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リドル・ハザード フラグを折ったら、もっと大変な事になりました(悪役が)。  作者: sirosugi
緑の縁 2024 5月

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72 日本には5月病というものがあるらしい。ラルフさんが急にそんなことを言い出した。

 新章開幕 今度こそホラー展開になるかな?

 日本には5月病というものがあるらしい。ラルフさんが急にそんなことを言い出した。

 いつものようにダイナーローズでお茶をしつつ、まったりと過ごしていた放課後、リーフさんを迎えに来たラルフさんが、一緒に宿題をしていた僕たちをみて、そんなことを言い出した。

「日本は、学校などが4月からはじまるんだ。そして5月には、大型連休があるんだって。」

「へえ。」

 とリーフさんが反応しているが、僕はどう答えたものか・・・。

「新生活による環境の変化や、理想とのギャップで、この連休を超えたあたりからやる気がなくなってしまうことをいうらしいんだ。」

 「俺」の記憶は日本人由来のもの。だから、5月病に関する知識もきっちりある。この国だと、「10月病」とでも言うのだろうか?なんだかんだ、目まぐるしい日々だったので、やる気がなくなるなんてこと、考える暇もなかった。

「ちなみにこの街では、イースターで盛り上がって成立したカップルが、付き合って三か月で関係が冷え切って別れることをいうらしいねー。」

 俗っぽい話。けど、何となく心当たりがあるのがまたなんとも言えない。「俺」の記憶もあるせいか、そう言った方面には冷めた感じの僕だからかもしれないけど、中学生の背伸びみたいな恋愛劇が学内では確かにあった。

「・・・私達は仲良し。」

「うんそうだね。君たちは、とっても仲良しだ。」

 むっとしたリーフさんにラルフさんがニコニコと笑う。僕はどんな顔をしていいか、わからなかった。

 この会話に意味はない。だけれども、その後に起こった騒ぎのときに僕がこの会話を思い出したの確かだ。 


 2024年5月 


縁の緑(えにしのみどり)」という噂を僕が知ったのは、新聞部の活動の一環で校内の噂話を調べているときだった。部の先輩が、どこかで聞いた話として紹介してくれた。

「なんでも、意中の相手との仲を深めて、お互いの秘密を知れるおまじないらしい。」

 そう前置きした先輩の語った内容は、ありきたりと言えばありきたりだった。

 

 薬指に緑の毛糸を結び、相手の持ちものをしばる。

 相手と自分の名前を3度繰り替えしながら、持ち物と指がくっつくまで糸をぐるぐると巻く。

 最後にそれを燃やす。

 これを誰にも見つからないように行う。

 糸の長さは任意だが、長ければ長いほど相手との縁が増えて仲が深まる。


 サラっと聞いただけだから真偽は不確か。だが、その話を聞いたことあるという部員もいた。

「なんだそれ、やけに具体的なのがやだな。」

「でも、雑貨やで緑の毛糸だけ売れ行きがいいらしいですよ。」

「まじかよ。」

 真偽はともかく、噂話で盛り上がるのは新聞部のいいところだ。大事なのは真偽ではなく記事として面白いのか、どうか。もちろん、注釈として実行した場合、新聞部は一切の責任を負いませんと一文を添えれるのは忘れない。

「でもさあ、そういうのって普通は赤じゃないのか?」

 アメリカではそれほどじゃないけど、運命の赤い糸という表現はジャパニメーションでよく見かける話なので、新聞部なら知っている。

「たしか、アジアでは、赤い糸の伝説というのがあるらしいですね。運命の相手とは足首でつながっているっていう話。」

「あれって左手の小指じゃないの?」

「地域差はあるんでしょうね。」

 赤い糸というのは元々、中国が発祥のものだ。薬指というのは結婚指輪にもいえるが、薬指が心臓とつながっているからとかそんな理由だったと思う。

 ともあれ、多感な青少年が集う中学校でそういったおまじないが流行るのは珍しいことではない。もっとも信じている人は稀で、遊び感覚でやるのと同じだ。テーブル・ターニングの真似事だって、面白がってするけど、信じている人は少数派だ。

「ノックオンウッドとか、乳歯のおまじないは試したことある。」

「あるある、乳歯が抜けるとお小遣いゲットってなるやつ。」

 言いながらこんこんと机をたたくのは、アメリカや西洋でよくあるおまじないノックオンウッドだ。木のテーブルとこんこんと叩くことで、幸福を願ったりお祓いをしたりするやつ。

「流行りのまじないとその影響か。記事としては面白いけど。」

「火を使うってのがまずいよね。先生たちに止められちゃうよ。」

「だよねー。」

 ネタとしては面白いが、火を使うおまじないとなれば、それを記事にするのは問題がある。

「でもまあ、そういうおなじないがあるって匂わせるぐらいなら。」

「ほかのおまじないとかと一緒に特集記事にするのは?」

 そうして、盛り上がっていく中、一年生である僕は、部内の古臭いパソコンで記録をもくもくととっていた。色々あったから、おまじないというのはちょっとアレかなと思ったけど、先輩たちの話は面白かった。

 イギリスでは、十字の模様が入った「ホットクロスバン」というパンがあり、「友人と半分こして食べると、2人の友情はずっと続く」と言う。流れ星を見つけた瞬間に「願いごとを3回唱えると叶う」というのは、アメリカが発祥。メキシコには、悪い事をリセットする魔法の箒があるとかないとか、なんだかんだ色んな噂やおまじないを聞いているのは楽しかった。

「じゃあ、次回の記事は、世界のおまじない特集ということで。」

「「異議なし―。」」

 結果として、おまじない話は大いに盛り上がり、最初に上がった、「縁の緑(えにしのみどり)」については保留ということになった。

 それぐらい、ささやかで秘密裏に、それでいて確実に、この噂は子どもたちの間で広がっていたのだ。


 テーブル・ターニングとは、こっくりさんの元ネタで、テーブルを囲んで行う恒例術ごっこです。子ども向けかは知らないけど、いい年した大人がこういう遊びをしている映画はわりとあります。

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ガチもん混ざってそうでコワイな
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