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シルフィーは悪役令嬢ですが、何故か溺愛されてます  作者: ちぇしゃ
第4章

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085、なんだか甘やかされている気がします


 『森のうさぎカフェ』は大繁盛のまま、私は休憩を迎えました。忙しかったよ…。でも、すっごく楽しかった!本当はもう少し残ってお手伝いをしようと思ったのだけれど、クラスの人が休憩行っておいでって言ってくれたので休憩に入ります。

 今はアル様と一緒に他のクラスを見て回るところです。え、あの後?ちゃんとアル様の事は許してあげましたよ?ムースも美味しく召し上がってくれました。それだけで十分です。

 本当はソフィアとリシューも一緒に見て回ろうと誘ったんだけど、


「「邪魔はしたくないから」」


 といって断られてしまいました。ショックです。





 私は『森のうさぎカフェ』のうさぎメイドの格好で歩き回っています。何でも「宣伝してきて」だそうです。周りから見られて少し恥ずかしい。でも宣伝だからね!話しかけられたらちゃんと『森のうさぎカフェ』のご案内しますよ!……アル様が!

 さっきから、せっかくいろんな人が話しかけてくれているのに、何故かアル様が対応しちゃうんです…。まあ、『森のうさぎカフェ』の場所を教えてくれているから問題は無いのだけれど。


「はい」


 アル様はそう言って私に手を差し出してくる。えっと?もしかして金銭要求?案内したから対価を払え?ま、まさかアル様に限って…、


「?」

「迷子になったらいけないでしょう?」

「?!」

 

 ま、迷子?!


「なりませんよ?!私、ここの生徒ですよ?!」


 迷ったら知っている場所にちゃんと行きますよ…、というか、迷いませんよ!


「じゃあ、私が手を繋いでいたいから」


 最初からそう言ってくれればいいですよ!


「私だってアル様と手を繋ぎたいんですから」


 アル様が差し出してくれていた手をぎゅっと握る。


「最初はどこに行きましょうか?アル様、気になる所ありますか?」


 私が持っていたパンフレットを覗き込んでいるアル様に聞く。


「うーん、取り敢えず、うろうろしてみようか?」

「はい!」


 正直その方が嬉しいです。だって、私はこれでも生徒会メンバーだから見回りもしないといけないからね。一人で見回りは正直不安だったけれど、アル様と一緒に回るなら安心。多分、アル様もそれを分かっているから、うろうろする事を提案してくれていたんだろうね。流石、元生徒会メンバーのアル様。


「最初は園庭に行ってみたいかな。歩いてたらお昼の時間を過ぎているだろうから、出店も空くと思うしね」

「あ、そうですね。じゃあ、それから一緒にお昼を食べましょう?」

「そうしよう」


 園庭って、確か王都のお店が出展してるんだよね?食べ物屋さんとか、雑貨屋さんとか、園芸店とかが来るって。あと、画家さんも来てくれるみたい。


 でも、私はどのお店が来るか詳しく知らない。もしかしたら、私の知っているお店が来ているかもしれないね。私は王都のお店にいろいろお邪魔しているから。





 園庭に到着すると、びっくりするくらいにぎわってました。お店、いくつくらいあるんだろう?イメージとしては前世のお祭りの屋台。……が沢山ある感じ。どうやって準備したんだろう?って疑問に思うくらいだよ。でも、やっぱり食べ物屋さんが圧倒的に多い。


「アル様、あっちにサンドイッチ屋さんがありますよ!あ、こっちには、」


 私がはやし立てるとアル様は私に頭にぽんと手をおいた。


「シルフィー、落ち着こうか」

「はーい」


 そっか。ここは学校だもんね。いつもの調子ではしゃぐ訳にはいかない。おしとやかに。令嬢ぽく。……もう手遅れかもしれないけれど。


「あ!」

「ん?」


 あの人は!


「おじさん!」


 私が叫ぶとアル様も気付いた様子で「あ、本当だ」と言っている。早速令嬢らしさがどこかに行ってしまいました。

 そう、私にとってのおじさんはただ一人!るぅを売っているあのお店のおじさんです!


「やあ。こんにちは」

「こんにちは!」


 あ、そうだ。このお洋服っておじさんのお店が請け負ってくれたんだよね。るぅのお洋服。わざわざ新しくデザインする事を許可してくれたって聞いた。皆と一緒がいいって言う私の我儘をかなえてくれた。


「素敵なお洋服をありがとうございました!」


 今着ていて良かった。スカートの裾をちょこんとつまんでくるっと回ってみる。


「とっても良く似合っておるよ。用意した甲斐があったというものだ。デザインしたあの子もお嬢さんの事をよく分かっているね」


 おじさんが優しそうに笑う。…実際優しいんだけどね。


「おじさんも出展していたんですね!」

「呼ばれたからね。こんなに名誉なことはないから是非にと思ってね」


 そっか、ナイア学園に出店するのって名誉な事なんだもんね。全てのお店が来れる訳じゃないからね。出展している事で貴族の目に止まる事もあるし、贔屓にして貰えることもあるからね。


「何か買っていくかい?いつものうさぎの新しい商品も出ているよ」

「はい、買います!」


 えーっと、新しい商品なんだろう?


「あ、髪留め!」


 るぅの商品はピンクのふわふわの生地が使われている。という事は勿論この髪留めにも使われている。


「かわいい…」


 ベースがふわふわで、そこに白のレースとかリボンとかも使われていて、何より可愛いのが、苺の飾りがついているという事。


 これは勿論買うしかないよね!

 私の部屋にはるぅグッズが溢れかえっている。15歳になっても子どもっぽいかなって思うけれど、可愛いものは可愛いんだもん。趣味をやめるなんてできない。アル様だって 家族だって皆受け入れてくれているもん。


 お財布………、あれ?


「お財布が無い…?」


 え、どこかで落としたっけ?でも、今日どこでも出していないし、使ってないし…。


「あ、……」


 そうだ。お財布は制服のポケットに入れたままだった……。今は接客をした時のうさぎの衣装のままだから持ってくるの忘れちゃった……。どうしよう、お金、持ってない……。


 でも欲しい。……欲しい。


 諦めきれない。


 こうなったら。


「アル様、買って?」


 毎度言いますが、おねだりの方法は心得ています。アル様の服をちょこんとつまんで上目遣い。

 でも、お金が絡んでいる時にはあんまりやりたくないんだよね…。何だかダメな人になっているみたい。あとで返しますから……。


「ふふ。勿論、最初からそのつもりだよ」

「!」


 最初から買ってくれるつもりだったのですか?それは、喜んでいいのでしょうか?私をダメ人間にしている一人は間違いなくアル様ですね。


 でも、遠慮はしません!


「ありがとうございます!」


 アル様に買ってもらった髪留めをつけてもらう。


「似合ってますか?」


 着ている洋服も髪留めもるぅのだから、洋服と髪留めはマッチしているはず。くるっと回ってアル様を見る。


 でも、アル様は片手で口元を覆ったまま「かわ…、とうと…」とぼそぼそ言っている。


「?」


 感想が無い…?


「アル様?」

「んん゛っ!」


 疑問に思ってアル様を覗き込むけれど、何故か咳ばらいをして顔をそむけてしまった。でも、最終的には私を見て「可愛すぎて怖い」っていう謎な返答を頂きました。


 でも可愛いって褒められたからいいのかな?





 あ、あっちにクレープ屋さんがある!お姉さんが美しい笑顔で私を誘っている!こ、これは行くしかない!


「アル様、クレープ食べましょ?」

「クレープか、いいね。行こう」

「はい」


 なんのクレープにしようかな。あ、野菜クレープもあるみたい。これをお昼代わりにしてもいいかも。


「お昼ここで食べちゃおうか」

「!」


 流石アル様。私の心の中をのぞいていますね。


「そうしましょう!」


 自分が好きなものをトッピングしていいみたい。何にしようかなぁ。


 つな、れたす、ぽてとさらだ、ちゃーはん、あぼがど、たまご、はむ、きゅうり、ほうれんそう、アスパラガス………、


「こ、困る…」


 これだけ種類あったら逆にどうやって選んだらいいか分からない。


「アル様は何にしますか?」

「うーん、シルフィーが選ばなかったものを選ぼうかな?そうすれば沢山の種類を食べれるでしょう?」

「あるさま、好き!」


 なんて素敵な提案をしてくれたんだ!でも、今思い出せば、アル様はいつもお店で食べる時、私と違うものを注文していた。そして、いつも「あーん」をしてくれていた。な、なんて素敵な紳士なんだ…!さりげない気遣いが凄すぎる!


 二人でそれぞれ違うものを選んで注文したクレープは本当に美味しそう。両手で抱えて食ベる大きさなので幸せいっぱい。





「シルフィー、あっちに飲み物屋さんがあるけど行く?」

「はぐはぐ」


 クレープうまうま。


「シルフィー、こっちにハンカチを売っているみたいだけど……、」

「むぐむぐ」


 生地ふわふわ。レタスしゃきしゃき。


「シルフィー、そっちに………、」

「もぐもぐ」


 うまうま。ふわふわ。しゃきしゃき。


「シルフィー、いったん座ろうか」

「むぐむぐ、ふぁーい」


 私に食べ歩きは早かったです。クレープの食べ歩きは少し難しい。何だか焦ってお口いっぱいに詰め込んじゃう。リスさんみたいにほっぺが膨らんでる。あ、今ほっぺつぶしたらダメだよ?中身出ちゃう。ふりじゃないよ?本当に押さないでね。

 あ、アル様が頼んだクレープもとってもうまうまでした。




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