第八拾弐話 静止した教室の中で。
「ごっ……。ごめんなさい……。僕がっ……。僕がやりましたっ……。」
『花田福男』は、涙を流しながら、嗚咽混じりの声を出した。彼はすでに涙と鼻水で顔をグシャグシャにしている。
「そうか……。みんなの前で、よく言い出せた。そして、よく謝れた。偉いぞ。花田くん……。」
岡本隆彦先生が大きく頷く。彼は3年B組の担任の先生である。
岩下真小学校の3年B組の教室。火曜日の放課後であった。学級会で、堀江沙耶香のリコーダーがいたずらされた事件の犯人探しが行われていたのだ。
岡本先生は教壇から降り、花田福男の机の近くに歩み寄った。そして、腰をかがめ、花田福男と視線の高さを揃える。
「じゃあ、花田くん。どうして堀江のリコーダーにいたずらをしたのかを、先生に教えてくれるか?」
岡本先生は、花田福男の目をじっと見る。彼の目は涙でいっぱいだったが、彼は、鼻をぐすんとすすりながらも、頷く。そして、嗚咽混じりの声で話しはじめた。
「あのぉ……昨日。なんとなく、鼻でリコーダーを吹いてみたくなって……。でも……。鼻の穴は2つあるのに、僕はリコーダーは1本しか持ってなくて……。それで……。隣のロッカーにあった堀江さんのリコーダーを……。借りました……。」
「そうか……。それで……?」
岡本先生はコクコクと頷きながら、福男の話を真剣な顔をして聞く。
「2本のリコーダーを使って……鼻の穴で、吹いてみました。最初は難しかったけど……。どっちのリコーダーも鼻水でグチョグチョになっちゃったけど……。そのぉ……。コツを掴めたようで……なんとか……。」
「そうか……。吹けたのか?」
「うん!」と、花田福男は、涙と鼻水で顔をグチョグチョにしながらも、嬉しそうに口元を緩める。
「そうか、それはよかった。好奇心は大事だ! 好奇心を失ったら、人間は人間でなくなる。大事にしろ! ただし……、他人に迷惑はかけるな。わかるか? 自分のリコーダーだったらいいんだ。鼻の穴に入れようが、お尻の穴に入れようが。ズボンのチャックからはみ出させて、『ち○こ!』ってやったっていい。好きにしてもいいんだ。だがな、他人のリコーダーはダメだ。わかるだろ?」
岡本先生は、花田福男の目を見つめる。その表情は真剣である。
「……うん。自分のじゃないから……。その持ち主の子が嫌がるから……。僕の鼻水で、堀江さんのリコーダをドロドロのぐっちゃぐちゃにしちゃったら、堀江さんは嫌がるから……。そして、リコーダーの先端からドロリと垂れてくる鼻水が、僕の手のひらをビッショビショにして……。で、僕も思わず『最低だ……、僕……。』って言っちゃうくらい。僕は最低なことを、堀江さんにしたんだ。と……思います……。」
「そうだ!」と、岡本先生は大きく頷く。そして、真剣な表情で言葉を続ける。
「そう……、君は……、君たちはまだ若いから、間違ってもいいんだ。間違うことは仕方がないんだ。そうやって成長していくから。でも、謝ることができてこそだ。謝れなければ、成長はできない。まぁ、なんだ、堀江の大事なリコーダーだったけどな。ちゃんと謝れば、堀江だって、許してくれるかもしれない。自分のしたことを認めて、ちゃんと謝るんだ!」
「ごっ……。ごめんなさい……。」
花田福男は、目をつぶりながら謝った。その目から、また大粒の涙が流れる。
「そうだ、よく謝れた! 偉いぞ、花田くん。まぁ、あれだ。2本目のリコーダーは、親に買ってもらうといい。それで練習するんだ。じゃあまた、先生とみんなに、花田くんの鼻リコーダーの演奏を聞かせてくれよな。みんな楽しみにしてるから……。あと、あれだ。先生に謝るんじじゃなくて、ちゃんと堀江に謝るべきだから……。ね?」
岡本先生は、花田福男に微笑みかける。
「うんっ……。わかりました……。堀江さん! 本当に、本当にごめんなさいっ! みんなも、ごめんなさい!」
花田福男は、右手で大きく涙を拭って、そして、大きく頷いた。そのまま、堀江沙耶香の方に向き、大声で謝罪した。更に、この学級会で放課後みんなを居残りさせてしまった意味も込めて、みんなにも謝ったのだった。
「えっ……、じゃあ。うん……。」
堀江沙耶香は、小さく頷く。目にはじんわりと涙を浮かべていたが、無表情のまま泣くことを我慢していた。
一方、3年B組の教室の生徒はみな、ほっと肩を撫で下ろしていた。
その中で、『藤井和雄』は、冷や汗を掻きながら沈黙していた。声を必死に押し殺し、何事もなかったかのように平然を装いながら……。
そして、彼が、昨日放課後に色々と会話した『古池竜也』の方に目を向けると。竜也は、青ざめた顔で下を向いていたのだった……。
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「どうして男子って、こう……。馬鹿なのかしら……? こないだは、まんごちゃんのリコーダーもいたずらされたし、今度は私のリコーダーだし。もぅ、やんなっちゃう……。」
「そうだよね……。バカばっか……。」
沙耶香と高村まんごは、みんなが帰った後の教室で、愚痴をこぼしていた。そして、今日は、岡本先生も一緒だ。今回の事件の被害者である沙耶香の心のケアも兼ねての居残りだ。小学校の先生も大変なのだ。
「まぁ、そうだけどな。今回は、花田も、悪いことをしようと思ってやったわけでもないし……。ああいう馬鹿げた好奇心も、大事にしてやらないといけないんだ。まぁ、方法に問題があったのは確かだ……。ちょっと大目にみてやってくれないか……?」
岡本先生は、3年B組の担任の先生として、生徒が非行に走ったり不登校にならないようにと、色々と考えなければならない。教育のために、悪いことをした生徒も、庇うのだ。
「確かにそうなんだけどさぁ……じゃあ、先生! なんか……。私、ちょっと疲れちゃったから。元気になるために……、先生のリコーダー、舐めてもいい?」
沙耶香は、岡本先生に顔を向け、ニヤリと微笑んだ。
「え? 先 生 の リ コ ー ダ ー ?」
岡本先生は、ポカンと口を開けながら、顔をゆっくりと沙耶香の方に向けた。
バンっ!!!
次回へ続く!
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私、高村まんご。小学3年生。
3年B組! 岡本先生! のクラスで、親友の堀江沙耶香ちゃんと一緒に小学校生活をエンジョイ中だよ。
た〜まに、変な事件も起きたりするけどねっ。まぁ、小学生ってのは、色々あるから大変なんだよ。
で、今回もね。ひっどいよね〜。
まぁ、リコーダーがしょっぱかった理由は、まぁ、鼻水のせいだとしてね。
でもまぁ、花田福男くんはね。ちゃんと謝れたし。感心だよね〜。
もし謝れなかったら、
小学3年生のいたいけな女児のリコーダーを、ねっとりドロドロな鼻水で陵辱するなんてっ! 絶対にっ! 許さないっ!!
とかいうセリフと共に、制裁を受ける羽目になったと思うんだけどね〜。
ん? あれ? なに?
こっちの方が見たかったって?
おいおい〜。まぁ、でも。花田福男くんは、根はいい子なのよ。ただリコーダーを鼻で吹きたいという好奇心に負けただけだから。うん。許してあげて。
そう、彼はきっと再登場するよね。うん。プロ鼻リコーダー演奏家としてねっ!
あっ、そうそう。今回の話で、めでたく100話になったのよね。まさかこんなに長く続くとは思ってなかったよね〜。びっくり〜。
ちょっとした悪ノリで始めたマンゴスチンシリーズが……ねぇ(笑。
まぁ、まだまだ続くからね〜。これからも、まんごちゃんの活躍に期待してねっ!
ヨロシコシコッ!!
さてと。ということで、さやかちゃんとたかさん先生が、な〜んかいい感じかな〜?
あっちゃ〜。
そういうことか。そういうことなんかぁ〜。
もう、やばいね〜。
生徒と先生の関係なのに?
まぁ、漫画とか小説だとよくある展開だし。うん。別に、先生だからってね、聖人君子というわけでもないからね。普通の人間だし。可愛い女児が言い寄ってくれば、手も出すよね〜。
……おっと。あんまし言いすぎると怒られそうだから、これくらいにしておいて……。
まぁ、そういうことだからねっ! 次回をお楽しみにっ!
次回!
魔法少女 マンゴ☆スチン Tropical FruitS
『第83話 さやかレコード2〜ねぶられた先生のリコーダー〜』
だよっ!
絶対に読んでねっ!
マンゴスチン! カジュー! ヒャクパーセントー!




