15.
豆太郎、異世界の地上初体験の日。
当の本人はまったく気にしていないのだが、それにかなり動揺している人がいた。
人、というか魔人だが。
ソーハは寝床の周りを歩き回っていた。
ぴたりと止まって、腕組みをしたまま指で肘を叩く。そしてまたうろうろ、ぴたり、うろうろ。
いつになく忙しない彼の挙動。
レンティルはもちろんその理由を察している。
「もやしの世話もあるから、もうすぐ豆太郎さんも帰ってくるでしょうね」
レンティルの言葉に、ソーハはばっと振り向いた。
「べ、別に気にしてない! 全然気にしてない。だいたいっ、人間はダンジョンの外に住むのが普通なんだ。今までがおかしかったんだ」
ソーハはどかっと地面に座り込んだ。
地面を見つめてぽつりとこぼす。
「……そのまま帰ってこなくたって、不思議じゃない。俺は気にしない、全然」
「……」
2人の間に微妙な沈黙が落ちたところで。
『ただいまー』
水晶玉の向こうから、能天気な声が響いてきた。
「…………」
『おーい、ソーハ~。いないな。ただいまー。土産あるぞお』
あたりを見回しながら1人で話している豆太郎。
「ソーハ様。ただいまとか言ってますよ」
ソーハは先ほどまでの自分がすごく馬鹿馬鹿しく思えた。
「……はあ」
ため息をひとつついて、豆太郎の元へと赴く。別にお土産を取りにいくわけではない。
魔人のダンジョンを家扱いするあの男に、説教をしにいくのだ。
短いですが、区切りがいいので今日はここまでです。
明日から第2部2章となります。よろしくお願いします。




