43 ヒジリの名は呪われているんだろうか?
ミューランド大学で何があったのか?少年はニュースを知る。
ヒジリの名は呪われているんだろうか?
クリスマスの日に、プレゼントの代わりに届いた叔父さんの苦情を聞いて僕はそう思った。
「これ、記事にするまではオフレコな。」
メールや電話で断片的に情報を伝えながら、叔父さんはミューランド大学で何が起こったのかを丁寧に伝えてくれた。
まず、僕の渡したミューランド大学の攻略メモ。あれはかなりの精度だったらしい。
ゲストIDで見学可能エリアは限られているはずだが、各地にあった暗号はゲームと同じで、叔父さんはあっさりと最奥の研究室へと侵入できたそうだ。(この時点で、黒幕教授がいたならば、叔父さんの命はなかっただろう。)
暗号を解いた先、エレベーターでたどり着いた場所にあったのは、半分ほど埋まったキメラの保管水槽。それらは休眠あるいは永眠状態で叔父さんや後から来た人達は最初、作り物のマネキンか何かで、研究室もステレスマーケティングや秘密のイベントの会場か何かだと思ったそうだ。
しかし、大学関係者にその事実を伝えたら大騒ぎになったそうだ。学長を含めた上層部の人間は研究室の存在を知らず、即座に警察が呼ばれて捜査が行われた。
叔父さんも関係を疑われたけど、僕のメモを巧妙に隠しながら展望台から見える景色やオブジェクトに隠された暗号についてネットで見かけたと嘘をでっちあげ、その謎解きを実践してみせたそうだ。
おじさん曰く、こういう会員制の集会場というのは割とあるらしい。金と時間を持て余した人の暇つぶし、あるいはその体裁をした犯罪の隠れ蓑として利用されるそうだ。
今回は後者であり、水面下で捜査をしていた警察やらFBIとかが大挙して訪れて、大規模な捜査が行われた。結果として違法な薬物の生成と売買の証拠が大量に見つかり、遺伝子工学部の教授とその腹心と言われる数名が逮捕されたとのことだ。
まだまだ、特ダネの匂いがするとレイモンド叔父さんは、ルーザーさんと共にしばらくは大学の近くに滞在することにしたそうだ。
大まかな話の流れはこんな感じだ。多少の誇張はあるのだろうけど、叔父さんの有能さには、かなり驚かされた。
でも、同時に納得もしていた。レイモンド叔父さんは、RCD2のヒジリなのだ。
改めて「俺」のゲーム記憶をたどれば、レイモンド・ヒジリこと、HRは、ミューランド大学での違法な研究を調べるために、1年後の、2024年の11月に単独大学に潜入し、ノーヒントでほぼすべてギミックを解いてラストステージへたどり着く猛者なのだ。
プレイヤーはHRの残したメモから、攻略のヒントと大学の裏の顔を知ることになる。
「まったくひどい目にあったぞ。お前マジでふざけるな。調べものをするときは、出典や参照はメモしろって教えただろ。情報はリソースが大事だ。」
ネットで見つけた情報を整理したという僕の言葉を信じた叔父さんは、PCのログを調べろだなんだと言ってきたけど、この前初期化しちゃったと謝っておいた。
「帰ったら、PC見せろ。ああ、エッチなデータとか履歴は見ないから。」
「そんなものは見てないよ。」
年相応の調べものはしたけど、やましいものはない。リソースは「俺」の記憶だし。
そんなことよりも、僕たちは本当にRCD2の悲劇を止められたのだろうか?
もしかしたら、この一件がきっかけでレイモンド叔父さんがもっと深みにはまってゲームのシナリオへとつながっていくのではないか?
だとすると、RCD3の世界も・・・。
そんな不安を抱えつつも、どこかでそれはないと思える僕がいて、ゲームのシナリオとは完全に異なっていると確信する俺がいた。
まあ、ゲームのような、ひどいことにはならないだろう。
そんな楽観をもって僕は叔父さんの続報を楽しみに待つだった。
今回のホーリー君は完全に部外者です。
次回からは黒幕視点が続きます。




