第85話
第85話
車に乗って森に入ることはできないので、結局キャンピングカーをしまって彼らについていくこと一時間。
村の様子が目に入ってくる。
村の雰囲気は、全体的に良くない。
村の外れにある家の一部が壊れた状態で。
「…!」
壊れた家の周りには、まだ収容できていない遺体と血痕が見える。
「さあ、こちらへ…」
俺たちを連れてきた男性は、口元は笑っているが、目には悲しみが見える。
俺たちが中に入ると、村を歩き回る人々が俺たちを見つめる。
俺たちを見て、小さな希望の糸でも掴んだのだろうか。
何人かは俺たちを見て、かすかに微笑む。
男性について行ってどれくらい経っただろうか。
他の家よりも少し大きな家が目に入る。
丸太で建てられた小屋に色をつけた土を塗り、壁面は白、赤色をつけた粘土を焼いて作った瓦で作った屋根の煙突からは、中で焚いた暖炉の煙突から煙がもくもくと空へ上がっていく。
コン、コン。
「村長、村を救ってくださる賢者様をお連れしました!」
「ちょ…待っ…!」
その言葉が終わるや否や、中でドタバタという音が聞こえ、そのまま扉を大きく開け放つ。
「何だと?!村を救ってくださる賢者様をお連れしただと?!」
扉が開くや否や現れたのは、老人…ではない。
まだ四十代になったばかりかと思うほど、村長と言うにはかなり若く、たくましい男性が現れた。
背もそうだし、体格もそうだ。
かなり運動をしていた体らしく、着ているチュニックの上から、かなりバランスの取れた筋肉が露わになっている。
人相はかなり個性的だ。
眉毛のすぐ上まで下りている茶色の髪の下に、濃いゲジゲジ眉毛と共に丸い目が見える。
鼻の下には八の字に生えた髭があり、口角はかすかに上がっている。
そこに男らしさを象徴する団子鼻まであるので、並大抵の男ではふざけることさえできないほどの壮丁。
「こ…この方が…賢者…?」
俺を見た村長の表情が、当惑に染まる。
「はい、そうです。」
「し…しかし…この方々は冒険者が…」
村長は男性を見つめ、来いという手招きをして、彼だけを連れて家の中に入っていった。
「何よ…?まさか私たちを無視してるの…?」
「そりゃ、そうだろうな。」
無視されてもおかしくない。
オークを倒せと連れてきたのが、武装一つしていない男女二人なのだから。
ましてや、もう一人は服さえまともに着ていない幼い少女だ。
こんな二人がオークを倒すだろうと、誰が思うだろうか。
俺でも、こんな二人が助けに来たと言ったら、ふざけてないで帰れと言っただろう。
「ちょっと!私たちは助けに来たのよ!早くドアを開けて!」
「フレイア、少し待ってみよう。あのおじさんが俺たちを連れてきた以上、帰そうとするなら直接来て俺たちに言ってくれるだろう。」
「帰す?誰の勝手で?お前は帰っても、私は…」
ガチャッ―。
ドアが開く音がして、中から二人が外に出てくる。
俺たちを連れてきた男性の表情には涙が見えるが、村長の顔には笑みが浮かんでいる。
「ようこそお越しくださいました、賢者様。お待ちしておりました。さあ、中へお入りください。」
フレイアは顔を出し、不満げな表情で村長をじっと睨みつけると、腕を組んだまま中に入っていく。
彼女について中に入り、家の中を見回した。
かなり広い家の中。
台所と食卓がある居間、部屋もいくつかある。
簡素だが、あるべきものは全てある家だ。
「いらっしゃいませ、賢者様。」
女性の声が聞こえ、台所の方を見ると、一人の女性が目を細めて笑って挨拶する。
そしてその後ろには、6歳くらいに見える男の子が後ろに隠れて俺を見下ろしている。
「こんにちは。」
俺が挨拶をして子供を見ると、子供が素早く女性の後ろに隠れ、顔だけそっと出して俺を見つめる。
あれほど警戒し、少しずつ警戒を解こうとしている子供に、フレイアは…
「わあっ!」
「うわーん!」
両手を上に上げ、お化けのような仕草をして怖がらせる。
「何するんだよ?」
「ふん、親の後ろに隠れている子供は気に入らないわ。」
「それでも怖がらせるのは…」
俺は深いため息をつき、頭を下げた。
「申し訳ありません、この子がまだ分別がないもので…」
「分別がないだなんて、私にないわけないでしょ?もう奴隷として売られた時から、分別なんてものは全部ついたわよ。」
「静かにしろ…」
俺が歯を食いしばって言うと、こいつが少し当惑し、そのまま食卓へ歩いて行って椅子を音を立てて引き出し、そこに座る。
「ふん。」
そうして唇を尖らせたまま、顔をそむける。
「ど…奴隷…?」
その言葉に、後ろにいた村長が当惑して見つめる。
「それが…こいつ、少し前まで奴隷だったので…今は違う…と言うべきか、とにかく奴隷まではいかないので、あまり気にしないでください。」
「あ、はい…」
奴隷なのは確かだが、実際に奴隷の刻印のようなものは押していないから、奴隷ではない。
奴隷だけど、奴隷じゃない?
何か言葉がおかしいような気がするけど…
「さあ、では一緒に食事をしましょう。」
そう言って、俺を椅子に案内する。
「では、厚かましくも…」
食事の席に座ると、村長も俺の反対側に座る。
「では私も…」
俺たちを連れてきた男性も椅子に座ろうとすると、村長が彼を見て笑う。
「フィン、君は今忙しい時間ではないのかね?」
「それが…特に忙しくは…」
「い・そ・が・し・い・は・ず・だ・が・?」
一文字ずつ笑いながらはっきりと言う村長の声に、男性が冷や汗を流しながら外へ引き出そうとしていた椅子を再び中に入れ、何か思い出したかのように気まずそうに笑って後ずさりする。
「あ…あっ!そうだ!考えてみれば麦の収穫時期だった!では村長、私はこれでし…失礼します…!」
「ああ、麦の収穫、頼んだぞ!」
そう言って、素早く退場。
麦の収穫時期って、春だったか?
そう考えていると、村長が先に俺を見つめて話しかけてくる。
「賢者様、その…お名前は…?」
「あ、坂本優司です。こっちはフレイアで。」
フレイアは村長を見つめると、鼻を鳴らして顔をそむける。
「そ…そうですか。坂本優司様とフレイア様…坂本優司様はこの辺りでは聞き慣れないお名前ですが、もしや東の大陸から来られましたか?」
「あ、それが…東の大陸…から来たと言えますね…?」
東の大陸で合っているのかと思うが、俺の名前を聞いて東の大陸から来たと言うのなら、東の大陸の人々と似たような名前なのだろう。
それなら、いっそ東の大陸の人だと偽る方がいい。
下手に異世界人だと言って、混乱を招くだけかもしれないから。
「東の大陸の方が、どうしてこんな所まで…」
「大陸を回っているんです。」
「大陸をですか?」
「はい。ついでに旅でもしてみようかと思いまして。」
「旅だなんて…お二人で旅をするには、かなり危険ではありませんか?山賊のような奴らも森や山に陣を張って通り過ぎる人々を襲ったりしますし、ゴブリンやオーク、ダイアウルフのようなモンスターも多いでしょうに…」
「ゴブリンなら捕まえるのに大して難しくはないですし…まだオークやダイアウルフには会ってないので。」
「あ…」
「おそらく、そう難しくはないんじゃないかと…思ってはいますが…」
「本当でございますか?!」
その言葉が終わるや否や、すぐに俺に顔を突き出して近づいてくる。
まるで目から星でも飛ばしそうな表情に、仕方なく椅子を後ろに引いて顔を少し離した。
「以前、フォレストウルフに会ったことがあったんです。フォレストウルフが大して難しくはなかったので…」
いや、あの時はハルがいたからそうだったのか…
「わはは!それが事実なら、我々は本当に運が良いですな!こんな強い方が村を助けに自ら来てくださるとは!」
「え?」
「では、いつから始められるおつもりですか?我々はいつでも可能です!おっしゃってくだされば、今すぐにでもあのオーク野郎どもを棍棒で…!」
「ちょっと!ちょっと待ってください!」
俺の言葉に、村長が首をかしげる。
「その…今頼まれているのが、オークを退治してくれとおっしゃっている…んですよね?」
「そりゃあ…ここに来られた理由が、オークに苦しむ我々を救うために自ら来られたのではないのですか?」
「私はただ…ここに旅をしに…」
「ただやってあげればいいじゃない?どうせお前も安全に旅をするのがいいじゃない?ここで数日泊まったりもして。」
フレイアの奴。何言ってるんだ?
俺は本当に旅をしに来たんだってば!
誰かを助けたり戦ったりしに来たんじゃないってことだ。
「そうです!オークさえ何とかしていただければ、お二人を村落の英雄として称え、いつ来ても休めるように家を一軒建てて差し上げ、食事代も無料!いらっしゃらなくても、村人を送って常に管理するようにさせます!そして!」
熟考して決めるような表情を浮かべると、ほどなくして俺に言う。
「この村落の名前…まだ決めていないのですが、もし今回のことさえきちんと解決してくだされば、優司様とフレイア様の名前を取って、この村落の名前をフレユウジと名付けます!」
「結構です!」
「それは結構です。」
俺とフレイアが同時に言うと、村長が雨に打たれた鹿のような瞳で、残念そうにうなだれる。
「それなりに良い報酬だと思ったのだが…」
「村落の名前はこれから先ずっと残る名前ですよ? そんなのにしたら、さすがに村の人たちも戸惑うと思います…」
「嫌がるだなんて?村落の英雄の名前を使って村の名前をつけるなら、村人たちも喜ぶはずです!もし嫌がる人がいれば…」
瞬間、村長の目つきが鋭くなる。
「私が直接その人間たちの首を引き抜いて…」
「い…いや、それはちょっとひどいじゃない、おじさん!」
フレイアが呆れたように見つめて言うと、村長は以前の表情に戻ってからからと笑う。
「冗談です、冗談。」
「じょ…冗談だったのか…?」
俺が見ても、あれは冗談の表情じゃなかったんだが…
「さあ、仕事の話は後にして!」
村長の奥さんが、料理を運んでくると静かにテーブルへ置いた。
彼女が置いた料理は、かなり大きな鉄鍋。
そしてその鉄鍋の中には、ぐつぐつと煮えているシチューが、旨味あふれる匂いを漂わせながら入っている。
「食事から先にしましょう。」
ごくり。
三人が同時に唾を飲み込む音が家に響き渡り、やがて村長が言う。
「妻の言う通り、ひとまず食事から済ませて、話を続けましょう!」
「あ、はい!」
「いいわ。」
そうして五人の食事の時間が、静かに始まった。
이거 한국어로 요약해서 보여줘봐. 그리고 일본어 외에 한국어나 다른 언어 있는지 확인해봐.




