55 遊園地って、本気になるとRTAみたくなる。
遊園地に到着しました。
遊園地って、本気になるとRTAみたくなる。
遊園地へ向かう車の中でも熱心に繰り広げられる会話に俺はそんなことを思っていた。
「・・・アシストンコースターは、開園と同時に並べば、10分で乗れる、その間にファストパスを入手しておけば午後にもう一回乗れるはず。」
「じゃあ、優待チケットはツインループに使う感じにしようか。あれも結構待つから。」
「・・・リーバーライドも乗ってみたい。」
「なんだかんだ、全部乗れるとは思うよ。」
「・・・アシストンアニマルズのショーとパレードは外せない。」
「なるほど、いい場所で見るなら、計画は必要かも。」
アシストンバレーは、そこそこに広いし、人気もある。そのためアトラクションによっては乗るために30分以上並ばないといけないこともある。どのアトラクションをどの順番で乗るかはもちろん、どのショーを見るか、食事はどこで食べるかなどを考えるのは、ゲームの攻略チャートを組んでいるようで楽しかった。
「・・・迷う。」
「見てから決めても大丈夫だと思うよ。
でもまあ、今回はリーフさんの遊園地デビューなのだ、チャートはチャートであって、行き当たりばったりだってきっと楽しいはずだ。
「・・・アシストンコースターは絶対乗る。」
うん、それは守ろう。
ちなみに、チャートは入園と同時に放棄した。
「バウバウ。」
「・・・そうだね、ワニだね。」
アトラクションへ向かう前。僕たちは遊園地の一角に作られた簡易動物園に心を奪われた。パンフレットには載っていなかった最新の施設だったし、何たってワニがいたからね。
「ワニか・・・、鱗はどこなんだい?」
「ええっと、背中のゴツゴツしたところですね、こうしてみると、やっぱり異常です。」
ラルフさんが口にした疑問にルーザーさんが答え、僕たちは足を止めた。
「爬虫類の鱗は、皮膚とくっついているのでそれだけがとれるということはないんです。脱皮した皮の一部に鱗がついていることもあるそうですけど、あのサイズのワニからだとしたら・・・。」
言い淀んだのは、僕たちの前だったからかもしれない。
「・・・つまり、ワニの皮を剥いだかもってこと?」
「そ、そう、たぶん革製品の加工前のものじゃないかって、というのがロビン、うちの生物担当の見解なの。」
「じゃあ、本物のワニの皮を染めたものってことですか?」
配慮なく質問してごめんなさい。でも中学生なのでそのくらいでは怯まないです。
「うーん、そこは分からないって、少なくともペンキとかインクで上塗りしたものではないってことらしいけど。」
「たしかに、それなら、こすったり削ったりすればすぐにわかりそうだ。」
僕たち5人が知り合ったきっかけとなった、あの鱗。思えば検査結果について聞くのは初めてだった。
「分析できたのは一部だけだから、何とも言えないらしいのよ。ただ、構造や成分から間違いなく爬虫類の皮の一部だとは言っていたわ。」
「へえー、すごいですねー。」
「うん、一部を電子顕微鏡で確認してたわ、今度その画像も見せてあげるね。」
「・・・さすが、ミステリーポーター。」
「ふふ、ありがとう。」
こんな感じに、ワニを前にすっかり話し込んでしまった。ほかにも蛇や亀、モルモットなどもいる簡易動物園は楽しかったです。
ガラス越しに見る蛇は、眠っていても迫力があったし、親子で重なる亀は、見ていてほっこりした。僕らの身近な動物といえば、デブネコ様かエメルなので、ツルツルした見た目の動物というのは新鮮だった。デフォルメしたぬいぐるみもなかなか可愛いくて、リーフさんが固まっているのを見て、ラルフさんが帰りに買って帰るために店員さんに取り置きをお願いしていた。ルーザーさんは研究用に、リアルなワニのフィギュアや、ワニ革のグッズを買っていた。僕も勢いでワニの牙を模したキーホルダーを買ってしまったよ。
ちなみに、遊園地の上級者は最初にお土産を買うと、パンフレットに書いてあった。アトラクションの混み具合もすごいけど、閉演間近のお土産屋さんは混雑もそうだけど売り切れの可能性もあるからだ。再入場も可能なので、お土産を買って、車やホテルに荷物を置いてからゆっくりと楽しむのだとか。
「バウ?」
「きゅ!。」
リーフさんの肩にマフラーのように乗っていたエメルが鳴き声をあげて、モルモット達が一斉に小屋に逃げ込んだ時はちょっとだけ焦った。
モルモットを食べ物を見るように見ていたなあの毛玉。
ちなみに最初の会話の段階で、レイモンド叔父さんはどこかに消えていた。後で聞いたら、生きた動物はしばらく見たくないと言っていたけど、何かあったのかな?
今回、会話ばかりになってしまいました。
次回からは遊園地を満喫します。たぶん、きっとメイビー。
大学時代の知り合いに、某夢の国の年間パスを毎年購入し、効率的に回るチャートを考えていた人がいました。最近は会えていませんが、「マイスター」と呼ばれ尊敬されていました。




