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第66話

最近工場で働き始めたので、執筆するのが難しくなってしまいました。

それでもできる限り書いてみますので、どうかご理解ください。(;△;)

第66話


貨幣というものは、デジタル時代へと移り変わり、様々な形に変わってきた。

最初は物々交換の代わりとなる貝殻から始まり、時を経て金属へ、紙へ、そしてビットコインやイーサリアムのようなデジタルの仮想通貨へと変わっていった。


しかし、これら全ての貨幣において、一つだけ消えない問題が存在する。

まさに、希少性だ。

金塊と銀塊を見ても分かる。

過去に貨幣として使われていた金塊と銀塊、この二つの違いはまさに鉱物の希少性の違いだ。


金は鉱物が少ないのに対し、銀は金に比べて鉱物が多い。

だからこそ、過去も、今も、金は銀より高価なのだ。


前の時代も同様だ。

貝殻を使っていた時代にも、どんな貝殻でも使っていたわけではない。

殷の時代には、当時貴重でありながら硬かったタカラガイを貨幣として使っていた。


結局、貨幣というものは希少性、つまり数が少なければ希少性が生まれるということだ。


クシャッ。


もし、この貨幣が突然大量に消えたら、モルモスはどうするだろうか。

当然、他の人々に渡す貨幣がないので、より多くの量の貨幣を製造するはず。

つまり、俺の目の前にあるこの数十箱に積まれた貨幣の空席を埋めるために、より多くの貨幣を発行するということだ。


俺は再びその貨幣を集める。

集めて、集めて、また集めて、適当な時に一度に換金を試みる。

それも、一人が全て換金するのではなく、フクラ商人ギルドの人々と共に大挙して押し寄せるのだ。


そして、人々を扇動する。

「モルモス国家商業ギルドでは、換金してもらえないかもしれない」と。


三人の法則というものがある。


一人が空を指差せば、狂人だと思う。

その隣にいる人が彼に倣って同じように空を指差しても、同じく狂人だと思う。

しかし、三人が指差せば、周りの人々は本当にあの空に何かあるのかと思い、彼らが指差した空へと視線を向ける。


三人でも人を扇動できるということだ。

だとしたら、大量に換金する人々が全員換金できないという話を聞いて来た人々なら?


貨幣を持っている人々は不安に駆られて全員換金しに来るだろうし、その換金量は現在モルモスの商店内にある金額をはるかに超えるだろう。


もちろん、他の都市や村の支店から金を持ってくれば大丈夫だろうが、この知らせがその他の都市や村に広まれば、その都市や村にいる人々も不安な気持ちになり、自分たちも貨幣を換金するはず。


一箇所だけが破綻するのではなく、全都市で全体的に破綻するのだ。

そうなれば、一箇所を塞いでも他の場所は塞げなくなる。


これが、まさにバンクランだ。


「今日の分を持ってきました。」


マルノフギルドの商人たちが、倉庫の中にいくつかの箱を持って入ってくる。

中に入っているのは、全てモルモス国家商業ギルドの貨幣。


「本当に、こんなに集めたのね~?」


倉庫の中にエキドナさんとエテラさんが入ってくる。

エキドナさんの目には興味が、エテラの目には驚きが見て取れる。


「本当にこれで、うまくいくんですか…?」

「理解されたのではなかったのですか?」

「そりゃ、理解はしたけど…それが、そのバンクランとかいう理論通りにいくか、いかないかは分からないじゃない?」

「おそらく、うまくいくでしょう。人の感情というものは、簡単には抑えられないものですから。」


俺の目標は、あくまでモルモス国家商業ギルドをこの都市から追い出すことだ。

もしモルモス国家商業ギルドがバンクランを成功裏に防いだとしても、この都市一つだけはもはや正常に機能せず、やむを得ず撤退することになるはず。

もしそうならなくても、必ず追い出してやる。


最初はただヨーデンさんに農業を学びたかっただけだった。

しかし、時が経つにつれて多くの人々が関わり、結局この仕事のためにハルまで失った。

結局、ハルの死を無駄にしないためには、この仕事を完璧に終わらせなければならない。


「優司さん。」

「はい?」


エテラさんが俺の方へ歩いてきて、俺に尋ねる。


「私たちマルノフ商人ギルドに入って、働いてみる気はありませんか?」


あれほど望んで、望んでいたこの一言。

元の世界の俺なら、あんな会社はすぐに辞めてここに移っただろう。

しかし、今の俺は違う。


疲れた。

この仕事さえきちんと終われば、もう俺を邪魔する者はいなくなる。

そうなれば、ハルに言った通り、旅に出るつもりだ。


VIP 2等級になって解放されたキャンピングカーと共に。

一箇所に留まらず、色々な場所を巡りながら食べ物も味わい、観光地も見て回るつもりだ。

もちろん、この世界に観光地があるかは分からないが…


「申し訳ありません。」


その言葉に、エテラさんが深いため息をつく。


「やはり…」

「ええ~?そんなこと言わないで入ってよ~!私たちが厚遇してあげるから!」


エキドナさんが俺の腕に腕を組みながら言う。


「後で機会があれば、そうします。」

「エテラがこうして直接スカウトするのは、滅多にない機会なんだからね~」


俺が気まずそうに笑うだけなので、エキドナさんも結局ため息をついて組んでいた腕を解いた。


「本人が嫌だと言うなら、仕方ないわね…」

「おい、優司。中にいるか?」


倉庫のドアが開き、中に入ってきたもう一人の人物。

ギリアムさんだ。


「げっ。」

「なんだ、こいつらもここにいたのか。」

「ギリアムさん。いくらジェルノータで競争する仲だとしても、競争相手のマスターに『こいつ』と呼ぶのは、良くないと思いますが。」


エテラさんの言葉に、ギリアムさんが鼻で笑う。


「では、競争相手にいちいち敬語を使えとでも言うのか?はっ!俺はそんな性格じゃないから無理だな。」


エテラさんが舌打ちをする。

二人の仲を見て、エキドナさんが慌てて言う。


「さあ、これで関係者が全員集まりましたから、会議を始めましょうか?!優司さん!これからどうすればいいのか、話してください!」


エキドナさんの言葉に、二人の視線が俺へと向かう。


「分かりました。今からどうするか、申し上げます。」


今までは、全て準備過程だったに過ぎない。

重要なのは、これからだ。


もう、絶対に失敗してはならない。


***


モルモス国家商業ギルド。

ネルガンティア内部に数多くの支店が存在する、大規模な国家主導の商業ギルドだ。

国家という名がついているだけに、数多くの民がモルモスを信じており、信用面ではどのギルドにも引けを取らなかった。

しかし、それは今までの話。


今日、モルモス国家商業ギルドには、大きな変革が起こることになる。


「く…くそっ…!」


商人たちは、どういうことなのか理解できなかった。

今までモルモスの商店内では、貴族を対象に商売をしてきた。

なのに、どこから来たのかも分からない人々が、突然モルモスの商店内部に押し寄せてきた。

手には、モルモスの商店内で使う貨幣であるモルモス紙幣を持って。


「早く換金してくれ、早く!」


換金所の職員たちは、素早くモルモス紙幣を換金していたが、いくら人々を換金しても、換金所の中に人々が絶えず入ってきた。


「早くブロンの箱を持ってこい、早く!」


モルモスの商店の金庫から、絶えず出てくるブロン硬貨の箱たち。

しかし、そのブロン硬貨の箱は瞬く間になくなり、金庫の中に積まれていた資金は瞬く間になくなった。


「支店長、どうしますか?!」

「どうするも何もないだろう?!とりあえず残った金で全員換金して、人々を追い出してドアを閉めろ!そして、ネルガンタにいるマスターに人を送って支援を要請しろ!」

「は…はい!」


職員たちは、換金所の中に押し寄せた人々を全員外に追い出した後、ドアに鍵をかけた。

朝から精神がなかった職員たちは、皆、魂が抜けたような表情でじっと座っていた。


「一体、これはどういう状況なんだ?!調べた者はいるか?!」

「そ…それが…」


一人の職員が手を挙げて立ち上がり、口を開いた。


「どうやら、人々の間でモルモス紙幣が換金してもらえないかもしれないという噂が広まっているようです…」

「どういうことだ?換金してもらえないかもしれないという噂が広まっているだと?」

「私も、詳しくは分かりません…」


理解できなかった。

今まで一度も換金しなかったことはなかった。

なのに、その噂が一体どこから始まって広まっていたというのか。


「お前たちの中に、そんな話を他の奴にした者はいるか?!」

「そ…そんなはずが?!」

「私たちは一度も、換金所であった話を口外したことはありません!」

「そもそも、そんな話が換金所内で出たこともありません!」


支店長は頭が痛くて、額に手を当てた。


「とりあえず、この知らせは絶対に他の都市へ伝わってはならん!」

「しかし…広場市場で噂が広まっているということは、すでにジェルノータの中には広まるだけ広まったということでは…?」


支店長は椅子にどさりと座り、頭を抱えた。


「一体、どこのどいつだ…どこのどいつが、こんな馬鹿げたデマを流してるんだ…?フクラか?それともマルノフ…?」


ジュセフはモルモスの付属ギルドも同然の奴らだから、そんなはずはなかった。

だとしたら、残るはフクラとマルノフ。

そうでなければ、両方かもしれない。

いずれにせよ、これはかなり良くない状況。


「おい、今すぐジュセフに行って、資金支援を頼んでこい。」

「は…はい!」


勢いよく立ち上がった職員が、すぐに外へ出るためにドアを開けた。

その瞬間、外にいる数多くの人々から罵声が浴びせられる。

職員はすぐにドアを閉め、窓を眺めた。


「あ…こちらから行ってまいります…」

「ああ、気をつけろ。」

「はい…」


窓を開けて下を見下ろした職員は、唾をごくりと飲み込み、窓の外へと身を投げた。


「うわぁぁっ!」


一瞬の短い悲鳴と共に、ドンという音が聞こえ、しばらくして、足を引きずりながら遠ざかっていく足音が聞こえた。

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