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第71話

第71話


カチャリ。


「うわっ!」


ドアを蹴ると同時にドアが開き、足を上げて力いっぱい押し込んだ親衛隊が、そのまま前のめりに倒れた。


「あ、すみません。料理をしていたので、音が聞こえなくて。」


ドアを開けて出てきたのは、紛れもなく男。

実際に彼が料理をしていたのか、かなり刺激的な、スパイシーで食欲をそそる匂いが小屋の中から漂ってきた。


「あなたですか?ジェルノータの領主が言っていた異界人というのは。」

「おそらく…そうじゃないでしょうか?ジェルノータの領主様が、他の異界人をご存知でなければ…」


男性は気まずそうに笑いながら、横にずれた。


「どうぞ、お入りください。いらっしゃると聞いて、食事の準備を終えておきましたから。」


その言葉に、親衛隊たちが眉をひそめた。

彼が横にずれると見える、小屋の内部の様子。

まず目に入るリビングの中央に、かなり大きな木の食卓があった。

そして、その上に置かれているのは、いくつかの器と、細長い木の枝のようなものが二本。

器は、どんな職人が作ったのか、桜の花びらが舞うような絵が描かれた、傷一つない非常に綺麗な器だった。

木の枝は、綺麗に整えられて二本ずつ対になって席に置かれていた。


「しばらく待っていろ。王女様をお連れしてくるから。」


親衛隊の一人が後ろを向いてカルパエダの元へ歩いて行き、残りの二人は剣を抜いたまま男性を警戒して睨みつけた。

この辺りでは見られない、異質な姿の男性。

着ている上着とズボンから始まり、家の中は、この辺りでも、いや、世界でも見たことのない品物で満ちていた。

家の中なのか、外なのか分からないどこかからは、絶えずウィーンという何かが作動する音が聞こえていた。


「しばらく見張っていて。」

「あ…分かった…」


親衛隊の一人が後ろを向いて、音が聞こえる場所へ行ってみた。

音は小屋の裏手へ行くほど強くなった。

そして、彼女はある場所で立ち止まった。

かなり大きな品物一つが、音を立てていた。

どこに使うのか分からない品物が、黒い長い線で繋がれて家の中に蔓のように伸びており、その横には蓋のついた赤い四角形の、取っ手のついた材質不明の箱が入っていた。


蓋を開けて匂いを嗅いでみると、不快な匂いを放つ黒い液体が入っていた。

緊張した表情で剣を抜き、品物をコツコツと突いてみた彼女は、品物が何の反応もないと、再び剣を鞘に納め、ドアの方へ戻ってきた。


「お二人、そうしていないで、ひとまず席にお座りください。ラーメンがすっかり伸びてしまいそうですから。」

「ラ…ラーメン…?」


初めて聞く食べ物の名前に、親衛隊たちがごくりと唾を飲み込み、鍋の方を見つめた。


「わ…私が行って、一度食べてみる。」

「オーロラ…!」


オーロラと呼ばれた親衛隊の女性は、頭にかぶっていた兜を脱いだ。

二つに結んだ長い髪と共に、幼い顔が外に現れた。

力強い瞳で鍋に向かって視線を向けたオーロラは、ずんずんと食卓へ歩いて行った。


「(おそらく、この木の枝が食器だろうな…?)」


そう言って、木の枝を二本掴んだ。


「(これ…何だ…?)」


緊張したオーロラは、鍋の中を見て眉をひそめた。

内部にあるのは麺料理だった。

しかし、貴族たちがよく食べるラザニアでもなく、トリアでもなかった。

赤いスープの中に浸された、ちぢれた長い麺。

そして、麺と共に入っているのは、白い長い野菜。

頭の方には、黄色い頭のようなものが見えた。


「(豆か…?)」


唾をごくりと飲み込みながら、木の枝を鍋に持っていったオーロラ。

しかし、木の枝で掬おうとしても、うまく掬えない。


何とか掬おうとしても、木の枝二本では、いくら手を動かしても、うまく掬うことができず、彼女は眉をひそめたまま歯を食いしばり、続けて試みた。


「フォークもありますが…フォークをお持ちしますか?」

「そ…それは…」


オーロラがフォークを受け取ると、恥ずかしくて屈辱的なように顔を背けたまま、拳を固く握り、涙ぐんだ表情を浮かべた。


木の枝とは違い、フォークは木ではなく鉄でできていた。

フォークを使うと、ようやく掬えた麺。

彼女はフォークでラーメンを器に盛り付けた後、鍋にあったおたまでスープを少し入れ、器を眺めた。

今まで感じたことのない香辛料の匂い。

今までは辛い匂いに隠れて、きちんと嗅げなかったが、その中にはニンニクが入っているようだった。


「(毒が入っているんじゃないか…?)」


深呼吸をして緊張した表情で、フォークで麺を持ち上げて口に入れるオーロラ。


その様子を、他の親衛隊が息を殺して見守った。

そして、しばらくして。


「く…くあああああ!」


オーロラの悲鳴が、小屋の中に響き渡った。


「お前、食べ物に一体何をしたんだ?!」


慌てた親衛隊が剣を向け、今にも斬りかかりそうな勢いで近づいてきた。

しかし、続いて口を開いたオーロラの言葉に、親衛隊は呆然とした表情でオーロラを見つめた。


「み…みずううううう!」

「しまった…少し辛すぎたか…?」


彼女の言葉に、異界人が失敗したというような表情を浮かべ、後ろを向いてドアのついた四角い箱に近づくと、ドアを開けて中から瓶を一つ取り出し、かなり大きなカップに茶色の水を注いでくれた。


「これを飲んでください。」


その水を受け取ったオーロラは、そのまま水を一気に飲み干し、舌を出したまま涙ぐんだ。


「こ…これ、どうしてこんなに辛いの?」

「か…辛くて叫んだのか…?」

「うん…すごく辛い。これ、一体何の料理ですか?」

「これはラーメン…」

「どうした?!」


カルパエダ王女を呼びに行った親衛隊が、手に剣を握ったまま駆け込んできた。

しかし、すぐに小屋の中の雰囲気を見て、冷や汗を流しながら当惑した。


「これ…一体どういうことだ…?何があったんだ?」

「いや、そうじゃなくて…」

「オーロラが食べ物を食べて、辛くて叫んだんだ…」

「あ…?」


理解できないというように眉をひそめ、首をかしげる親衛隊。

そして、しばらくして後ろからジェルノータの領主とカルパエダ王女がドアの前に立ち、異界人を見つめた。

ジェルノータの領主は彼を見て、ため息交じりの笑みを浮かべた。


「お前の家で会うのは、初めてか?」

「そうですね。領主様にお会いしたのは、城でしたから。」


そう言ったジェルノータの領主は、隣にいる王女に頭を下げて話した。


「この者が、まさに私が申し上げた異界人、『優司』でございます。」

「ユウジ…」


カルパエダ王女が目をわずかに閉じ、彼を見つめた。

姿は、他の人々と変わらない。

顔は、今まで彼女が見てきた人々と違って少し異質だったが、不快な方ではなかった。

むしろ、その特異な感じが彼をより特別に見せているようだった。

身体はかなり鍛えられているのか、あちこちに細かな筋肉が見えた。


彼女は、ずんずんと中に入ってきて食卓を眺めた。


「先ほどの悲鳴は、この食べ物のせいか?」

「え…はい!王女様!それが…少し、辛すぎて…」


オーロラが気まずそうに笑う。


「そうか…」


優司は彼女を見つめ、気まずそうに笑って言った。


「ひとまず、お座りください。私もまだ食事前なので、王女様がいらっしゃったら一緒に食べようと準備しておきました。」


彼女は小さく感嘆して尋ねた。


「こんな粗末な食事に、王女である私を招待するとは…恐ろしくなかったのか?」

「粗末ではありますが、私が作れる料理の中で、比較的美味しいと言えるのはこれだけですので。」


そう言うと、王女は何も答えずに食卓へ歩いて行き、座った。


「他の方々も、どうぞお座りください。一緒に食べましょう。」


その言葉に、ジェルノータの領主を含む他の人々も、食卓を囲んで座った。


***


### 第72話


髪の中心部から毛先に向かってグラデーションをかけるように赤色に変わり、まるで赤く燃え盛るような赤色の髪。

恐怖や恐れを知らないような、強靭な目と口。


男として生まれていれば、豪傑と呼ばれたであろう女性が、食卓に座ったまま鍋を眺めている。


「こんな粗末な食事に、王女である私を招待するとは…恐ろしくなかったのか?」


粗末な食事ではあった。

他に何も無く、ラーメンが入った鍋だけをぽんと置いただけだから。

おそらく、普通の人間がただ鍋だけをこうして置いて、王女に食べろと言ったら、王女に首から飛ばされただろう。

おそらく彼女は、この食べ物が他の食べ物とは違うだろうと思って座ったはず。


しかし、確かにラーメンはこの世界の食べ物とは完全に違う。

頭の良い科学者たちが一堂に会し、健康だけでなく味まで考えて作った「製品」だから。

完璧な料理も同然だ。


「これは何だ?」

「それは、箸です。」

「箸…」


彼女は箸をあちこちと見て、不思議そうな表情で俺に尋ねる。


「これは、どうやって使うんだ?」


俺は鍋にあったトングで麺を、おたまでスープを皿に盛り付けた後、箸を持ってラーメンを掴んだ。


「こうやって使います。」


箸というものは、幼い頃から使えば簡単に使えるが、歳をとってから初めて使うと、かなり難しい。

外見は、ようやく10代後半から20代前半に見える顔なので、彼女も箸を使うのは難しいはず。


「使いにくければ、フォークをお持ちしましょうか?」

「構わん。一度、使ってみよう。」


彼女もトングとおたまでラーメンを器に盛り付けた後、箸を使おうとした。

しかし、掴もうとするたびにラーメンが滑り落ちたり、切れたりして、うまく掴めなかった。


「くっ…」


だんだんイライラし始めたのか、表情を曇らせる王女。

しばらくして、結局、彼女は手に持った木製の箸をポキリと折り、俺に手を差し出した。


「フォーク…くれ…」


俺は気まずそうに笑いながら、彼女にオーロラに渡したのと同じように、フォークを一つ渡した。

それでようやくラーメンを食べられるようになった王女が、音を立てずにラーメンを口に入れた。

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