32 結論から言うと、謎のウロコは偽物だった。
業界のどうしようもない裏話?
結論から言うと、謎のウロコは偽物だった。
スタッフがこっそりと仕込んだものという内部告発があったのだ。
犯人にして、告発者は、撮影をしていたカメラマン。彼女はプロデューサーの指示で、撮影者という立場で意図的に作った死角をついて鱗を置き、あの状況を作ったという。番組のアクセントとしてちょっとした悪戯だったが、匿名電話と紛失した鱗について不穏な物を感じ、退社した。その後に、自分の動画チャンネルで暴露話をしたのだ。
証拠となるサブカメラの動画には、彼女が鱗を投げ捨てるシーンがあり、それを手元に、騒がせたことを直接学校へ謝罪に訪れたうえでの暴露話だったが、関係者は大いに荒れた。
番組プロデューサーは、関与を否定しカメラマンの独断専行だと主張したが、やらせを指示した会話の録音が他のスタッフから提供され形勢が逆転。後に続けとばかりに様々な内部告発が行われプロデューサーの悪事の数々が発覚していった。
聞けばこの男、番組の人気が上がってきたときに、ごり押しして前のプロデューサーから席を奪った上に、予算の横領から過度な接待による取材先の選定など、やりたい放題だったとか。その結果。下がり始めた視聴率をなんとかするために、スタッフにヤラセを強行させたのだ。
番組のコンセプトを覆す愚行にさすがのスタッフの怒りも爆発し、この街の放送回以降の番組のクオリティーはダダ下がり、テレビ局が原因の調査を行ったら、あろうことか、このプロデューサーは実行犯となってしまったスタッフたちに罪を押し付けるために書類を偽造しようとしていたらしい。
カメラマン女性の退職からの一連の暴露事件は、傲慢なプロデューサーとテレビ業界、引いてはメディア関係の仕事に大きく影響を与えることになった。
ちなみに新聞記者である僕の叔父さんが、この件についてめっちゃキレてた。鱗の所在を絶対見つけ出すと言っていたが、あれからどうなったんだろうか?
「・・・じゃあ、白鰐さまはいないってこと?」
「その可能性が高いんじゃないかな。下水道に鰐がいるという噂話は昔からあるけど。」
説明を終えて、残った疑問は、「白鰐さま」の存在だった。
「ああ、そういえば、悪役のプロデューサーが、その鱗だけは本物だったって主張してるんだって。まあ、嘘にウソを重ね過ぎているから、信ぴょう性は低いけど。」
そんな補足情報をいれておくが、僕は信じていなかった。だからエメルが拾った鱗と結びつかなかったのだ。
「暴露されても、謎は残るか。ミステリーポーターらしいね。」
ラルフさんがそう言って、話は一区切りとなる。
とここに来て、僕が安心している理由だけど、それは俺の知識によるものだ。
「リドルは、人の感情を吸って形を作る。」
RCDの謎要素の一つで、お約束。人々にどう思われるかで、モンスターの強さが変わる。
恐怖度というパラメーターがあり、選択肢や行動によって上下するこの数値によって敵の強さが変わるシステム的な要素から、ボスモンスターの強さの根拠にもなってくる。
有名なオカルト話や地元の伝説などをモチーフにしたモンスターが登場するのには、メタ的な意味だけでなく、こういった根拠があるのだ。
(これで、セペクが具現化することはないかな。)
ゲームではミステリーポーターなんて番組はなかった。
この暴露話が拡散されず、あの番組の内容だけが浸透していたら?下水道にいる鰐という存在を街のみんなが知り、一部の人はその存在を信じていたかもしれない。だとしたら、
ウッディ・リドルは白鰐さまの伝説を利用して、あの大鰐を創り出したに違いない。
記事を読み直すまでは、ウッディ・リドルの仕込みかとも思っていた。けれど記事を読む限りでは鱗は作り物で、スタッフも本物だとは思っていない。
「そういえば、白い鱗と言えば、エメルが拾ってきたやつ、もしかしてあれが噂のうろこだったりしてな。」
飲み物のお替りを持ってきながら、ラルフさんがそんな冗談を言う。
「いや、あれは違うでしょ、形も大きさも。」
「ははは、実は別の個体の鱗だったりしてな。」
「・・・全然違った。。」
でもまあ欠片だと言われたら信じる?もう一度見てみたい。
「ばう?」
「「「あっ?」」」
とか思っていたら、エメルがその鱗を咥えていた。
「ちょっと、まっ。」
バリバリバリ。
そして、止める間もなく、食べていく。いやお前、スナック感覚で食うなよ。
「ほんとなんでも食うなこの毛玉。」
慌ててお腹当たりをなでながら様子をみるけど、特に苦しんでいる様子もない。そういえば犬って骨とかエビの殻が好きだって聞いたことがあるけど
「ばうー。」
満腹といった声を上げるが、リーフさんがおかしを投げると元気よく飛びつく。。
「リーフちゃん、あんまり人間の食べ物を与えないようにね。ペットには味が濃いから。」
「・・・わかった。」
「あげるなら、そっちの犬用おやつにしなさい。」
「バウバウ。」
うん?なんだ、このペットグッズの山は。ラルフさんだってノリノリじゃないか。
先日、色々相談したときは、雑多な感じだったけど、きれいに片づけられ、代わりにペット向けのグッズとかがアレコレと置かれている。意外と動物好きなのかもしれない。
「時間があれば、エメルが気に入りそうなものを見つけてくれるとありがたい。」
「・・・わかった。」
そう言えば、今日はここに泊まるんだっけ?落ち着いた部屋でたくさんのおもちゃに囲まれ、リーフさんもエメルもゴキゲンだ。
「さて、僕はこのくらいで。」
RCD3悲劇は彼女が孤独でかつ不幸になることで起こる。
でも世界は思った以上に優しく、諸悪の根源であるウッディ・リドルは逮捕された。
(考えすぎだったかもしれないなー。)
俺の知識に引っ張られて色々不安に思ってしまったけど。
「さて、夕飯はどうしようか、ホーリーもよかったら食べていくかい?」
「・・・そうしよう。」
「ばう。」
それはきっと楽しそうだ。両親には電話をすればいいし。
「そういえば、ミステリーポーターのアーカイブはまだ見れるから他のも見てみるかい。動物の変な寝方特集とかあったはず。」
「・・・見る。」
ラスボスと主人公がすっかり仲良しなのだ。そう思ったら自然と、僕も俺も肩の力が抜けていた。
笑いながら夕飯を共にする原作主人公とラスボス。そして謎の小動物。そして、序盤で死ぬはずだったモブキャラ、そんなメンバーがこんな風に和気藹々している。
世界は思った以上に平和らしい。
怪談とかホラーものって基本的にはやらせ、あるいは盛っていると思ってみないとあかんですよねー。
そして、最大のフラグをへし折った結果、平和を手にした少年ホーリーと主人公とラスボス。彼らを待ち受ける運命はまだまだ数奇なものとなります。




