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リドル・ハザード フラグを折ったら、もっと大変な事になりました(悪役が)。  作者: sirosugi
RCD3 2023 9月

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30/88

30 一方その頃・・・

 テレビ番組にありがちな引き延ばし演出と後半戦。

 一方その頃、神出鬼没のデブネコ様を追っているチームBは、聞き込み調査をしながら閑静な住宅街へとたどり着いていた。

 

 とある主婦

「デブネコ様は日当たりがいいところが好きでねー。公園のベンチとかでのんびりしていることが多いわよ。」

 とある老人

「珍しい言うけど、十年ぐらい前から毎日のように儂は見とるよ。散歩しとると待ち構えて餌をねだってくるんじゃ。」

 とある少年

「友達が、無理やり抱っこしようとしたら、周りの大人にめっちゃ怒られてた。動物をいじめるなって。で、そのまま逃げられちゃったって。」

 

 それらの目撃情報からもデブネコ様が街の人たちに大事にされていることが分かる。またかなりの高齢でもあることも発覚し、捜査員たちはデブネコ様を刺激しないように、チームBは人数を分けて更に慎重に捜査を進めていくことにした。

 捜査を進めること数時間。チームリーダーの携帯に住人から連絡がはいった。

「えっ、いた。ありがとうございます。」

 善意の情報提供に感謝しつつ、捜査員たちは現場に急行、そこには確かにデブネコ様がいた。

「にゃー?」

 公園のベンチをわが物顔で占拠し、丸くなる姿は猫そのもの。捜査員たちが近づいても少しも怯える様子もなくただめんどくさそうに一声鳴いて、丸くなる。その隣では散歩中の老婦人がニコニコと座っていた。

「今日はここがお気に入りみたいだわ。騒がしくしてはいけませんよ。」

 そう言い残して老婦人は去っていった。情報提供をしてくれたのは彼女のお孫さんだそうだ。

「にゃー。」

 老婦人を見送る様に鳴いたデブネコ様は、なんだお前らとばかり捜査員を観察するが、その名の通りかなり大きなネコであった。

「ええっと、失礼します。」

 逃げられないように優しく、丁寧にメジャーでそのサイズをはかると丸まった状態でその直径は驚きの40センチ、これは一般的な猫の体長と同じである。その上で、モフモフの白い毛で全身が覆われぬいぐるみやクッションのようだ。

「しゃー。」

「ご、ごめんなさい。」

 手を取ってサイズを計ろうと手を伸ばすと鋭い鳴き声にひるまされる。不用意に触ってはいけないという街の人の言葉を思い出し、スタッフたちはそれ以上の計測は断念した。

 大型ネコは比較的おとなしく、賢い子が多いと聞くが、デブネコ様はこちらの言葉を理解し、行動の意図を呼んでいる気配があった。過去に多くの動物の調査をしてきた捜査員たちを驚かせたのは、目の前の捜査員ではなく、その背後で構えられたカメラに何度も視線を合わせてきたことだ。

「さ、撮影してもよろしいでしょうか。」

「・・・にゃー。」

 思わず丁寧にお願いしたスタッフに不本意といった返事を返す様子は、確かな知性と度胸を感じた。普通の猫ならば、知らない人間が数人近づいただけでも警戒するはずなのに。此方が手を出さないとわかると泰然としている。

「か、かわいい。」

 その様子がなんとも憎たらしく可愛い。捜査員たちの心は即座に奪われた。

 ここで下手な番組ならば、抱っこしようとしたり、撫でようとしたりするだろう。だが、街の人の言葉を大事にする捜査員たちは、少し離れた距離からじっと観察するだけに留める。無論、公園なので、すぐに役場に連絡して撮影許可もとった。

 一時間後。

 捜査員の存在にも慣れたのか、デブネコ様はグーグーと眠ってしまったが、撮影の噂を聞き付けた野次馬が徐々に集まってきた。

 それなりに人が集まっているが、みな一様に見守るだけで静かにしている。


 撮影を見に来た地元のおじさん

「あの猫は、騒がしいのが嫌いだからね。そっとしておくって言うのが大事なんだよ。だから、公園も静かで穏やかだろ。」


 撮影を見に来た少年

「デブネコ様が寝ている近くでサッカーをしていたら、ボールが自然と遠くへ行っちゃうんだ。だから、その日は別の場所で遊ぶの。」

 

 聞けば、デブネコ様を無視して騒いで遊ぶと、誰かがケガをするといった眉唾な話もでてきた。話の真偽はともかく、この街においてあのお猫様が愛されていることは分かる。

「あっ、いない。」

 それはカメラのテープ交換の時だった。交代で見張りをしていた捜査員が日差しに目を閉じたとき、デブネコ様はそこからいなくなっていた。

 まるで動く気配がなかったのに、まるでカメラや人の目が途切れるタイミングを見計らったかのようにすばやく、まるで幻のようにデブネコ様は消えてしまった。

 ちなみにその後の追加調査で、公園の反対側での目撃情報が届いたが捜査員が行ったときにはすでにその姿はなく、残念ながら捜査はここまでとなった。

 地元で愛される神出鬼没のネコ。それは確かに存在し、ネコのように気まぐれでつかみどころがない可愛らしいお猫様であった。 (CMへ)


「・・・かわいい。」

「あの猫も不思議だよねー。動いているところをみたことがない。」

「僕は新聞配達のたびに邪魔されていますけど。こうやって見ると不思議です。」

「ホーリーこそ、この番組にでるべきだったな。毎朝遭遇してるの?」

「・・・私も毎日会えてる。」

「はは、僕は、めったに会えないんだけど・・・。」


 がちゃり、頑丈な鍵を開けて金属製の扉が開く。悪戯と事故を防ぐために厳重に保全された井戸。街の歴史を感じる井戸に、捜査員たちはついにたどり着いたのだった。

「これは、石畳ですか?」

「ええ、井戸を掘った後で、石を敷いて踏み固めたそうです。このあたりの地面は柔らかいから水がしみるとすぐにぬかるんでしますから、井戸の周りを中心に、街の要所はこうやって地面を補強したんだそうです。」

 先人の知恵。現在ならばコンクリートで固めるところなのだろう。あとになって分かることだが、この石畳を踏み固める活動も数年に一度、地元の有志によって継続されているとのことだ。

「で、これは井戸ですか、思った以上に大きいですね。」

「まあ、住人が使うものですから。」

 井戸はそれはそれは立派なものだった。許可をもらって長さをはかると直径は4メートルほどで高さは1メートル。石作りのそれは、井戸と言われなければ、コンテナのようだった。

「かつては、水汲み用の滑車と屋根があったんですけど、下水とつながってからは撤去されています。さてと、危ないので離れてください。」

 捜査員に距離をとるように言って、用務員さんは井戸の淵にあるレバーに手をかける。

 ガコンという音と共に蓋を固定していた爪がはずれ、そのまま力を込めて蓋があく。斜めに上がったふたにつっかえ棒をして、汗をぬぐい、此方に笑いかけた。

「どうぞ、間違っても落ちないように気をつけてくださいね。」

 その様子は魔女の大鍋のようであった。

 恐る恐る底を覗き込むと、真っ暗で何も見えない。申し訳程度の灯りがある室内であってそこが見えないほどに深いのだ。

「これを人力で掘ったっていうんだからすごいですよねー。」 

 どこか誇らしげな様子で語りつつ用務員さんが懐中電灯を貸してくださった。キャンプなどにも使われる強力なライト。万年金欠な当番組の貧弱な懐中電灯よりも何倍も強い光。

 それによって照らされた井戸の底は確かに水面だった。

「結構な長さを掘らないと水が出なかったと記録にあるんですが、ここほど深く掘った井戸はないそうです。」

 一般的な井戸の深さは長くても10メートル。だがこの井戸の深さは20メートルはあるそうだ。

「今は水が減って、深く見えるけど、もともとは5メートルぐらいまで水があがっていたそうです。でも下水管を通す過程で、穴が開いて水がね・・・。」

 そこまできいて、スタッフはある疑問を捜査員にぶつけてみた。

「下水菅ってそんなに深いんですか?基準では0.6メートルから1メートルらしいですけど。」

 事前に調査した話で、下水管の深さはその程度だ。

「ああ、あくまでそれは水道管の話ですね。下水に関しては、処理施設との高低差の関係でわりと深くまで掘ったらしいですよ。」

「なるほど。」

 一応の納得をしてみるが、捜査員たちの疑問は尽きない。地下を掘るというのは結構な難事だ。深ければ深いほど、工事は大変だしメンテナンスも大変だ。だから下水管というのは意外と浅い場所を通っているし、下水道も言うほど大きくはないのだ。

「ははは、そのあたりは土木課の人に聞いてみてください。私も詳しくは。」

 こちらの意図を悟ったのが用務員さんに先手を打たれてしまった。だが、この街の下水設備をさらに調査してみる可能性を捜査員たちは感じていた。

「で、この場所に白鰐さまが居たってことですか?」

「ああ、そうらしいですね。昔話に聞いた話ですが、ワニ達が地下水脈で生活していて、そこから抜け出したんじゃないかって、爺さんが笑ってましたよ。」

 用務員さんの家は代々この街に住んでいるらしく、彼も祖父からその話を聞いたらしい。

 白鰐さま伝説の真偽はともかくとして、この井戸には歴史がある。これは西部開拓時代の人々の生活を推測するうえで貴重な資料とも言える。

 それらを残す活動を続けている街の人たちには頭の下がる思いだ。

「いやはや、番組を拝見したとおり、礼儀のある人達ですなー。」

 そこは真摯にが当番組の売りなのです。

 やらせなし、誇張なし、その上で噂や都市伝説を紐解いていく、それがミステリーポーターなのである。


 しかし、この後、あのような衝撃の展開があるとは、捜査員たちは思いもしなかった。(CMへ)



「・・・全然知らなかった。」

「まあ、第三小学校のあたりの話だからねー。」

 街の歴史ということで、井戸の事は聞いたことは確かにあった。けれど鰐のことや、当時の苦労話などをここまで深堀りされるとは関係者も思わなかっただろう。街にテレビが来たというだけでもニュースになったけど、デブネコ様や井戸に対する真剣な対応に、街の人達が好感をもった。

「で、問題は、このあとなんだけどね。」

 やらせと告発されたシーンはクライマックス、このCMのあとだ。


 まだ、引っ張るのか・・・。

 2000字から3000字程度を目安にしているのでどうしても間延びして申し訳ない。

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