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第42話

第42話


元の世界にも洞窟は多い。

アメリカのメマー洞窟や、オーストラリアのジェノラン洞窟など。

韓国にも高垂洞窟や画岩洞窟、万丈窟など、様々な洞窟がある。


この世界も土地がある以上、洞窟はあるはずだ。


「(まあ、どうせ洞窟と言っても、少し暗いだけだろう)」


そうとしか考えていなかった。

手に懐中電灯を一つ持ち、隣にハルを連れていれば、たやすく洞窟の中を進んでいけるだろうと思っていた。

何よりも、俺の隣には冒険者たち(Eランクではあるが)もいるし、レベッカさんもいるのだから。

もちろん、誰かに守ってもらうだけでなく、俺にも武器はある。

機械式の石弓と拳銃、ライフルまで。

他の人の助けよりも、お互い一発で終わるこの銃器の方が頼もしかった。


しかし、これはあまりにも傲慢な判断だった。


「これが…洞窟…?」


高さ50メートル、幅30メートルはありそうな巨大な洞窟の入り口が見える。

そして、その前には鎧を着た警備員二人がこくりこくりと居眠りをしているだけで、誰も見当たらない。


「わあ…さすがは討伐令だな。」

「そうだよな…元々はこんなに人がいない場所じゃないのに…」


一人も見えないのが不自然なのか、カイルとターニャが不思議そうに周りを見回している。

しかし、断言するが、この二人がいくら周りを見回しても、俺が見回すよりは少ないだろう。


「これ…本当に洞窟なのか…?」


誰が見ても洞窟だと確信できる洞窟の入り口。

しかし、俺がこう言ったのには理由がある。


まさに洞窟の縁が、まるでナイフで切ったかのようにきれいに切られていること。

崖の壁面が豆腐でもあるまいし、元の世界でも壁面をきれいに切るのは、いくらチェーンソーや掘削機を使っても難しい。

さらに、中央には何のモンスターか分からない顔が彫刻された銅像を始め、両側には長いフェンスが張られている。

こんな様子を見れば、当然誰かが人為的に作ったものだと思うだろうし、自然にできた洞窟だとは考えないはずだ。


フェンスが張られた理由は、おそらく中でモンスターが出てこられないようにするためだと思うが…

そもそも、俺の背丈より少し高い程度のフェンスで、中にいるモンスターが出てくるのを防げるのだろうか。


「あそこか?」


洞窟を通れる場所は一箇所。

まさに銅像と銅像の間。

ここだけが、ちょうど入れるようになっている。

そして、その銅像の間を守る警備員たち。


グー、グー。


入り口に近づくと、両側からいびきの音が響き渡る。

そして、ダンジョンの内部から甘い匂いがする。

砂糖やサトウキビ、あるいはドーナツや甘いチョコレートのような、そんな食べ物の匂いではなく、人工的な香水でしか嗅いだことのないような甘い匂いが。


「よし、寝てるな。」


カイルがにやりと笑い、寝ている警備員たちを見つめる。


「え…起こすべきか?」

「いや、起こすな。」


いくらなんでも、入る時は起こすべきではないのだろうか。

そう思う俺を見つめ、ターニャが笑う。


「起こしたら、お金を払わなくちゃいけないんですよ。」

「金?入場料まで取るのか?」

「ええ、当然でしょう!世の中にタダなんてどこにあるんですか?」


ああ、この話。

元の世界でもいつも聞いていた話だ。

その法則が、異世界でも通用するとは。


「はぁ…」


どの世界も、金があるところは同じようなものだな。


「じゃあ、静かに…」


そうしてターニャとカイル、レベッカさんが順番に入っていき、アニエスさんが俺を見つめる。

おそらく、俺が先に入るのを待っているようだが、俺はマナーのある紳士。


「お先にどうぞ。」


中世騎士の精神、レディーファーストを見せる。

怖いからというわけでは決してない。

怖いからというわけでは…


「あ、はい…」


アニエスさんが、できるだけ静かに中に入っていく。さて、残されたのは俺とハル。

俺は大丈夫だが…


ワンッ!


「シーッ!」


どうやらハルが心配だ。

ハルは俺と一緒にいる時、よく尻尾を振る。

今も尻尾が扇風機の羽根が回るように、素早く動いている。

しかし、入る途中で尻尾があの警備員を叩いて起こしでもしたら?


「ふむ…」


やはり、方法は一つしかないか。


「ハル。」


俺が呼ぶと、ハルが地面に寝転がり、体をひっくり返して腹を天に向ける。


「撫でてほしい時は、大体こんな声だけど、いくらなんでもこの場で腹を見せるのは違うだろう。」


ハルが舌を出して、俺をじっと見つめる。

腹を何度かさすり、ハルの背中に力を入れて持ち上げ、再び立たせた。

大きくなった分、重さも相当なものだ。


「ハル、静かに入るんだぞ。」


ワンッ!


「シーッ!静かに入れって言ってるだろ!」


ワンッ!


「静かに…」


ワンッ!


「もういい、分かった。」


俺がどうかしてた。犬に静かにしろと言って、聞き分けるわけがない。

俺のせいだ、俺のせい。


「あそこ見ろ?あそこに行くんだ。分かったか?」


ハルが向こう側から中に入っていく四人を見つめる。


「静かに行かないとダメだぞ。すごく静かに。分かったか?」


ワンッ!


本当に聞き分けたのだろうか。

いや、犬が訓練もしていない人の言うことを聞き分けるわけが…


「はぁ…」


ハルがそのまま走り出す。

四方に響き渡る犬の足音。

さらに巨大な犬が、寝ている二人の警備員を押し退けて中に入っていく。


「うわっ!」

「な…なんだ?!」


当惑した警備員たちが、ぱっと立ち上がり、目をこすって洞窟の中へと走っていくハルを見つめる。


「な…なんだ?」

「モンスターか?」

「それが…」


中に入ったハルに視線が引きつけられていた二人の警備員が、俺を見つめる。


「あんた、なんだ?ダンジョンに入るのか?」

「はい…そうですね?」

「なら、金を出せ。」


警備員が悪意に満ちた笑みを浮かべ、俺を見つめる。


「は…はは…」


他の人々は無料で入ったのに、俺一人だけ金を払わなければならないとは…

本当に、運の良い日だ、全く。


***


カチッ。


インベントリから懐中電灯を取り出し、周りを見渡した。

入り口の近くは、空気と触れているからだろうか。

よくある石筍から水滴が落ちるような音は、聞こえも、見えもしない。

ただ、問題があるとすれば…


「うっ!」


入り口から甘い匂いを嗅いではいた。

しかし、ダンジョンに入ってからは、その甘い匂いがかなり濃くなり、今では俺の鼻の中にまで入り込んで、脳を蹂躙する。


ガスマスクをつけた方がいいだろうか。

真剣に悩んでいる俺に、カイルが近づいてきて何かを渡してくる。


「何してたんだ、今頃来て。」

「外でちょっと用事があってな。」


カイルが渡してくれた物を、懐中電灯で照らして見た。

平たくて丸い形をした容器。

軽く回してそれを開けると、中に緑色の半固形物が見える。


「これは何だ?」

「それを鼻の下に塗れ。」


カイルの言う通り、それを鼻の下に塗った。

その瞬間。


「うぅぅっ!」


濃いミントの香りが、ハンマーで頭を殴られたかのように、ジーンと響き渡る。


「鼻が慣れてきたら、一度ずつ塗れ。そうしないと、フェロモンに中毒になって、おかしくなるかもしれないから。」

「フェロモン?」

「洞窟の中に広がっている、甘い匂いのことだよ。」

「今まで嗅いでいた甘い匂いが、クイーンアントのフェロモンだって言うのか?」

「そうだよ。」


カイルが槍を握り直し、周りを見回す。


「元々はここまで強くはないんだけどな…やっぱり交尾期は交尾期だな。」


動物は基本的にフェロモンを持っている。

それが犬であれ、猫であれ、猿であれ、昆虫であれ。

さらに人間までフェロモンを持っている。


そのフェロモンは、繁殖期になると強くなる傾向がある。

しかし、フェロモンというものが、この広い洞窟全体に広がっているということは…


「(どれくらい大きいんだ?)」


クイーンアントの大きさを推測するのが難しい。

もちろん、この匂いが他のアリが出すフェロモンまで混じって、さらに濃くなっているのかもしれないが、そう考えても、この濃い匂いは理解できない。


「兄さんは後ろで道に迷わないように、俺たちについてきてくれ。」

「あ、ああ。」


百聞は一見に如かずと言うが、ここでいくら考えても、見ない限りは分からない。

どうせ兵隊アリや働きアリを見れば、大きさが分かるだろう。


「(とりあえず、いつどこから出てくるか分からないから、準備しておこう)」


インベントリに入っている石弓と拳銃を交互に見て、どちらを出すか悩んでいた俺は、石弓を取り出した。


拳銃が楽ではあるが、音が大きすぎる。

一匹を倒すために、数百匹を呼び寄せるわけにはいかないので、ひとまずは石弓を使うしかない。


***


静かな洞窟の中に、五人と犬一匹の足音が響き渡る。

彼らの手には、皆、俺が渡した懐中電灯が握られている。


「不思議だな…」


電気から放たれる光が不思議なのか、ターニャはあちこちと懐中電灯を照らして見る。

この世界にはない物だから、不思議に思うのだろう。


「どうしてこんなに強い光が出るんだろう?」


入る時にランプを持って入ってきたアニエスさんは、懐中電灯を持ち上げて光る電球を見つめようとして、そのまま目に光を浴び、眉をひそめて目をこする。


「こんな物は、どこで手に入れるんですか?」

「手に入れられる場所は、いくらでもあるさ。」

「どこですか?私も教えてください!」

「ダメだ。」


明るく笑いながら俺の隣に近づいてきたターニャが、ダメだという言葉を聞くと、頬を膨らませて鼻を鳴らす。


「ふん、結構です。私もこんな物、必要ありませんから!」

「そうか?この仕事がうまく終わったら、プレゼントしようと思ったのに。あげる必要はないな~」


その言葉に、一瞬当惑したターニャが、懐中電灯をじっと見つめ、やがてぎゅっと握りしめる。


「そ…それでも、ないよりは…」

「そうだろう?」


ランタンよりはずっと良いのだから、冒険者の身の上では、かなり良い物も同然だ。

もちろん、だからといってランタンが必要ないというわけではない。

ランタンが照らす範囲と、懐中電灯が照らす範囲は、厳然と違うから。

おそらく冒険者たちは、ランタンは腰に下げて周りを照らし、懐中電灯は前を照らすという形で使われる可能性が高い。


「他の物もあるんですか?」

「当然あるさ。」

「見せてください!」


見せてくれとは言うが、こんなに暗い場所で懐中電灯だけを頼りに行っているのに、物を見せて視線を引くのは、少し違うような気がするのだが…


「シーッ!」

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