表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥か異界の地より  作者: 富士傘
人跡未踏生存限界編
16/267

15話

周囲が闇に包まれる前に就寝した俺とのぶさんは、夜中に騒がしい物音で目を覚ました。因みに交代で見張りとかはしていない。正直滅茶苦茶疲れてたので、もう二人共寝ちまうか、となった。適当なものである。


だが、やはり野生の獣達が本領を発揮するのは、この世界でも昼間より夜間のようだ。獣が走る喧しい音や唸り声、何かの断末魔の声やら正体不明な奇声など。周囲の至る所から物凄い喧騒が聞こえてくる。滅茶苦茶五月蠅いしヤバすぎるだろ。地球ももし人間が絶滅して居なくなったらこんな風になってしまうのだろうか。一応木の上に居るとはいえ、周りは視界ゼロの真の闇だ。俺達は恐怖に震えながら身を寄せ合った。だが疲れによる眠気には勝てず、俺の意識は暫くすると眠りに落ちてしまった。



翌日。早朝に起床した俺達は、早速洞窟の入り口までやってきた。のぶさんは昨晩はあまり眠れなかったようだ。木屑を大量に放り込んでおいた竈の火種は一晩で完全に消えていた。そう甘くは無いか。


虫退治の為に洞窟内を煙で燻すことにした俺達は、恐ろしく乱暴な方法を取ることにした。火種として木屑を集め、更にいかにも湿気て煙の出そうな葉の付いた細い生木の枝をバキボキへし折って洞窟内にガンガンに放り込む。地球と違って環境への配慮なんぞ一切気にする必要も無いので、周囲の木を躊躇いなく盛大に折りまくる。しかし、かなりの重労働なので全身から汗が噴き出す。あと身体のあちこちが虫に刺されて痛痒い。今迄なら虫に刺されたら超ビビっていたのだが、新たな俺たちの城を前にしてちょっと気分がハイになってるのか一切気に留めず作業を継続する。


そして、十分な量の生木の枝を放り込んだ後、ライターを使って火種に迷わず着火した。洞窟の中には延焼するような物は無いため、周囲を気にする必要は無いだろう。生木なので初めは中々燃えなかったが、暫くするととんでもない量の煙を吐き出しながら盛大に燃え始めた。小学生の頃、火事になったご近所さんを野次馬した時の事を思い出す。あの時は消防士さん達を全力で応援していたが、今の俺達は地球なら完全に放火魔の犯罪者である。


洞窟に余り近付くと煙を吸い込んで一酸化炭素中毒になりかねないので、少し離れたところで燃える様子を見張っていると、上の方からも盛大に煙が噴出していた。この洞窟は上手く煙が抜ける構造のようである。此れなら内部でも竈が作れそうだ。


そして、暫くそのままジッと洞窟の様子を見張っていると・・・。


突如、洞窟の入口から巨大な何かが猛烈な勢いで飛び出してきた!


「わひっ!?」

背後で悲鳴を上げるのぶさんの声が聞こえた。だがその瞬間、俺は手慰みで偶然弄んでいた石を咄嗟にブン投げて、飛び出してきた物体に思い切り叩き込んだ!


飛び出してきた複数の影は、物凄い速さで森の中へ消えていった。だが、そのうちの一つは俺の直ぐ傍でのたうち回っている。


「キエエエッ!」

俺は我知らず足元に置いてあった杖を掴むと、奇声と共に暴れる影にぶっ刺した。手に物凄い手応えがあり、杖が中程からあっさりヘシ折れる。


「のぶさん石っ!」

俺は背後に向けて叫びながらも、火の消えた竈の石を自分でひっ掴んで影に叩きつけた。石を叩き付けられた影はぴくぴく痙攣している。


やったか!?・・・やったよな。よっしゃああ。

「うおおおお仕留めたどおおぉ!ゴホゴホ。」


煙で咳き込みながらも、俺のテンションは天井知らずに跳ね上がった。

どうやら空腹のせいで、俺の野生レベルは何時の間にか超進化を果たしていたようだ。ちょっと前の俺ならあの影を見てビビって尻餅を付いていたに違いない。俺は満面の笑顔で振り向くと、のぶさんは引き攣った顔で固まっていた。


煙のせいであまり近づけないため、俺は木の枝を使って未だ痙攣する物体を手元に引き寄せると、ソイツはバカでかい鼠のような生物だった。まあデカいといっても体長40cmくらいか。地球のカピバラの半分もないだろう。洞窟から飛び出してきた時に巨大生物に見えたのは、俺がビビッたせいで相手がデカく見えただけのようだ。


「肉だ肉肉。うおおおしゃらあああああ!」


「加藤・・お前凄いね。」


俺はうまそうな獲物を仕留めてウッキウキだったが、隣ののぶさんはドン引きしている。なぜ引いているんだい。こんなデカいお肉が手に入ったんだよ。俺凄くない?誉めてよのぶさん。


洞窟の前に作った竈は入り口から立ち上る煙が凄すぎて当分使えそうにないので、俺はとりあえず鼠の血抜きを試みてみる。本当は血も摂取したいところなのだが、調理の仕方が分からん。そのままゴクゴクするのは色々な意味で怖くて躊躇われる。

動脈の位置など分からないので、適当に首筋をナイフでザクザク切る。紐が無いので吊り下げることは出来ない。なので、木の俣に逆さにして置いておいた。血が抜けたら内臓を取り除いて川に放り込んで冷やしておこう。


それにしても、何をするにも道具が全然足りないな。手始めに鍋とロープは何とかして作りたい。そのうち土器作りの為にあのサンショウウオモドキを捕まえた場所の泥を採取しにいこう。なんか色々考えてたらオラワクワクしてきたぞ。


・・・此のまま洞窟の入り口を眺めていても仕方ないので、俺とのぶさんは食料の調達を兼ねて周囲の探索をすることにした。


暫く二人で洞窟周辺を徘徊していると、高さ20mほどの木の上にデカい木の実が実っているのを発見した。しかし幹に足掛かりがなく、木の上まで登れそうにない。仕方ないので場所だけ頭に叩き込んでおく。何時か絶対あの実を取ってやるからな。

その後、昆虫と野草を採取した俺たちは、再び洞窟へと戻ってきた。野草は草食動物らしき動物の食べ跡を発見したので、それと同じ見た目で食えそうな見た目の野草を採取してみた。他の動物も食ってるんだから、俺たちが食ってもいきなり死にはせんだろう。多分。


俺達が戻ってきた時、洞窟の火と煙の勢いは既にかなり治まっていたが、まだ中には入れそうに無かったので巨大鼠を解体することにした。ナイフで腹を縦に裂いて内臓を露出し、肉から指でペりぺり剥がして丁寧に取り出す。以前注意点として親友の大吾から膀胱だか胆のうだかを傷つけないよう言われた記憶があるが、此奴のどれがどの臓器かなんて俺にはサッパリ分からんので全部綺麗にはがしていく。そして、最後は食道をちょん切って内臓は取り出し完了だ。


その後、取り出した内臓は嫌がるのぶさんに押し付けて土に埋めてもらい、俺は残った肉を渓流でジャブジャブ洗う。その後、ナイフで皮を丁寧に剥いで行く・・のだが所詮素人なので皮はボロボロになってしまった。仕方無いのでボロボロになった皮から脂肪を削り落とす。これも貴重な栄養源である。後で食う分の肉を切り落としたら残りは渓流に放り込んで、上から岩を載せて冷やしておく。


さあ今日は獲りたての鼠モドキ肉で焼肉パーティーだぜ。川からなるべく平たくて長細い石を持ってきて即席の竈の上に渡す。そして、俺が鼠モドキを解体中にのぶさんが集めて来た燃料に着火。暫く火を当てていると石がいい感じで焼けてきた。早速鼠肉を焼いて食ってみる。うおおおテンション上がる。



・・・結果、食えなくは無いけど微妙な味でした。やっぱり調味料が無いとね。


ついでに採取した付近に自生していた野草は肌にくっつけて異常反応が無いかテストした後、少量食ってみた。暫くは自分等の肉体で人体実験をして反応を見ながら少しづつ可食かどうかテストしていくしかないな。虫もちゃんと焼いて完食したぜ。ゲロ不味かったけどな。



そして食えるものは食った俺たちは、昨夜と同じ大木の枝で寝ることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ