エピローグ
時は流れ、クリスマス当日、俺と澄香は隠れた名店と名高いお洒落な喫茶店で共に時を過ごしていた。
「俺、進路を真面目に考えようかと思って」
「翔太、化学得意だもんね。専攻もそっち?」
「うん、だから、いつか澄香とは離れ離れになると思う。いつかっていうか、高校卒業と同時にだろうけど」
時の流れは残酷だ。
それを止める手段はないし、いつの日か俺たちは別々の道を歩むことになる。
それでも歩みを止めるわけには行けない。
「私は地元の大学に進むよ。読者モデルも続けられるし、ちょうどいいかなって」
「そっか」
俺はストローでグラスの中の氷をかき回す。
揺れ動く氷は俺たちの気持ちを表しているかのようだった。
「最低でも年に一回は地元に帰るよ」
「うん」
彼女は下を向いて何かをしていた。
その時、俺のスマホからLimeの通知音が鳴る。
「スマホ、見て?」
そう澄香に言われたので、俺はスマホを見る。
そこには――
『卒業まで、翔太の初めてをいっぱい頂戴? 代わりに、私の初めてもいっぱいあげるから』
俺は『言葉選びがちょっと……恥ずかしいわ』と彼女につっこんでおく。
だがそれが彼女の本心であるし、俺の気持ちも彼女と一緒だ。
例えば夏になったら一緒に夏祭りを見に行って、花火を見上げて――きっとそんな恋人らしい毎日をこれからも送るのだろう。
本当は彼女と離れ離れになんてなりたくなかった。
それでも、俺たちはきちんと自分の道を進みたい。
――お互いに尊敬し合えるような大人になりたい。




