42 クリスマスはコスプレをしてはしゃぐパーティーではありません。
再びホーリーの視点 RCD2のゲームについてのお話です。
クリスマスはコスプレをしてはしゃぐパーティーではありません。
そんなことを言った新聞部の先輩は、僕の事を恨めしそうに睨んでいたなー。
「・・・ホーリー、メリークリスマス。」
「リーフさん、メリークリスマス。」
それに納得してしまうぐらい、クリスマスモードのリーフさんは可愛らしかった。
「似合ってるじゃないか。よろしく頼みますよ二人とも。」
「「はい。」」
元気よく返事した場所は、すっかりお馴染みのダイナーローズ。今日はクリスマスイベントのお手伝いをしています。内容は飾り付けと混雑時の接客のお手伝い。報酬は夕方に主催される文芸部のクリスマス会の会場としての貸し出しだ。
うん、平和、平和。
クリスマス会のメンバーはリンダとサラを含めた文芸部の女子メンバー。華やかな舞台に僕の立場はないけど、リーフさんやエメルと仲良しな僕はナチュラルに参加が決定していた。
「・・・プレゼント交換楽しみ。」
「そうだね。」
「・・・あっホーリーはサンタさんを信じてた?ごめん。」
「いやそんなことないよ、一昨年のクリスマスには気づいてたから。」
華やかな飾り付けをしながら、自然と上がった話題はクリスマスの過ごし方となった。僕は家族や叔父さんのほか、この時期に遊びに来るじいちゃんたちと過ごすなんて話。リーフさんは、サンタの代わりにパパがプレゼントをくれたという話だった。ウッディ・リドルの父親の面というのは違和感を感じるけど、数年前までは、いい父親だったわけだし、リーフさんも、情報といった感じでドライだった。
「ちなみにプレゼントは本?」
「・・・秘密。だけど本ではないよ。」
「そっか。」
そして、話題はプレゼント交換のために用意したプレゼントの話にうつり、この話はそれっきりとなった。
ちなみに女子メンバーオンリーのパーティー中は、ラルフさんとローズさんの近くで雑談をしていました。さすがに女子の輪に加わる勇気はないっす。
2023年のクリスマスはこうして平和なものだった。
クリスマスパーティーといえば、RCD2の舞台は来年のクリスマスだった。
冬期休暇で人の減った大学の構内。
そこに入った一本の通報をもとに訪れた地元の警官。
彼が目にするのは、厳重に封されたキャンパス内で起こった地獄絵図だった。狂人となり隣人を襲う学生や研究者、敷地ないを好き勝手に闊歩する異形の生き物たち。そして、敵味方問わず排除しようとする理不尽セキュリティー。
マニエス・グロック 通称マック22歳は、付き合い始めたばかりの大学院生を助け出し、彼女をかばいながら、脱出手段を求めて。大学の最奥にある秘密の研究室へと向かう。
なお、大学院生とは数か月後に食事の好みが合わないという理由で破局している。
RCD1が屋内であったのに対して、広い敷地の中で大量のモンスターに追われる展開は、ゲームのプロモーションの段階で大きな反響を呼び、その設定の使いやすさから、実写映画やアニメにもなった。
前作が謎解きサスペンス風だったのに対して、RCD2はモンスターパニック。ゾンビのような人型モンスターやキメラや巨大生物。
「リドル」って何なんだよって全プレイヤーがなったが、黒幕である、大学教授の狙いは、遺伝子工学と生物を改変させる「リドル」を組み合わせて、究極の生物を創り出すこと。ラストステージでは、教授の歴代の研究作品が並べられた研究室で、自らをモンスターに改造した大学教授と対決することになる。
この教授もやばい。最初は人間形態だったのに、倒すたびに変身し、オオカミや鳥などになって主人公を追い詰める、最終的には自分の作品であるキメラを吸収しすぎて自我が保てなくなり、最後はゲル状のスライムのような姿になり自壊していく。
このラスボスの厄介なところは、ラストステージに突入するタイミングでは、強制バッドエンドになることだ。二周目プレイでRTAをしたら教授が操作するセキュリティーシステムによって瞬殺、時間をかけすぎると教授が完全体になってしまい指先一つで瞬殺。プレイヤーは事故によってセキュリティーシステムがダウンしたタイミングで、教授が研究室にいないタイミングで、教授のコレクションに仕掛けをして完全体になることを防ぎ、特定のボスモンスターの体液からヒロインが合成した劇薬をつかって初めて倒すことができる。
フラグ回収のチャート作りが一番シビア―だったのも今となっては懐かしい。
(叔父さんたち、大丈夫かなー。)
「俺」はこの事態をどうにかすべきかと思うけれど、「僕」としては、そんな物騒な場所に関わりたくない、というか正直現実味がない、ウッディ・リドルと直接あったわけでもないし、ラスボスのリーフさんも、人外無敵な主人公ラルフさんも、「俺」のイメージはかなり違う。
なるほど、ゲームでの出来事を主人公たちから聞かされた人達はこんな気持ちだったに違いない。
「ホーリー、ターキーが焼けるころだから、手伝ってくれさね。あとラルフも。」
「「はい。」」
ローズさんの頼みに揃って返事をして、僕とラルフさんは厨房へと歩いていく。
(おじさんが、信じてくれるかどうか?来年になったらまた相談すればいいか。)
申し訳ないけど、今の段階で僕にできることはない。人体実験とか違法薬物の流通とかは中学生が同行できるレベルではない。
「鉄板ごと運ぶけど、気を付けてね。」
「はい。」
ミトンをハメてオーブンからターキーをだす。朝から仕込んでいたごちそうで、においだけでもおいしそうだ。
掛け声をかけながらオーブンから取り出して調理台へ、このあとはパーティー会場へ運ぶ。
ピリリ、ピリリ
そう思ったら不意にポケットから着信音が。
「叔父さん?」
「いいよ、でたまえ。」
このスマホは、中学の進学祝いでレイモンド叔父さんがプレゼントしてくれた型落ちのスマホ。現時点では、叔父さんしか連絡相手はいないものだけど。
「もしもし。」
『ホーリー、おまえ、あのメモ、どこで手に入れた。』
電話の向こうからは、興奮したおじさんのそんな言葉が聞こえて、僕は目を白黒させるのだった。
同じクリスマスでも、ゲームの世界は血みどろで過酷なのです。
ちなみにレイモンド叔父さんはめっちゃ運がいい。
ちなみに最近の子って電話で通話した経験があんまりなくて、通話が苦手という話を聞きますがどうなんでしょう?




