨大なカマキリは、高さが2メートルほどあり、1メートルに達するほどの大きな鎌を持っている。
クリッとした大きな瞳で桃矢を睨んでいる。
そして、桃矢に近づいて来た。
狙いは、桃矢が持っている『果物型変身装置』、ピーチ・エースだ。
「マジかよ……。こんな時に……。」
桃矢は、歯ぎしりをする。
「あっ……でも。もしかしたら、今ならいけるかもしれない……。」
桃矢の頭に浮かんだのは、目の前の巨大なカマキリと戦うことだった。
桃矢は、フルーツプリンセスへの変身を試してみることにした。
むしろ、今の桃矢には、助かるためには、それしか選択肢がなかった。
「よしっ、ピーチ・エース! 今ならいけるかもしれない! 試してみるぞ!」
(はい! ご主人様! 頑張ってくださいませ!)
ピーチ・エースは答える。
「よしっ、行くぞっ!
ピチピチ ピーチ ピッチピチ!
桃色の ほのかに香る 果物の
ふくよかな 膨らみ分ける 裂け目かな
割れて我と手 つなぎ歩まん!
我は高村桃矢なり!
ピーチ・エース! カジュー! ヒャクパーセントー!」
桃矢は、呪文を唱え、ピーチ・エースをギュッと握りしめた。
しかし、何も起きなかった……。
「くっ……。やっぱりダメかぁ……。」
桃矢は、ピーチ・エースを握りしめながらも声を落とす。
精巣の機能を失ったものの、桃矢にはまだ肉体的にも『戸籍上』も男である。魔法少女にはなれないのだ。
そうこうしている間にも、巨大なカマキリは、桃矢の目の前に迫っていた。
(ご主人様、このままでは……)
「わかってるよ、ピーチ・エース……。でも、俺は変身できないみたいなんだ……。ごめん、俺に力があれば……。」
桃矢は、ピーチ・エースをぐっと握りしめた。
桃矢のすぐ目の前に来た巨大なカマキリは鎌を振りかざした!
(ここまでか……。)
桃矢は、思わず目を閉じた。
「ごめんなさい、パパ、ママ……。まんご……。」
閉じた目から、じんわりと涙が滲む。
カキーン
カマキリの鎌が、桃矢の目の前で弾かれた。
「これは……。」
桃矢がゆっくりと目を開けると、赤い盾が桃矢を守っていた。
ドドン!
次回に続く!
===============================
次回予告
力を求めた少年の想いは強く……。
守りたいものを自分の手で守るため、大きな選択をする……。
力の無さを嘆き
力の無さに、荒れた過去
その鬱蒼とした過去を振り切り
少年は前を見て、自分で決めた人生を、歩き始める……。
一つの大きな誓いを胸に秘めて……。
次回
魔法少女 マンゴ☆スチン
『第28話 桃矢の誓い!振り向かないと決めた夜!だまんごー』




