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リドル・ハザード フラグを折ったら、もっと大変な事になりました(悪役が)。  作者: sirosugi
RCD3 2023 9月

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8/88

8 証拠というか、証言が取れれば、世間は迅速に動いてくれるらしい。

 児相が出てくる案件となりました。

 証拠というか、証言が取れれば、世間は迅速に動いてくれるらしい。そんなことを思ってしまうほど、その先の展開は早かった。

 僕の財布の中身を犠牲に楽しくデザートを食べていたら、町役場の職員と名乗るおばさんとおじさんが現れ、僕たちは病院へ案内され、リーフさんは医師の診断を受けた。

 やや強引、本来なら保護者の了承が必要なことだったかもしれないが、

「あの家は、前々から噂が色々あったさね。」

 ローズさんがあとで教えてくれたことだけど、ウッディ・リドルには、半年前から疑惑がいくつもあがっていて、多少強引でも道理を通したらしい。

 やんわりと参加していた地域行事や買い物などの外出が極端に減り、娘であるリーフさんも通学以外での外出が減った。それでも納税や学校関係の書類などに漏れはなかったのに、なぜか中学進学に関わる書類や面談などはとぼけたり、欠席したりしていた。忙しいやタイミングが悪いなど理由を言っていたが、担任や役場の職員が家を訪ねても玄関先の対応のみで、頑なに家へはいれようとしなかったそうだ。 

 何かやましい事があるのではないか?大人たちがそう考えるが時すでに遅く、夏休みになり小学校を卒業したリーフさんは家からほとんど出ることがなく、職員が面談を求めても、門前払いだったそうだ。

「家族の問題だ。ほっといてくれ。」

 そう言われると、手を出しづらい。強制的に立ち入ったり、リーフさんを保護したりするには証拠が足りず、どうしたものかとなっていたらしい。

 仕事がら、子どもや若者と関わる機会の多いローズさんは、そのことを知っていて、リーフさんが子供だけで入店したことをチャンスと思い、行動にでた。

 そしたら、真っ黒だった。

「私は、病気だってパパが言ってました。だから、外へ出てはいけないって・・・。」

 スムーズにいった要因としては、職員や大人の質問にリーフさんがそう答えたこともある。彼女自身も自分の境遇には疑問に思うことがあったらしく、検査や質問には素直に応じていた。

 僕はプライベートなことやセンシティブな内容の時は離れていたけど、彼女が安心できるようにできる限り一緒に大人とのやり取りに同席していた。

 大人の指摘に驚き、時々身体を震わせる彼女は見ていて痛々しかった。


 結果、彼女は病気ではなかった。むしろ、身体は健康そのものだった。


 健康だったが、殴られた跡など、彼女の身体には虐待を思わせる証拠がいくつも見つかったらしい。

 決定打となったのは、リーフさんの右腕にある無数の注射のあとだった。医療免許のない行為、そして彼女の証言から明らかに異常な家庭環境を聞いた職員は目と耳を疑ったらしい。

「少なくともウッディ・リドルという名の医者は存在しない。」

 こちらに聞かせる気のないつぶやきの重さは計り知れない。リーフさんはランチを振る舞われながら、即日保護が決まった。

「違法な薬物の所持と無資格の医療行為。これなら警察も動けるさね。」

「そうですね、今日にでも通知と立ち入り検査をしたいところです。」

 バタバタと大人たちが動く様子を僕とリーフさんは、ふかふかのソファーに座って眺めていた。

「・・・ごめん。」

 ふいに謝ったリーフさん、僕はその震える手をそっと握った。

「別にいいよ。今日は暇だったし。」

 気の利いた言葉は見つからず、冗談のような言い方になってしまったが、震えていたのは僕のほうかもしれない。「俺」の記憶をきっかけに、とりあえず連れ出したが、ここまで大事になるとは思っていなかった。本音を語るならば大人に任せて逃げ出したい。

「ありがとう。」

 でも、目の前の友人、不安そうに視線をキョロキョロさせているリーフさんを見捨てて逃げることはできなかった。

 これでも、男の子なのでそれくらいの意地と正義感はある。

 まあ、だからと言って何かできるわけでもない。僕たちはたわいない話をしたり、テレビをみたりしながら大人たちがバタバタしている様子をじっと見ていた。


 その後は、警察官も話に加わり、ウッディ・リドルの家への立ち入り捜査が計画されることになった。リーフさんの証言と身体の様子から、怪しいものがあることは明らかで、彼女の保護と同時に捜査することで、証拠隠滅の機会を相手に与えないためらしい。

「君にはつらい事かもしれない。仮にこちらの勘違いだった場合は・・・。」

「いい、パパはきっとおかしい。だからパパを止めてください。」

 娘であるリーフさんは、頭を下げる警官のおじさんにきっぱりとそう言った。


 大人たちが去っていたあと、リーフさんはまた震えていた。

「・・・ねえ、私って正しいかな?パパを裏切っちゃった。」

 その気持ちの深さは僕ごときに量れるものではない。ただ分かることは、「俺」の情報では、彼女にこういった救いの可能性はなかった。救いの手が伸ばされることはなく、虐待の日々が続いた彼女は2年後に、モンスターとなる。そして、僕や街の人を・・・。

「さあ、でもこれだけたくさんの人がリーフさんを心配して動いてるってことは確かじゃない?」

 僕のように、保身から動いてるのではない。些細な違和感を見逃さず、チャンスがあれば子供一人でも助け出す。世界は優しく、意外と強からしい。

「大人に任せてもいいんだよ。僕たちは子どもだし。」

 無責任と思いつつ、僕はこの状況に甘んじていた。少なくとも子どもの僕がでしゃばるのは良くない。そう思うことにした。

 色々と情報を伝えなかった結果、大人が大変な目にあうことになることをこの時はまだ知らない。

 

 虐待の疑いがある子を一時保護、調査して親とも面談をする。このシステムは日本のものを参考にしています。舞台はアメリカながら、その辺は曖昧ですみません。

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