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リドル・ハザード フラグを折ったら、もっと大変な事になりました(悪役が)。  作者: sirosugi
RCD3 2023 9月

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27/88

27 悪夢はまだ終わっていなかった、なんてことは勘弁してほしい。

 ホーリー君の悩みは尽きない。

 悪夢はまだ終わっていなかった、なんてことは勘弁してほしい。

 日課の新聞配達をしながら、僕の頭は、昨日のウロコのことで一杯だった。

「白い爬虫類・・・ワニ・・・。セべクがもう街にいるってことなのかな?」

 RCD3の4大ボス、石化の魔眼をもつ毒蛇バジリスク、

 理不尽ななぞかけをしかける巨大猫バステト、

 火を吐く猛犬アヌビス、

 下水道を支配する白い鰐セベク。

 ウッディ・リドルがリドルの研究と増殖のために作り出したモンスターの中でも傑作と呼ばれた4体のモンスターは、リーフ・リドルの意思に従い、街の各所を破壊して回る。

 自分の手足として作り出したはずのモンスターたちが自分に従がわない、しかも一般人(無職という意味)のラルフ・アルフレッドに倒される。その事実により、ウッディ・リドルが次回作以降でエグイモンスターを作ることになるのだが、RCD3の時点で、このボスたちは巨大な動物といった落ち着いたデザインとなっている。

「製造過程はないんだよねー。」

 俺の記憶にあるウッディ・リドルの手記では、モンスターの運用記録やスペックばかり、彼らがどのように作られたのかは謎のままだ。なぞというか、「リドル」の力で作られたとしかない。

 今更だけど、あれだけの大きさの生き物なら、この時期から準備をしている可能性だってあるのではないだろうか? ウッディ・リドルが敷地からでないという縛りを自らに課したのはつい最近のはず、その前に街の各地にモンスターや罠を仕込んでいた可能性があるのかもしれない。

 仮にそうだった場合、セベクの存在は脅威だ。他の3体がシリーズ恒例の謎解きで弱点を暴いて倒すのに対して、この鰐は純粋な物理特化な上に神出鬼没。ストーカーのようにプレイヤーを追い回す執念と尋常でない再生力、謎解きや物資を漁っているときでも容赦なく襲い掛かってくるくせに、倒してもしばらくすると復活する。複数回の遭遇戦後に、ガソリンスタンドにおびき出して爆破することで、やっと倒せるというイライラマックスの敵だった。

 下水道に住む鰐という話をモチーフに作られたこの鰐の唯一の弱点は視力が極端に低く、特定のアイテムで匂いを誤魔化せば逃げられるというもの。ゲーム内では多くの住人とプレイヤーの命を奪った強敵である。

 リアルでは絶対に遭遇したくない。

「と言ってもできることはないんだけどね。」

 新聞を配り終え、家に帰り、スクールバスの乗り場へ向かう。その間もずっと考えてみたけれどこれといった考えが浮かばない。もしかしたらラルフさんは信じてくれるかもしれないけれど、昨日の様子を見る限りでは望みは薄い。


「下水道にいる鰐なんて、小学生だって信じないっての。」

「なになに、下水鰐のこと?」

「いまどき、そんなの信じてるの?受けるんですけど。」

 その証拠が先にバス停で待ち構えていたサラ・シェイファーと愉快な取り巻きたちの反応だ。

「でっかい鰐に怯えるとかホーリーってばマジびびりじゃん。」

 どや顔のサラは、何と漏らした僕のつぶやきを目ざとく聞き分けて、ダル絡みしてきやがった。

「あれでしょ、ガキ向けのホラ話でしょ、そんなのが怖いんでちゅか?」

 うぜえ・・・。

 うかつな独り言をしてしまった僕も悪いが、こっちは真剣に悩んでいるというのに、なぜこうも無駄に耳がいいのだろうか?

「悪い、ちょっと黙っててくれない。こっちは割と真剣に考えごとをしているんだけど。」 

「「「はっ?」」」

 自分でもびっくりするほど冷静に僕は女子軍団を突き放す。

「多少、うるさかったのは謝るけどさ、お前らの方がうるさいってわからない?人の粗探しして、ダル絡みしているのがサムイってわからないかな?」

 こっちは街の命運とか命がかかった問題で悩んでいるんだ。自分のマウントにしか興味のない頭の中身のない女子の相手をしている暇はないっての。

「な、な。」

「俺さあ、そんなに大きな声だった?別にゲームとか漫画のことを考えて口から洩れるのは悪い事?」

 首をかしげながら睨み上げる。悲しいかな、平均身長よりも低い僕では見下すことはできないけど、この能天気女子を俺も僕も見下している。

 都市伝説や怪談に未確認生物、俺はそういったものが大好きで、それをモチーフにしたRCDシリーズが大好きだったから、サラたちの態度はイラっと来たし。僕としては命がけの思考を邪魔されたのだ。

「他人を見下して、マウントとることしかできないとか、頭、お花畑かよ。」

「え、えらそうにーーー。」

 そこまで言ってやるとサラ達は半泣きで逃げて行った。もうすぐバスが来るけど、別にそれ一本だけじゃないから問題ないだろう。周囲の子たちも感心した様子で僕のことを見ていた。

 まあ、それ以上に引かれてるんだけどねー。

「・・・おはよう、ホーリー。」

「ああ、リーフさんおはよう。」

「バウ。」

「エメルも元気そうだね。」

 しばらくして、バスの時間ギリギリになって現れたリーフさん。今日から彼女もバス通学だ。

「・・・間に合ってよかった。」

「何かあったの?」

「お猫様。」

「納得。」

 どうやらあのデブネコにかまっていたら時間ギリギリになってしまったらしい。でもそのおかげでサラ達と遭遇することもなかったからよかったかもしれない。

「・・・どうかした?」

「なんでもないよ。いや、昨日のウロコが気になってるだけ、白いウロコってめずらしいと思って。」

 足元にまとわりつくエメルをなでながら、挨拶をかわし世間話をする。

「なになに、2人って仲良しじゃん。」

「ホーリーってばキャラ変わりすぎ。」

 そして、他の女子たちにその様子をからかわれる。もしかしなくても、さっきのやりとり見られてた?

「な、なに?バスくるよ。」

 悪意がない同級生たちとワーワーしていたら、バスが着て乗り込むことになった。公共の場での私語は厳重注意なのでおとなしくなったが、その分、粘度を増した視線がひたすら恥ずかしかった。

 ちなみにリーフさんはまったく気にしておらず。エメルはバスが来ると同時にどこぞへと走りだしていた。自力で帰れるとのことだったので、飼い主たちは放し飼いにしているらしい。

「あれ、デブネコ様じゃん、今日は車道で寝てる。」

「かわいいー。」

「車がよけることを微塵も疑ってないわ。」

 にわかに騒がしくなった車内に窓の外を見ると、ことの発端でもあるあのデブネコが車道の真ん中で寝ていた。

「リーフさん、あそこにいたの?」

「・・・存分にモフらせてもらった。」

「いや、車道は危ないからね。」

 隣座るリーフさんにやんわりと注意をしておく。いやまて、デブネコの脇でエメルも寝息を立てていた。 

「・・・モフモフが二つ。いいなー。」

 いや、暢気か。

 なんというか、動物もだが、街の人たちも動物に優しすぎませんか?

 

ヘビはアぺプじゃないのか、というツッコミは受け付けません。設定が強すぎるのです。

本気で悩んでいる少年は繊細で、普段大人しい子ほど、怒ると怖い。

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