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遥か異界の地より  作者: 富士傘
登場人物紹介
253/267

TIPS 登場人物紹介⑤

***** 異界人 *****




東の大山脈(シュヤーリアンコットの町・アプリリスの町)




・野党の集団


辺境に拡がる戦禍により劇的に増殖した無法者同士の縄張り争いに敗れ、人気の無い荒野に逃れて居を構えた野党の一団


迷宮都市ベニスを旅立ち、単身大山脈へと向かう加藤を襲撃した※160話


しかし加藤の走力と持久力にまるで歯が立たず、易々と逃げられてしまった




・不幸なとある旅人


詳細は定かで無いが、野盗に殺されたと思しき旅人達


骸と現場の状況から、荷を奪われ身包みを剥がされた上に嬲り殺されたと思われる


遺体の状態が余りに悲惨だった為、加藤は埋葬する事が出来ず、瞑目して掌を合わせるに留まった※161話




・人の良さそうなおっさん


大山脈の麓に在るシュヤーリアンコットの町の住人


余所者である加藤に不意に声を掛けられたにも拘わらず、嫌な顔を見せずに町の事を色々と教えてあげた※161話




・遊牧民らしき集団


辺境の山岳地帯と草原地帯を行き交う遊牧民族の氏族の一つ


数百頭から成る寸動な動物の群れを引き連れている


大山脈へと向かう途中で迷子になった加藤に道筋を教え、家畜の臓物を煮詰めた煮汁を振る舞った※161話


当初は加藤を殺害して身包みを剥ぐつもりだったのだが、想定外に加藤に隙が無かった上、煮汁に仕込んだ毒物も余り効果が無かった事から、止む無く凶行を断念した




・類人猿擬き


大山脈の浅い地域に棲む少数種族の一団


より猿に近い類人猿のような見た目で臀部からは尻尾が生えている


但し、普通に服は着ている


不作だった山の収穫物を卸す為にシュヤーリアンコットの町を訪れたが、強欲な仲買人に買い叩かれて満足な取引が出来ず、非常に苛立っていた


そんな折、面識の無い緩んだアホ面の加藤に唐突に声を掛けられ激高した※162話




・狩人ギルド支部の受付熟女


シュヤーリアンコットの町の狩人ギルド支部に籍を置く受付のおばちゃん


三十、四十絡みの少々草臥れた雰囲気で、常日頃から気怠そうに受付カウンターに肘を付き、乾燥させた特殊な香草を口に咥えて煙を吹かしている※162話


最下級にも拘わらず隊商の護衛の仕事を要求した加藤を門前払いしようとしたが、湧水の魔法を見せられた事で掌を返した




・商人ギルドの隊商の交渉人達


大山脈越えを目指す商人ギルドの隊商に所属するネゴシエーター


加藤を隊商の護衛として雇い入れるか判断する為の面談を行った


対象が10級狩人という隊商の護衛としては異例の低ランク故に、通常ならば質疑の対象とはならぬ領分まで執拗に詮索をするも、結局湧水の魔法の使い手である事が決め手となり、加藤を名目上護衛の一人として雇い入れる事を承諾した


因みに彼等は加藤を護衛として渋々雇ってやった風を装っていたが、もし湧水の使い手として雇い入れた場合、加藤が本来受け取るべき報酬は今の十倍以上に跳ね上がる




・商人ギルドの隊商の実務担当の男


大山脈越えを目指す商人ギルドの隊商に所属する


加藤が高山病対策の為に商人ギルドの集落への先行を申し出た際に、申請の許可や斥候と同行させる為の打ち合わせを行った※163話


また、商人ギルドの集落では加藤に注水を依頼した水樽を受け取った




・商人ギルドの隊商の偵察要員


大山脈越えを目指す商人ギルドの隊商に所属する2名の斥候


目付きの悪い男と長髪の男で年齢は20代半ば


如何にも旅慣れた風情で荷物を括り付けた木製の背負子のような器具を担ぎ、使い込まれたゆったりとした外套を身に纏っており、腰には曲刀を下げて武装している


山奥の商人ギルドの集落まで隊商より先行して道中の山道に異変が無いか調べる任に就き、先行を希望した加藤と同行した


突如隊商団の一員に捻じ込まれた余所者で見るからに若輩な加藤を見下しており、しかも殊勝さの欠片も無い生意気な態度に腹を立て殊更に横柄な態度で接する


どう見ても疲れ切っている筈なのに異常なペースで歩き続ける加藤に背後から追い立てられた結果、集落に辿り着く頃には心身共に疲れ果てていた※164話




・細面の男


アプリリスの町近郊の街道と大山脈へと続く商人の道の分岐に駐在する衛兵


普段は道行く旅人に通行料と称して金品を強請る小遣い稼ぎに勤しむが、加藤と同行する偵察要員の身形と武装を見て思い留まった※164話




・商人ギルド集落の守衛


大山脈に在る商人ギルドの集落を守る守衛


隊商から先行する加藤達を集落に迎え入れた


長年の経験から偵察要員の二人と加藤が不仲である事を一目で見抜き、チビで弱そうな加藤にだけ通行料と称して金銭を強請った




・隊商団の4級狩人PT


大山脈越えを目指す隊商団の護衛の纏め役を務める狩人PT


リーダーの古い知己である商人からの頼みを受け、不人気である大山脈越えの隊商を護衛する仕事を引き受けた


シュヤーリアンコットの町における合議の結果、5つの隊商により総勢70名を超える隊商団が結成され、大山脈越えを目指す運びとなった


そして護衛の中で最もランクの高い狩人PTである彼等が、追加報酬を条件に護衛の纏め役の任に就くことになった 他の護衛は加藤を除いて全て6級狩人PTである




リーダーは複雑な刺繍が入った高級そうな外套と、黒光りする高級そうな胸当てを身に纏った、如何にも古強者といった風情の壮年の男


その顔面はゴツく、古傷だらけで見た目はかなり怖いが気さくで頼れる男である


得物は長剣だが、盾を攻撃の主体とした独特な剣技を操る


元々はとある国の騎士団に所属しており、個の戦技のみならず集団戦にも長ける




大山脈で隊商が蛮族からの一度目の襲撃を受けた際には、護衛達を統率して蛮族達を圧倒して撃退した


ところがその後、リーダーが重度の高山病を患ってしまう


その為、蛮族からの2度目の襲撃の際には満足な働きが出来ず、辛うじて逃げ延びる事は叶ったものの、隊商団は甚大な被害を被ってしまった※206話


その後、紛糾した議論の末、生き残った隊商団は先へと進む事になったが、道中リーダーの高山病が重篤化した事に拠り、結局彼等は隊商団を離れる事になった


間も無くリーダーは高所脳浮腫が原因で死亡


リーダーを埋葬した他のメンバーは商人の道を引き返す決断をするも、案内人を欠いた彼等は程無く道を見失ってしまった


その後の行方は不明




・『泥縄』 『鉄錆』


大山脈越えを目指す隊商団の護衛を務める6級狩人PT


蛮族からの2度目の襲撃の際に半壊した


辛うじて生き延びた者達もその後、猛烈な吹雪に巻き込まれて全員凍死した




・隊商の雑用係


大山脈越えを目指す隊商団の中でルカの隊商で雑務を熟す人達


護衛仲間から浮いていた加藤が彼等の仕事を手伝ったのを契機に仲良くなった


その後、護衛の仕事をサボタージュした加藤は彼等の仕事を手伝い、寝食を共にする様になった


重い高山病を患い、1名が隊商団から落伍した※173話


蛮族からの2度目の襲撃を受けた際に2名が死亡


その後隊商団の本隊と逸れ、蛮族からの3度目の襲撃を受けた際に残った全員が死亡した※187話




・隊商の護衛達


大山脈越えを目指す隊商団の中でルカの隊商の護衛を務める狩人達


一時加藤と同じ持ち場を護衛した


隊商団の給水要員の一人であり護衛としては全く期待されていないものの、低級の分際で態度が非常にデカく、名目だけとは言え護衛の仕事を平然とサボタージュする加藤に腹を立てて彼をハブる※168話


その後、蛮族の襲撃や大自然の猛威に晒されて全員死亡した




・隊商の頭目の取り巻き


ルカの隊商に所属する幼い頭目の護衛達


初対面にも拘らず、頭目に対して馴れ馴れしい加藤に激しい不快感を示した※168話


蛮族からの3度目の襲撃の際、頭目であるルカを守る為に奮戦するも、全員惨殺されて身包みを剥がされた※187話




・ルカ=ウルパッド


大山脈越えを目指す隊商団の中で最も規模が大きい隊商の頭目


栗色の髪と瞳の年の頃12・3歳位の少女で、地球基準で見ても相当に可愛らしい容姿を有している※167話


彼女は常日頃取り巻きに守られており、市井の子供にしては整った容姿をしている事から、彼女を目撃した加藤は何者かと不審に思っていた


ウルパッドはエリスタル王国の三大商会であるカピーダスに連なる有力な商家であり、商人ギルドと関係が深い為主家と商人ギルドとの仲介の役割も果たしている




但し、彼女は隊商の本来の頭目では無く、以前は彼女の姉のシルカが隊商を率いており、ルカは姉の下で一人前の商人を目指して日夜研鑽に励んでいた


ところが、姉が流行り病を患ってあっさりと他界してしまい、その後の協議の結果、隊商は急遽商いを引き払って一旦エリスタルに帰郷する運びとなった


それに伴い、彼女は悲嘆に暮れる間も無く名目上の隊商の頭目としての役目に就かざる得なくなった


名目上の頭目とは言え彼女は余りに若輩過ぎる為、実質的に隊を率いるのはシルカの片腕であった経験豊富な商人であり、商人ギルドの構成員でもある初老の男である




ルカは姉と違って幼い頃から商人としての才気に溢れていた訳では無いが、姉の下で懸命に商いに励む姿と屈託の無い人好きのする人柄により多くの者が彼女を慕い、惜しみなく手を差し伸べる不思議な魅力が有った


その為、周囲の人々には姉以上にその将来を嘱望されており、また当の姉も商人の先達として厳しく指導しつつも自慢の妹を大層可愛がっていた


そんな彼女は、隊商の雑用係と夕餉を共にしていた余所者の加藤にも気さくに話し掛け、彼が披露した迷宮の与太話を大いに楽しんだ




ところが蛮族からの2度目の襲撃の際、彼女の隊商は大きな被害を受け、しかもその後猛吹雪に巻き込まれて視界を失い、隊商団本体から逸れてしまう


その後も寒さや疲労、高所からの滑落等で多くの者が斃れ、生き残りが僅かとなった隊商は、蛮族から3度目の襲撃を受けた




蛮族共に完全に包囲され、次々と惨殺されてゆく家族同然の仲間達を前にして、遂に己の最後を悟った彼女は、その身を辱められぬよう最も信頼する姉の片腕であった男に懇願した


どうかその剣で此の首を刎ねるか、胸を刺し貫いてくださいと




その後、彼女の最期の願いを聞き届けた男と共に死亡した彼女は蛮族に身包みを剥がされ、無残な骸を晒す事になった※187話




・ベテランの行商人達


大山脈越えを目指す隊商団の行商人達


商人とは思えない鍛え上げた体格と筋肉を誇る陽気な集団


危険な街道を旅する行商人達は、自衛の為に自らも鍛え上げている者が多い


大山脈では自慢の腕力に物を言わせて、加藤と共に流された橋の代わりに即席の橋を架けた※167話


その後、蛮族の襲撃や大自然の猛威に晒された彼等は、その殆どが大山脈の奥地で命を落とした




・デュモクレトス


伝説の商人


彼の足跡には幾つもの逸話や伝説が残されており、今尚モック=キャパを始め数多の商人に信奉されている※167話


出自はヘラスのアテナイ




・商人ギルドの駐在人達


大山脈の只中に建造された商人ギルドの関所に駐在しているギルド関係者


大山脈の奥地へ続く商人の道の監視役でもある


皆歴戦の戦士のような筋骨隆々とした体躯を備え、更に濃い髭面の巨漢で、商人ギルドの関係者と言うよりも傭兵ギルド辺りの関係者にしか見えない※168話


頑丈そうな皮鎧で身を固め、巨大な手斧のような武器を腰から下げている


大山脈に足を踏み入れた隊商団を笑顔で出迎えた




・大山脈の案内人


隊商団に雇われた地元の案内人


地元民らしく大山脈に生息する動物や地形、気象、道筋など豊富な知識を有する上、案内人として何度か商人の道を通り抜けた経験を持つ


しかし今回の旅では想定外の事態が立て続けに起きた為、山を熟知した彼らも例外無く窮地に立たされる事になった


結局生きて大山脈を超える事が出来たのは僅か1名で、その者も間もなく重度の凍傷が原因で息を引き取った




・護衛の男


大山脈越えを目指す隊商団の中でルカの隊商の護衛を務める狩人


未だ若く未熟そうな見た目の斥候の男


革製の厚手の服を身に纏い、柔らかそうなブーツを履いている


蛮族に見張られている旨を加藤に耳打ちされるも、斥候である自分すら何も気付かないにも拘らず、低級の雑魚に生意気な意見を具申され怒りを募らせる




・大山脈の蛮族Ⅰ


大山脈の奥地に縄張りを持つ蛮族の集団


非常に毛深く野性味溢れる容貌をしており、女性も例外では無い


棍棒や粗雑な金属製の曲刀(過去に隊商から奪った物)で武装している


人族とは明確に種族が異なり、地球で言うところの類人猿に近い種族である


今年は冷害により山の実りが極端に少なかった事で飢餓に苦しみ、更には例年に無い山からの激しい吹き降ろしにより魔素が広範囲に散った事が原因で、魔素溜まりから多くの魔物共が這い出て各所で甚大な被害を被った


その為、彼等は生存を賭けて決死の覚悟で加藤達の隊商に略奪を敢行したものの、敢え無く返り討ちの憂き目を見た


その後、彼等は次の春を迎える事無く全滅した




・モック=キャパの護衛


大山脈越えを目指す隊商団の中でモック=キャパの隊商の護衛を務める2名の狩人


蛮族からの1度目の襲撃の際に1名が死亡、1名が重傷を負った


その後、間も無く重傷の1名も死亡した為、2人共その場で埋葬された※171話




・張飛


字は益徳 約2千年前の古代中国で活躍した蜀漢の武将


幽州の涿たく郡出身(現代の河北省の辺り)


加藤はラウードの姿を見て張飛扱いしたが、史書に張飛の容姿に関する記述は無い


武勇に秀で、後世においても勇猛な武将は度々彼に例えられた


黄巾の乱の頃から劉備に仕え、高名な長阪橋の戦い等で数多くの武勲を上げるも、志半ばで非業の死を遂げた 




・劉備


字は玄徳 約2千年前の古代中国で活躍した群雄の一人


後に漢王朝の滅亡後、漢の正当な後継として蜀漢王朝の皇帝を称する


幽州の涿たく郡出身(現代の河北省の辺り)


中華統一の志半ばにして、白帝城において病に倒れた




・諸葛亮


字は孔明 約2千年前の古代中国で活躍した蜀漢の将


徐州の琅邪ろうや郡出身(現代の山東省と江蘇省に跨る辺り)


河南省南陽(或いは湖北省襄陽)で隠遁生活をして居たが、三顧の礼を受けて劉備に仕える


後に蜀漢の丞相となり、録尚書事、司隷校尉等を兼任した


劉備亡き後も蜀漢に対して忠義を捧げ、5度に渡る北伐を敢行した


中華統一の志半ばにして五丈原の陣中にて病に倒れた




・おっちゃんの付き人


商人モック=キャパの身の回りの世話をする二人の付き人


加藤と同年代か更に若い見た目の青年達


元々は幼い戦災孤児であったが、物乞いにしては機敏に動く姿がモック=キャパの目に留まり、後に彼の隊商で雇われる事になる


その後はモック=キャパの行商の旅に同行し、数多くの苦楽を共にした


就寝中の樽を強制的に起床させる方法として、モジャのゲップを浴びせる事を思い付くなど非常に仕事が出来る※175話


大山脈を越える旅の最中、魔物に背後から崖下に引き摺り落とされ、無残な最期を迎えた※178話




・モック=キャパ(おっちゃん)


商人ギルドに所属するベテランの行商人


刺繍が入ったイスラム帽のようなピッタリした帽子を被り、トーブのような白色のゆったりした衣服を身に纏っている


瞳は柔和そうに垂れ下がっており、整えられた口髭を蓄えた口には常に微笑みを浮かべている※172話


また姿勢が良いお陰か見苦しさは無いものの、ふくよかな体型と突き出た腹が存在を主張しており、如何にも商人然とした外見をしている


但し、行商人の嗜みとして若い頃より見た目以上に身体を鍛えている


頭頂部の毛量はかなり心許なくなっている




香辛料の知識と料理の腕前は相当なもので、彼が仕込んだスペシャルミートの石焼は、美食に爛れた日本人である加藤を感涙させる程である※174話


嘗てエリスタル王国の大学で学んだ知識に長年の旅で得た無数の知見が加わり、非常に博識である また、抜群の記憶力を誇っている


星や天候を読む術にも長けており、旅の最中に方角を完全に見失う事は滅多に無い


長年の行商の旅で培った彼が持つ人脈の広さと奥深さは、加藤の想像を遥かに超える




キャパ家はエリスタル王国の南方に在る小都市に地盤を持つ商家で、南方諸国との南蛮貿易で財を成した小規模ながらも非常に歴史ある商家の家柄である


商家としての起こりは、商人ギルドよりも更に古い時代まで遡る


モック=キャパはそんなキャパ家の長男として生を受け、父親から家業を継ぐことを義務付けられていた


しかし幼い頃から焦がれた行商人への夢を捨て切れなかったモックは、一旦は商家の大旦那の地位に納まったものの、紆余曲折を経て己の息子に店を継がせると、遂に一介の行商人として故郷を飛び出した




そして永い永い行商の旅路を経て、旅に出た当初の仲間達は既に全員此の世を去り、何時しか彼に付き従うのはたった二名の付き人のみと成っていた


その頃には加齢の影響もあり、モックの身体と心は朽ち果てた石貨の様に擦り減り、疲れ果てていた




そんな折、モックの手中に運良く商人ギルドを通して故郷の息子からの封書が届いた


その内容は、彼に対する息子からの帰郷の歎願であった


手紙に目を通した彼は帰郷と行商から身を引く事を決意し、故郷に向けて旅立った




そして生涯で最後であろうと思い定めた旅路の最中、危険極まる大山脈越えの道中で、モックは不思議な一人の男と運命の出会いを果たす


運命神の悪戯か、或いは運命付けられた宿縁か


その男、加藤との出会いにより、生まれ故郷で冬枯れの雑草のように寂寥たる終わりを迎える筈だった彼の余生は、途轍もない激流に叩き込まれる事になる




大山脈ではまるで悪神に見初められたかの如く次々と窮地に見舞われ、そして加藤等と共に数え切れない程の死地を潜り抜け、大山脈から辛くも生還を果たしたモックは、その際に加藤から受けた常軌を逸した戦闘の手解きも合わさって、短期間で未だ嘗て経験した事が無い水準の体力と戦闘能力を獲得するに至った




その事はモックの年齢を考慮すれば本来有り得ない事態なのだが、彼の精神面での復調と再生が小さな奇跡の呼び水となった


若き友と紡いだ絆と約束、そして大山脈で見出した新たな夢と目標に拠り、モックの心ハートと魂は、若き日の情熱と活力を取り戻したのだ


加えて奇跡のより大きな要因として、旅の最中に加藤がモックに対して連日秘密裏に施しまくった回復魔法により、本人すら預かり知らぬ体内の古傷や損耗、病巣までもがほぼ完治しており、更には肉体が異常な活性化を遂げた事が挙げられる




大山脈を踏破し、アプリリスの町で加藤と惜別したモックは、その後偶然町を訪れた隊商と巧みに交渉した結果、無事旅に同行させて貰う許可を得た


そして加藤が町を離れてから凡そ1月の後、彼は樽を伴って故郷に向けて旅立った




故郷へ向かう旅の間も加藤から授かった教えを忠実に守り続けたモックは、一日も欠かさず肉体を厳しく苛め抜き、積極的に獣や魔物、そして時には無辜の人々に仇なす賊との戦いに身を投じた


ところがその弊害として、彼は今迄行商人としては経験した事の無い類いの、幾つもの騒動に意に反して巻き込まれる羽目となった




そして、彼がアプリリスの町を出立してから凡そ1年余りの後、数多くの波乱と危険に満ちた長い旅路の果てに


三十余名の屈強な配下を従え、より一層精悍な風貌となったモックは、時を経て無二の相棒となった樽と共に遂に懐かしい故郷へと辿り着いた




・樽


商人モック=キャパの隊商を護衛する女狩人 ランクは6級


女性としてはかなり大柄で、背丈は180cmを優に超える


得物は一本棘の付いたハンマーのような武器


赤み掛かった茶色の髪と同色の瞳を持ち、犬歯を剥き出して笑う貌はまるで野生の猪の様に見える


体型は正に樽と呼ぶに相応しく、その輪郭は胴回りを楕円の頂点とする曲線を描く


無駄に巨大な胸の膨らみにより、辛うじて性別が判別可能


身体には樽のような形状の金属鎧を纏い、頭部には幅広の額当てを装着している


加藤とは別のベクトルで逃走術と危機回避能力に長けており、生存能力が非常に高い


但し、加藤から見て戦闘能力に特筆すべき部分は見当たらない




戦乱著しい辺境から逃れ、遠い故郷へと帰る為に大山脈越えの隊商を護衛する仕事を請け負った


大山脈越えの旅の最中、人一倍糧食を消費しつつも護衛の仕事を適当にサボっていた彼女は、蛮族の襲撃によりモック=キャパの隊商を守る護衛が全滅してしまった為、代わりの護衛として有無を言わせず配置転換させられた


その際、隊商の頭目であるモック=キャパと、自分と同じく配置転換させられた護衛の加藤と出会う




その後、再び蛮族に襲われて隊商団の本隊と逸れて以降は、モック=キャパや加藤と共に少人数で無謀極まる大山脈越えに挑む羽目に陥った


しかし持ち前の生存能力を遺憾無く発揮し、更には加藤の決死の奮闘や幾つもの幸運が積み重なった結果、彼女は到底不可能と思われた大山脈からの生還を見事果たした




大山脈越えの旅の最中には彼女は加藤に幾度となく煮え湯を飲ませ、遂には加藤のファーストキスをも奪い、部屋に引き籠って寝台を涙で濡らすまで追い詰めた




その後、提示された報酬に釣られて帰郷を目指すモック=キャパからの誘いに乗った彼女は、アプリリスの町で加藤と別れた後、自らの故郷の事は棚上げしてモック=キャパの旅に同行する事になった




・モジャ(モ=ジャ)


シュヤーリアンコットの町で行商人モック=キャパが借り受けた、モシャスと呼ばれる草食動物(モジャモジャ生物)


体格は小柄な牛程もあり外見は地球の羊のような、体毛で全身を覆われた姿である


但しその毛色は暗赤色で、毛質は羊と違って固いブラシのような剛毛である


足先は蹄では無くまるで故郷の猛禽類のような鋭い爪が見て取れる※165話




辺境で散見された荷車を引く鱗鳥や荷蜥蜴は、大山脈の過酷な環境には耐えられない


その為、大山脈越えを目指す商人ギルドの隊商は、余程の理由がない限りシュヤーリアンコットの町で鱗鳥や荷蜥蜴を売却し、代りに山岳地の特殊な環境に適応したモシャスを借り受けるのが一般的である


モジャの名付けは加藤の独断によるもの


旅の間に情が移り過ぎるのを防ぐ為、行商人達は通常モシャスに名付けはしない




モジャは毎朝モック=キャパの手で全身を丹念にブラッシングされており、良く観察すれば他のモシャスと比べて微妙に体毛が艶やかである




臆病だが人懐っこく、隙あらば加藤の顔面を舐め回す※173話


垂直な崖でも鋭い爪を岩壁に喰い込ませて攀じ登ったり、身体を保持出来る※182話


体内に蓄えた脂肪と筋肉に拠り、絶食状態でも2か月位は余裕で耐えられる


油ギッシュな上に剛毛なので、撫でても気持ち良く無い 毛の長いタワシを撫でているような心地


山岳地帯の環境に適応した為、下界では動きが緩慢となり、更に身体が徐々に衰弱してしまう※203話


不慮の事故や病気で死なない限り、平均で凡そ30年位は生きる※209話


加藤が大山脈の尾根から滑落した際には、アンザイレンしたロープを支えて彼の命を救った




モック=キャパや加藤等と共に絶望的と思われた大山脈の未踏ルートを踏破し、見事生還を果たした


元々臆病な性格で以前は度々仲間のモシャス達から虐められる事もあったモジャだが、尋常ならざる今回の旅において凄まじい経験を積み、また幾度と無く死線を潜り抜けた事で心身共に逞しく鍛え上げられた




後にモジャは大山脈における荷運び獣として、数多くの隊商と旅路を共にする事になった


そして如何なる苦境に在っても良く旅人を助け、危難に際しては誰よりも勇敢に立ち向かい、其の不撓不屈の粘り強く力強い其の歩みは、決して諦めない勇気と立ち上がる力を共に歩む仲間に与え続けた


そんなモジャを帯同した商人ギルドの隊商は、死の危険に満ちた大山脈において極めて高い生存率を誇った




何時しか其のモシャスは幸運の担い手と呼ばれ、大山脈に足を踏み入れるあらゆる隊商から同伴を切望される様になった


そして本来名付けが為されないモシャスの中に有って、畏敬と感謝の念を込めて旅人達から唯一『モ=ジャ』と呼ばれ、広くその功績を讃えられた




何時から彼のモシャスがそう呼ばれる様になったのか、何故『モ=ジャ』と名付けられたのか、その由来を知る者は誰もいない




・大山脈の蛮族Ⅱ


大山脈の奥地に縄張りを持つ蛮族の集団


加藤達の隊商を最初に襲った蛮族とは別の部族であり、灰色の毛皮を着た者達や、全身派手な刺青姿の者も居る


酷い飢餓に苦しんだ結果、止むに止まれず複数の部族で結託し、また襲われる危険を覚悟で山の魔物共を嗾けて加藤が護衛する隊商団を襲撃した※176話


その結果、被害は大きかったものの襲撃は一定の成果を挙げ、彼等は過酷な冬を越す為の貴重な物資や食料を強奪する事に成功した




・大山脈の蛮族Ⅲ


大山脈の奥地に縄張りを持つ蛮族の集団


加藤達を襲撃した蛮族や、ルカの隊商を襲撃した蛮族とは別の部族


少人数と思しき加藤達を付け狙って足跡を追跡していたが、山を熟知した彼等から見ても類を見ない規模の猛吹雪に巻かれて全滅した※193話


加藤は凍り付いた彼等の死体を目の当たりにして非常食にする事を思い付いたが、既の所で思い留まった




・大山脈の蛮族Ⅳ


大山脈の奥地に縄張りを持つ蛮族の集団


辺境とは反対側、アプリリスの町側の大山脈の奥地に棲む蛮族


まだ若い二人の男で、湾曲した蛮刀で武装し、腰から大きな雑囊を吊り下げている


彼等の性格は温厚で、アプリリスの町と幾らかの交流もある


ある日、町の人族との取引に利用する為に秘密の採取場で岩塩を採取していたところ、突如周囲に異臭が漂い、間も無く背後から恐ろしい何者かの襲撃を受けた※201話




その後二人は辛うじて命は取り留めたものの、大切な荷は賊に奪われ、身包みを全て剥がされ、代りに猛烈な異臭を放つ汚物を着せられ、死に優る非道な恥辱を味わわされた




・旅の行商人


街道を旅する商人ギルドの行商人の一団


鱗鳥が引く荷車と、周囲を囲む幾人かの旅装束に身を包んだ人族から成る




飲料水の備蓄が心許なくなった為、水場を求めて街道を外れて歩を進めていたところ、突如奇声を発する怪し過ぎる風体の賊に襲われた※203話


その際、護衛が咄嗟に反撃を試みるも、敵は野盗にしては有り得ない強さで、僅かな時間の内に制圧されてしまった


その後、俄かには信じ難い話だが襲撃者は賊などでは無く大山脈を踏破して来た旅人であり、商人ギルドの同輩である事が判明した


その為、和解した彼等に現在地と目的の町までの経路を詳しく教え、幾らかの対価と引き換えに周辺の地図を模写させてあげた




・アプリリスの町の守衛


アプリリスの町の入口を守る守衛


冬の厳しい寒さの為、武装と防寒着で着膨れしいる


目の前に現れたモック=キャパと樽が余りに汚い風体だった為、当初は加藤達を門前払いしようとした※204話


しかし、モック=キャパの商人ギルドカードを提示された事や、加藤から心付けを貰った事で態度を軟化させ、入町を許した




・商人ギルドの門番トル


アプリリスの町の商人ギルド支部の門を守る門番


未だ未熟な若者だが、商人ギルドの大口の取引先である父親のコネで門番の一人に抜擢された


ギルドを訪ねた加藤達を無作法な態度で迎えた為、怒った加藤に顎を打ち抜かれて昏倒させられた※205話


それ以来、加藤に対して激しい恨みを募らせる




・商人ギルドの守衛


アプリリスの町の商人ギルド支部を守る守衛


トルの兄貴分であり、相当に腕が立つ壮年の男


嘗ては狩人ギルドに所属していたが、今はアプリリスの町の商人ギルドの職員扱いとなっている


弟分を倒された事やギルドへの取次ぎを巡り加藤と一触即発となるが、モック=キャパの機転と取り成しに拠り事なきを得た※205話




・アシモ


アプリリスの町の商人ギルド支部に所属する商人であり、ギルドの支部長でもある


如何にも商人然とした恰幅の良い体形の中年男で、簡素だが身なりの整った小奇麗な格好をしている また、髭が濃い※205話


モック=キャパとは嘗て彼がアプリリスの町に滞在した時に友誼を結んだ、旧知の間柄である




アシモはアプリリスの町に向かう大規模な隊商団が見舞われた悲劇の報せを受け、また息も絶え絶えに町に辿り着いた極僅かな生き残りから余りに凄惨な報告を直接耳にして、その後暫くの間は悲嘆に暮れる毎日を送っていた


そんな折、大山脈から生還したモック=キャパと再会したアシモは、相手の非常識な体臭に危うく卒倒しそうになりながらも、辛うじて体裁を保って互いの無事を祝った




その後、モック達と互いの情報交換を行ったアシモは、彼から前代未聞の未踏破ルートで大山脈を越えた話を聞き、並々ならぬ好奇心を抱く


更に商人としての勘働きで、今加藤達に恩を売っておけば後々有益であろうと判断したアシモは、知己であるモックに情報の対価として路銀や物資を融通したり、狩人ギルドに対して加藤と樽が護衛依頼の報酬を得られるよう口添えをしたり、ギルドの寝所で寝泊まりする事を承諾するなど何くれと世話を焼いた




・商人ギルドの小間使い


アプリリスの町の商人ギルド支部で住み込みで働く小間使い


商人ギルドを訪れた加藤達が洗い場で旅の凄まじい汚れを洗い落とした際に、着替えの古着を準備した


また、彼等から回収したド汚いゴミが発する余りに強烈な刺激臭のせいで、暫くの間マトモに食事が喉を通らなかった




・商人ギルド職員


アプリリスの町の商人ギルド支部で働くギルドの職員達


大山脈から生還したモック=キャパや加藤達に温かい労いの言葉を掛けた


仕事の少ない此の町の冬の季節は、許可を得た多くの職員が他の町の支部へ出稼ぎに行ってしまう為、残された職員達は基本退屈である


その為、加藤達が催した生還を祝う宴に便乗して大いにバカ騒ぎを行った※206話




しかしその後、遠慮の欠片も無く連日ギルドでタダ飯を喰らいまくる樽と加藤を次第に白眼視する様になった




・狩人ギルド支部の受付熟女Ⅱ


アプリリスの町の狩人ギルド支部に籍を置く受付のおばちゃん


矢鱈色黒なおばちゃんで、シュヤーリアンコットの受付熟女より心持ち若く見える


加藤達から大山脈越えに関する糞どうでも良くて長過ぎる報告を聞かされた彼女は、死ぬ程面倒臭くなって「ふ~ん」の一言で受け答えをバッサリと済ませた※206話




・狩人ギルドの職員


アプリリスの町の狩人ギルド支部に籍を置くギルド職員


此の支部に所属する幹部の一人で地位は其れなりに高いが、辺鄙な町ゆえ給金は安い


狩人ギルドを訪れた加藤達に対して、非常に高慢な態度で接する




突如受付カウンターに報酬をバラ撒いて金勘定を始めたイカれた奴等をギルドの取り調べ室に連行し、垂涎の大山脈の未踏ルートに関する情報を吐かせようと画策した


しかし薄汚れたオブタッドのような女が聞くに堪えない自慢話を延々と喋り続けたため、酷い頭痛を患っただけで結局何も得る事が叶わなかった




・牧場主の男


アプリリスの町近郊に在る、モシャスや鱗鳥の放牧地の主


顔面は獣人と見紛うばかりに毛深く、身体からは濃厚な獣臭が漂う、臭いも絵面も途轍も無くムサ苦しい年嵩の男


数日間に渡る健康状態の確認や査定を念入りにおこなった後、モック=キャパからモジャを引き取った


元々一般的な鱗鳥の六割程度の金額で引き取られたモジャであったが、苛酷な山で鍛え上げられた結果、其の査定額は鱗鳥を数頭購入出来る額となった

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