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メッセージ

最終話の執筆が終わりました。

投稿は今まで通り完結まで毎日16時に行われます。

よろしくお願いします。

 

 夜、寝る前に俺はマンガを読んでいたのだが、その時スマホからシュポッ!という電子音がした。

 この音はLimeか。勇辺りが何か送ってきたのだろうか。

 そう思い、俺はスマホのトップ画面を覗いた。


 しかし予想に反して、そのLimeメッセージの送信主はあの人物だった。

 そう、あの五十嵐さんだ。


『何してるの?』


 という内容自体は簡潔なものだったが、それがこれからLimeでメッセージ交換し合おうよという意味合いを含んでいることは何となく察することが出来た。


『マンガ読んでた』


『じゃあ暇だったんだ?』


『そうだね』


 そんな他愛のない会話をスマホ越しにし合う。

 なんでもない日常の一コマがとても色鮮やかに見えた。


 彼女は今さっきまで何をしていたのだろうか?

 寝る準備? それとも真面目に勉強? ……もしかしたら俺と同じようにマンガでも読んでいたのだろうか。


 彼女は頑張り屋だ。かつ欲張りな一面もある。

 だからこの時間まで勉強をしていた可能性もありうる。

 以前彼女は自分の成績は下から数えた方が早い、といっていた。

 しかし今はどうかというと、間違いなく上から数えた方が早い。それも結構上位に行けるはずだ。


 とはいえテストには悪魔が潜んでいる。ケアレスミス、ヤマが外れた、謎の体調不良などなど……。

 ベストを尽くそうとしても、そう上手くいかないのが現実だ。


『あまり勉強しすぎないようにね』


 俺は彼女の体調を心配してそうメッセージを送った。

 程なくしてスマホから返答を知らせる電子音が鳴る。


『勉強は坂上くんと二人でやりたいから、自習はそんなにしてないよ』


 意外だった。

 俺との勉強会が終わった後も、一人黙々と勉強に取り組んでいるのかと思った。


 けどよくよく考えたらそこまでする必要はないのか。

 彼女が親に言われているのは勉強にも気を配ってねということだけらしい。

 だとすると、もし次の期末テストの結果が芳しくなかったとしてもそこまで色々言われることはないだろう。いや、これは憶測にすぎないが。


 それに学校では定期的に小テストが行われている。

 その結果を親に見せればきちんと『結果を出せています』という証明にもなるはずだ。


『坂上くん、君のご趣味は何?』


『お見合いか』


 そりゃこんな文面が送られてきたらつっこまざるをえない。


『他の男子と同じようなものだよ。マンガを読んだり、ゲームをしたり。趣味ってそのくらい』


『料理は趣味じゃないの?』


 よく覚えているな。

 俺が料理を披露したのって結構前じゃなかったっけ?


『あれは趣味って程のものじゃないよ。両親が共働きで家を空けることが多かったから、気づいたら料理に挑戦するようになったって感じ』


『そうなんだ。ねぇ、もっと君のことを教えてよ』


 彼女の意図が読めない。

 何故今になってそこまで俺のことを知りたがるのだろうか?


『どうしたの、急に。坂上くん博士にでもなるつもり?』


『そんな感じかな? だから教えてよ』


 俺は観念して彼女に改めて自己紹介をした。

 好きな漫画やゲーム、好みのジャンルなど。

 今更自己紹介をするというのも変な気分だ。俺らはそれなりに仲良くなっているはずだし、お互いの性格もある程度理解している。

 なのにこれ以上の何を知りたいというのか。


『あと趣味ってほどでもないけど映画は好きかな。特に好みのジャンルがあるってわけじゃないけど』


 映画はたまに家で観る。しかし映画館に足を運ぶまでの程ではない。

 あくまで暇つぶしの一環でしかなかった。

 映画は良い、長時間のんびりしたい時などにはうってつけだ。


『それじゃ今度一緒に映画を見に行かない? でも次の土日まで待てないなぁ』


『じゃあ明日一緒に映画を見に行く? 見る映画は五十嵐さんに任せるよ』


『本当!? それじゃ明日の夜、一緒に見ようね? ――ちょっと待ってね、上映時間を調べるから』


 彼女が観たい映画の上映時間を調べた結果、その映画は俺たちが自宅で夕食を食べた後でも見れる時間帯に上映されるとのことだった。

 ただ、映画館の位置が問題だった。


『映画館に行くとしたら、いつもの下校ルートは使えないね。どうする? 現地で集合にしようか?』


『ううん、一緒に行きたい』


 困った。

 もし映画館に一緒に行くとしたら、俺が五十嵐さんの家の前を経由するルートのほうが早く着くのだ。

 既読をつけたまま返信せずにいるのもどうかと思うし、ここは俺が頑張らなくてはならないか。


『じゃあ明日は俺が五十嵐さんの家の前まで迎えに行くよ。着いたら連絡を入れるから』


『うん、わかった。いつもありがとう。何でそんなに優しいんだろうね?』


『さあ?』


 俺はその優しさの理由を知っているけど、まだこの想いを伝えるつもりはない。

 想いを伝えるのはきちんとテストで結果を出してからだ。


『話は変わるけどさ、好みの女性のタイプってどんなの?』


 なんてことを聞くんだ、この子は。

 ここで『好みの女性は五十嵐さんです』なんて言えるわけがない――と思ったが、この手は意外と悪くないな。

 以前より貴方のことを意識するようになりました、と暗に伝えることが出来れば他の男子へのけん制になるのではないだろうか?


 とても打算的な考えかつ、ある意味賭けでもあるが、それでも未来の俺の隣にいる女性は五十嵐さんであってほしかった。


『強いて言うなら、お洒落な人』


『芸能人とか? ――冗談。通じてるよ?』


 伝わらなかった場合より気恥ずかしいものがある。

 俺がどれだけ彼女のことが好きか、すべて伝わっているのではないのだろうか? あくまで可能性の話だが……。

 かといって『もしかして俺が五十嵐さんの事好きって全部気付いている?』だなんて聞くことができるはずもなく、平然とした様子を見せ続けるしかなかった。


『それは良かった。通じてなかったら困ったよ』


『なにそれー? ……ねぇ、いつしてくれるの?』


 手遅れだった。

 その『いつしてくれるの』の一言で十分だった。

 俺の気持ちは少なからず五十嵐さんに通じている。そして、俺の覚悟も……。


 それで俺は今回も話をそらして前回みたいに逃げ出そうとするのか?

 いや、それは駄目だろう。

 男として、きちんと誠意を見せておかないと後々取り返しのつかないことになる。


『具体的な日にちは言えないけど、いずれ、きちんと、俺の口から伝える』


『うん、わかった。待っているから。絶対に待ち続けるから』


 そのメッセージを最後に、俺らは『おやすみ』を意味するスタンプを送り合った。


 今夜は眠りにつくまで時間がかかりそうだ。

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