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リドル・ハザード フラグを折ったら、もっと大変な事になりました(悪役が)。  作者: sirosugi
RCD4 2024 3月

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51 身長が全てではないというのはわかっているけれど、気にするなというのは無理がある。

 2024 3月 閑話 

 身長が全てではないというのはわかっているけれど、気にするなというのは無理がある。

「・・・伸びてない。」

 家の柱につけた印が3か月前と変わっていないことに。

 去年の年末には160センチの大台に乗れたと思ったけど、

 早起きに牛乳、ストレッチや運動など身長を伸ばす方法はとりあえず試しているのだけれど、効果は芳しくない。

「・・・ホーリーはそのままでもいいと思う。」

「リーフさん」

それは持っている人の余裕です。

 きっかけは家に遊びにきたリーフさんが部屋の柱にあった印に興味をもったことだ。家の階段の柱には、僕や父、叔父さんの身長の記録が記されている。祖父母から譲り受けた家には、身長やジャンプ力などを父さんと叔父さんが競い合っていた痕跡が多々あり、僕の目標は過去の父たちの記録で、身長の記録や天井の落書きは僕にとってはいつかは超える目標だ。

「・・・面白いね、それに羨ましい。」

 そんな話を聞いてリーフさんはクスクスと笑っていたけど、少しだけ寂しそうだ。思えばウッデイ・リドルの家には、そういった子供の遊びのような仕掛けがなかった。

「なんなら、リーフさんもつけてみる?」

「・・・うん。」

 そして、客観的に見せつけられた身長差に、落ち込んだのは内緒だ。

 

 さて、なぜ身長の話になったかと言えば、それは三月末のイースターに向けての仮装を用意するためだ。創設の記念日とも近いことから、わが町ではイースターイベントは盛大に行われる。おなじみのエッグハントやエッグレースなどのイベントはもちろんのこと、中学生は揃いの仮装をして大通りをパレードしながら、お菓子を配るという独特のイベントがあるのだ。

 イースターエッグをもたらすウサギを模した春の妖精の装いは、魔法使いのローブのようなもので見た目は地味だが、バッジやステッカーなどで自由に改造することが許されている。友達や部活動などで揃いの装いをしたり、お互いの飾りを交換したりとこれが中々楽しそうで、子どもたちの憧れであり、大人たちの思い出となっている。この時期限定で出稼ぎに来る小物売りの人だっているらしい。

 そんな素敵な仮装だが、ローブは十数年と受け継がれているもの。お祭りの時期に子どもたちは学校からローブを借り、お祭りが終わった後はステッカーやバッジをとり洗濯してから返却する。当時の町長が気合を入れて準備をしたもので生地も丈夫で着心地も悪くない。

 が、一般的な中学生の身長に合わせた用意されたローブは、僕には大きすぎるのだ。せめてあと5センチあれば裾を踏まずに歩けるのだけれど・・・。


 というわけで、今日はイースターに向けての準備だ。

 改めて正確な身長を測られ、裾上げと調整を親に任せ。子どもたちは街の雑貨屋でローブにつける飾りを捜しにお出かけする。体型に合わせた微調整は安全ピンとかでもいいけど、各家庭でやってあげるのも伝統らしい。

「・・・飾りってどんなのがいいの?」

「うーん、目立つ人だと各国の国旗のピンバッジをつけたり、背中に漢字のステッカーとかだねー。」

 この時期限定で増設された装飾コーナーで、他の生徒に紛れながら僕はリーフさんの質問に答える。

「まあ、ピンバッジの人は途中でローブが破けて大変なことになったらしいけど。」

 金属製の豪華なピンバッジを何十個もつけて歩けばどうなるかはまあ・・・。

「最近はステッカーの人が多いかな。ワッペンとかピンバッジもあるけど、ステッカーが無難だね。」

 使いきりならステッカーがお手頃で、部活などで代々引き継ぐものや他でも使いたいならピンバッジやワッペンを買うのが定番だ。

「・・・これかわいい。」

「僕は星型にするかな。」

 小さい物は10セント、大きいものでも25セント。お祭り価格のセールなのは子供のお財布にもやさしいのだ。お手頃価格であったしバイト代が入ったばかりでそこそこお小遣いがあったから、気づいたら結構買い込んでいた。飾り以外にも記念グッズや帽子なんかも売ってると手に取っちゃうのよ。

「・・・色々買った。」

 大人買いなリーフさんにつられたのも否定できない。

  

 気づけば結構な荷物になってしまい、時間も遅くなってしまった。そこで、僕たちは近道をして、バス停に向かうことにした。

 それがよくなかった、

「おいおい、子どもがこんなところをうろつくなよ。うぜええな。」

「おいおい、やめろよ、びっくりしているじゃないか?」

 楽しく買い物を済ませた帰り道、そこにいたのは、見知らぬヤンキーだった。

 大型のハーレーバイクで道をふさぎ。お菓子や空き缶で地面を汚し、ポチポチとスマホをいじっていた彼らは、僕らを見つけたら因縁をつけてきた。

「お祭り気分で、浮かれデートですか、うぜええな。」

 田舎ということで、ごくごくたまにこういう勘違いしたバイカーさんが来るというのは聞いたことがあるけど、まさかこんなタイミングで遭遇していしまうとは・・・。

 この街のイースター、そして中学生によるパレードは有名だ。

 彼らの狙いは、パレードの準備で浮かれる子供たちをからかい、そのお小遣いをカツアゲすることだ。対策として、お巡りさんたちも巡回はしているが、相手も悪知恵が働くらしい。

 ここは刺激しないように距離を取るべきだ、彼らだって子どもをビビらせて揶揄っているだけ、最悪の場合、なけなしの小遣いをカツアゲされることになるかもしれないけど、身の安全には代えられない。

 僕は愛想笑いを浮かべたまま、リーフさんの手を引いて、道の端に避ける。いざとなったら大声をあげて、向こうの通りまで走ることも覚悟する。

「・・・うるさい。」

 と思っていたらリーフさん?

「ああ、なんだ嬢ちゃん、今なんて言った?うぜええな。」

「うるさいっていった、無駄にバイクをふかしてガソリンを無駄遣いするだけの癖に。」

 いつものように前髪でその表情はうかがえないし、声色はフラットなものだ。しかし、僕の手を振り払ってバイカーたちに歩みよるリーフさんからは、なんか湯気のような気配がみえた。これはあれだ、おかずとかお菓子を取られたりエメルを馬鹿にされたときに見せる彼女の怒りだ。

「ちょ、リーフさん、だめだよ、刺激しちゃ。」

「・・・どうして?」

 小首をかしげながら僕を見返す目は、歪な物だった。子どものように素直でありながら、機械のように無機質。彼女が時折見せる素の表情。そう、彼女は本気で僕が止めた理由が分からない。

「ははは、お嬢ちゃん、威勢がいいねー。それに対して、彼氏の方は腰抜けか。うぜええな。」

「・・・じゃない。」

「あ、なんだ、もっとはっきりしゃべれよ、ぶん殴んぞ。うぜええな。」

 そんな様子にバイカーたちは機嫌よさげに笑って近づいてくる。もとももと子どもをからかい、一時の暇をつぶせれば満足なのだ。生意気な態度をとった相手が自分たちの暴力で怯えるのを楽しみしている。そういうクズだ。

「ホーリーは腰抜けじゃない。」

 だが、彼らは間違っていた。

 ちょっと、からかったつもり言動が、他者から見れば愚かな犯罪であること。そして、一人の少女の逆鱗に触れていたことに気づきしない。

「はっ?」

 話しかけていたバイカーは己の身に何が起こったか理解できなかった。可愛らしくも生意気な女子を威嚇し、あわよくば数発殴るつもりだった。驚かせて、謝らせてから殴る、そんなつもりで振り上げた腕の感覚がない。不意に重くなり感覚のなくなった右腕、それは少女の手によって握りつぶされていた。

「いでええええええあ。」

 ちがった、あまりの衝撃で痛みを自覚するのに時間がかかっただけだ。まるで紙切れのようにくしゃくしゃになった腕を目にした瞬間に、男は人生で初めての激痛に悶えた。

「うるさい。」

 その直後にものすごい力で、弾き飛ばされて、愛車と共に地面に倒れ、その意識は狩り取られた。


 男はまだ幸せだったろう。いや、充分に不幸で自業自得だ。だが、残された仲間たちは先に気絶した男を羨ましく思った。何も知らず、状況も理解せずに気絶した男は幸せだったのだ。

「な、てめえ。」

「ふざけるな。」

 残された3人のうち、2人は面子のために動いた。突拍子もない光景だったが、自分たちの仲間が少女に打ちのめされて黙っているわけにはいかない。

「「合わせろ。」」

 仲間内でも喧嘩好きな2人であったから、少女の脅威は理解できていたのだろう、力づくでおさえつけるのではく、左右から挟み込むように殴り、相手の気持ちをくじくことを意識した立ち回り。どんなに屈強な人間でも連続で殴られれば怯み、反応が遅れる、そのまま殴り続けていれば倒せる。それは男たちの経験だった。

「・・・邪魔。」

 そんな浅い思惑は少女の右手一本で阻まれた。殴りかかってきた男の手を掴み、そのまま横に振り抜ける。まるで虫でも払うかのような軽々しさで男は揺さぶられ、もう一人と激突し、お互いの肋骨と内臓に深刻なダメージを受けて気絶する。

「・・・あっちいけ。」

 返す勢いで残った1人に投げられたときには、すでに意識はなく、痛みと瞬間的な負荷で白目をむいたまま最後の一人と激突し、その意識を刈り取った。

「・・・ふんす。」

 左腕に買い物袋を抱えたまま少女は、右腕を腰に当てて、怒っていますと鼻息を鳴らす。その様子はお転婆な女の子のようで可愛らしいなあと、僕は場違いなことを思ってしまった。

「・・・いこう。」

「そうだね。早く帰って飾り付けをしよう。」

 そのまま僕たちは路地を駆け抜けた。通報しようかなとも思ったけど、あれだけの目にあった彼らに追い打ちする気にはなれなかった。


 後に噂程度に聞いた話だけど、バイカーたちは気絶している場面を他のヤンキーに見つかり、バイクや持ち物をネコババされそうになったタイミングで警察に保護されたそうだ。

「女だ、化物みたいな女に。」

 と色々言っていたみたいだけど、警察はヤンキー同士の抗争と判断してその言葉を信じなかったそうだ。


 アメリカの中学生の身長の平均は男子で170センチ、女子は160センチ。

 日本人は男子が160センチ、女子は155センチぐらいらしいです

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