第19話 ねぶられた!?まんごちゃんのリコーダーだまんごー。
「あれ? 私のリコーダーが無い!」
9月の大型連休も明け、授業が始まった。
今日の授業はリコーダーを使う。しかし、高村まんごはロッカーにしまっておいたはずのリコーダーが無いことに気が付いた。
「え〜、おかしいなぁ〜。あれっ、何これ?」
そして、まんごはリコーダーの代わりに怪しげな紙切れを見つけたのだ。
その紙切れには、
『リコーダーが返して欲しければ、一人で体育館の裏に来い』
と書いてあった。
「ええぇ……、何これぇ……。」
この紙切れを書いたのが、リコーダーを盗んだ犯人に違いないと思いながら、まんごはため息をついた。
まんごは、キョロキョロと辺りを見回し、誰にも見られていないことを確認する。
「ふぅ……。」
そして、その紙切れをそっとポケットにしまった。
――――――――――――――
まんごは、ひとりで体育館の裏に向かった。
「ねぇ〜、誰かいる? 私のリコーダー返してよぉ〜」
まんごは、びくびくとしながらも、声を出す。
「ほぉ〜、ちゃんと一人で来たんだ。感心だなぁ。高村まんご!」
そこに現れたのは、まんごにも見覚えのある少年だった。
2学期の始業式の日に起きた『不知火パンチラ事件』の主犯である不知火玄武だ。
「あれ? 不知火くん、久しぶりだねぇ〜。学校に来てたんだ?」
「おっと、高村! 言葉遣いに気をつけろ! こいつがどうなってもいいのか?」
玄武は、まんごの言葉に、眉をピクリと動かす。
学校に来ていたことに触れられて、イラっときたのだ。
「そ、それは……。」
まんごは、目を大きく見開いた。
玄武が手に持っているリコーダーケースには、『高村まんご』と名前が書かれていたのだ。
まんごのリコーダーだ!
「わかるか? こいつを、こうするんだ……。」
玄武は、リコーダーケースからリコーダーを取り出し、それを口元に近づける。
舌を出し、ペロペロと動かす。
玄武の舌先が、まんごのリコーダーの吹き口にゆっくりと近づく。
「あぁっ……、ダメっ! お願い! やめてっ! それだけは……。ねぇ、落ち着いて、不知火くん。落ち着いてよっ! どうして私にそんな嫌がらせをするの?」
まんごは必死になって叫ぶ。
自分の大切なリコーダーが男子の口につくなんて耐えられないのだ。
「俺は、お前らのせいで学校に来れなくなってしまったんだよ! お前らのせいでな!」
「え、えっ? でも、あれは不知火くんが、みんなのスカートをめくったのが……。」
まんごは、キョトンとする。
あれは誰がどう見ても自業自得だろう……。
「うるさい! うるさい! それ以上言うと、こいつを……。」
玄武は口を開け、リコーダーをさらに口に近づける。
「うっ……。」
まんごは、言葉を飲み込んだ。
今は、リコーダーが大事だ。
まんごは、小学生ながらも、こういう時には相手を刺激しない方が良いことは知っていた。
「大人しくなったなぁ、わかっているじゃないか。さて、本題だ……。」
「……。」
まんごは、ゴクリと唾を飲む。
「お前は、魔法少女なんだろ?」
「えっ? 何で知ってるの?」
まんごは驚く。
まんごが魔法少女であることは、まだクラスメートの誰にも言ってはいない。
それを知っているのは、ドリアと兄の桃矢、そして両親だけのはずだった……。
「こないだの写生大会の時に、見ていたんだよ。まさか、お前も魔法少女だったとはなぁ。と言うことは、魔法少女に変身するための変身装置を持っているんだろ? そいつを寄こせ!」
あの時の少年は、こっそりと写生大会の様子を見に来た玄武だったのだ。(第14話参照)
「え……、でもぉ……。」
まんごは、泣きそうな顔で小さく首を振る。
大切なマンゴスチン・ハートを玄武に渡せば、何をされるかわからない。
泣き出したい気持ちをぐっと抑え込み、首を振ったのだ。
「おい? 高村! 今のお前は俺の言うことには逆らえないんだぞ! ほら……。」
玄武は、口を大きく開いて舌を出し、リコーダーの吹き口に触れるか触れないかまで、舌を近づける。
まんごの方を見下し、舌をレロレロと動かしてみせる。
「いやぁ〜! ダメっ! ダメよっ……。お願い。わかった……。わかったからぁ……。」
まんごは、目にうっすらと涙を浮かべる。
「くぅ……。」
まんごは、ポケットからマンゴスチン・ハートを取り出した。
「そうだ、高村! それでいい、それをこっちに投げろ!」
玄武は、まんごが右手に持っている赤色のマンゴスチンを見て、笑みを浮かべる。
玄武は魔法少女が変身するために必要なのは、果物の形をした『果物型変身装置』であることを知っているのだ。
「で、でも……。」
まんごは、右手に握りしめたマンゴスチン・ハートをじっと見つめる。
まんごにとってはリコーダーも大切だが、マンゴスチン・ハートも大切なのだ。
「おい! 高村! 早くしろ! 早くって言ってんだろ!」
玄武は声を大きくして叫んだ。
「いっ……、いやよ!」
まんごは、涙を浮かべながらも言葉を絞り出す。
そのときだった……、舌に近づき過ぎたリコーダーの吹き口が玄武の舌先に、ピタリと触れた……。
「いいいいいいいいいゃあぁぁ〜〜〜!」
まんごは、大きな叫び声をあげる。
そして、キリッとした目で、玄武を睨みつけた。その目には涙が滲んでいる。
「ふぅ〜。もぅ、怒ったんだからねっ!」
まんごは、ゆっくりと玄武に近づいてゆく。
「おい、動くなよ! ほら! え!ほら!」
玄武はまんごに見せつけるように、リコーダー吹き口をペロペロと舐めた。
「不知火くんって……、バカなの? 人質は生きているから価値があるんだよ……。もぅ舌をつけちゃったよねぇ? もぅ取り返しはつかないよっ?」
まんごは、足を止めることなく、玄武に近づいてゆく。
その目は、ジロッと玄武を睨んでいた。
「ま、待て、高村! なぁ……、うっ」
ピシッ
乾いた音とともに、まんごの右手が玄武の右頬をはたいた。
ビンタだ。
「痛って〜」
玄武は、両手で右頬を押さえる。
玄武の手から離れたリコーダーは、彼の足元に落ちた。
「私のリコーダーは返してもらうからね! 不知火くんって、本当に最低ねっ!」
まんごは、地面に落ちたリコーダーを拾い上げた。
まんごは、もう一度、玄武を侮蔑の眼差しで睨みつけた後、踵を返し、教室に向かった。
――――――――――――――
「あれ、まんごちゃん。どうしたの?」
水道でリコーダーを洗っていたまんごに、堀江沙耶香が声をかける。
「実はね、不知火くんにリコーダーを盗まれて、先端を舐められちゃったんだ」
まんごは涙を浮かべながら、沙耶香に伝えた。
「え〜、あいつきもいね〜」
沙耶香はまんごに同情しながらも、不知火玄武に対して怒りをあらわにする。
そして、沙耶香は、涙を流すまんごに寄り添い、まんごの頭を撫でた。
「まんごちゃん、元気出して……。」
「う、うん。ありがとう、沙耶香ちゃん。でも、私のリコーダーが……。」
「リコーダーが……って、ことは間接キスってやつかぁ、まだファーストキスもまだなのにねぇ……。」
沙耶香はさも自分のことのように、大きくため息をついた。
「いや……。そのぉ……。」
まんごは、キスという単語に反応してしまい、顔を赤めてしまった。
確かに、玄武とはリコーダー越しに間接キスだったのかもしれないが、キスが初めてではなかった……。
「ん? あれっ?」
俯くまんごの下から、見上げるように沙耶香が顔を出す。
「ええっ? あれれ? もしかして、まんごちゃん、キスしたことあるの?」
沙耶香はじっとまんごの目を見つめる。
興味深かそうに、真剣な眼差しで、まんごの目を見つめた。
まんごの目には涙が滲んでいたが、その視線は泳いでいた。
「いや、いやぁ……。そのぉ〜」
まんごは、さらに顔を真っ赤にしてしまった。
もう、この顔の赤さでキスをしてないとしらばっくれるのも無理な話だ。
「ちょっと……、誰とよ?」
沙耶香はまんごに詰め寄る。
両手を肩に乗せ、俯くまんごの顔を下から覗き込む。
「色々あってねぇ……。」
そして、まんごは、ドリアのことから、魔法少女のことまで洗いざらい話した。
「……それで、この子がマンゴスチン・ハート。さっき、不知火くんにこいつを渡せって、脅されたんだ」
まんごは、沙耶香にマンゴスチン・ハートを見せた。
「ふ〜ん、なるほどね。だいたい話の流れはわかったわ。まぁ、私が一番気になったのは、まんごちゃんにキスの経験があることよね。まんごちゃんだけずるいなぁ〜、キスの経験あるの……。」
「えっ……? そこ……?」
まんごは、たじろぐ。
他にも気になる点は多々ありそうなものだったが、沙耶香はキスについて言及して来るのだ。
「ねぇ、まんごちゃん。私もしたいなぁ〜。私ともしてよ……。」
沙耶香はまんごの目を見つめる。
「えっ?」
沙耶香の突然の誘いにまんごは困惑する。
「何よ? そのドリアちゃんって子とはできて、私とはできないの?」
沙耶香は意地悪な口調でまんごに詰め寄ってゆく。
「いや、そういう意味じゃなくて……。」
「じゃあ、しましょう!」
沙耶香は、まんごの顔に、ゆっくりと顔を近づけてゆく……。
ドドン!
次回に続く。
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次回予告!!
でれって〜ん
ででで ででで ででで デッ デ〜ん
MAN〜GO〜〜〜〜!
卑劣な策にはまり玄武に純潔を奪われたリコーダー
悲しみを押し殺し リコーダーを洗うまんごにっ
さぁ〜らなる試練が待ち受けるっ!
間接キスを奪われたその先に
守るべきは
その真っ赤なくちびる!
マンゴスチンよりも赤い まんごのくちびるに
凶悪な
そして、さらに
凶悪な刺客が襲いかかるぅ
守れるのか?
いやっ
守らなければ〜 ならないっ!!
まんごの純潔はぁ!
ここでっ 守るっ!!!!!
次回!!!
魔法少女 マンゴ☆スチン!
『第20話 凶悪な刺客!まんごのくちびるを奪うのは、天使か?それとも、悪魔か?だまんごー』!!!
「ドリアちゃん……。私……ガンバるからっ……。」




