083、『森のうさぎカフェ』開店です
「皆、用意は出来た?」
「「「はーい!」」」
いよいよ、『森のうさぎカフェ』の始まりです。お客さん、沢山来てくれると嬉しいね。猫さん達が集まって準備をしている姿は何だか可愛い。一人だけうさぎだとかそういう突っ込みは今いりません。
ケーキとかは、朝早く来てくれていた料理担当の人達がある程度は作ってくれている。後は注文の状況を見ながら足りないものを焼いていくようにしている。私は当日はホールで注文とったり、料理を運んだりする担当だから、料理はしない。…料理を落とさないように運ばないとね。そこだけが心配。
「取り敢えず、もうお客さんが来る頃だと思うから、各自持ち場について、後は打合せ通り頑張ろう!」
初めての学園祭。今世じゃなくて前世でも一度は体験してみたかった事。私はこの世界に転生出来てとても幸せ。家族だって出来たし、婚約者も出来た。友達だって沢山出来たし、大切な人にも会えた。こんなに幸せな事はない。それに、前世より長生き出来ている。怖いことがあっても、とても幸せ。ずっと、この幸せが続くと嬉しい。来世でも続いてくれるといいな。
「ふわぁ、緊張するね」
「そう?」
あ、緊張しているの私だけ…?ソフィアはケロッとしているもん。カフェをしているクラスはいくつかあるけど、どこもコンセプトは全く違うから、こっちにも来てくれるといいな。リシューとソフィアは『シルフィー様を見守り隊』の人は絶対来てくれるって言ってたけど、皆それぞれのクラスがあるからどうだろう?
何だか今回、午後にシフトをとろうとする人達がどのクラスも多かったみたいだけど、なんでだろうね?私は午後は生徒会の出し物だから忙しいけどね!
お客様が来てくれるか心配!
なんて心配していた時期が懐かしいです。
猫の手を借りたいってこういう事を言うんだね。
「あっちの机にこれお願いします!」
「あの机空いたから食器回収してください!」
「あの家族お子様連れだから子ども用の椅子を持って行ってあげて!」
なんて皆が走り回っている。勿論お客様の前では落ち着いて優雅ですよ?でも、裏に来た途端、走ったり叫んだり。大変だなぁ。そんな中私が何をしているかというと、
「可愛い!」
「おねーちゃん、うさぎさん?」
「だっこ!」
「さわってもいい?」
子ども達にモテモテであります。全国の保育士の皆さん、心から尊敬します。
私だって、最初はホールで料理を運んだりお手伝いをしていたんですよ?注文も取ってたし、出迎えやお見送りだってしてた。ちゃんと働いてたんですよ?でもね、ふと後ろを見てみると、子ども達がアヒルの行列のように後ろに連なっているじゃありませんか。びっくりしたよね。
目が合った途端、子ども達は目を輝かせて「うさぎさん!」って叫ぶんだもん。子ども達の母親にも微笑ましい目で見られました。あれかな、猫がいっぱいいる中で一人だけうさぎだったから目に入ったんだよね?
それで、気付いたらリシューが簡易版の保育ルームを即席で教室の端っこに作ってくれたので、私と子ども達はそこに放りこまれました。……おかしいよね?保育ルームを作ったんだから、子ども達が、待つためのスペースでしょう?何で私まで入ってるの?子ども達を無下にできないから一緒に遊びますけど。
でも、子ども達、すごく可愛い。思えば、私って自分より下の年齢の子どもとあんまり遊んだことが無いかも。何だかお姉さんになった気分。……はっ!私はお姉さんですよ!だって私は15歳!この世界ではもう子どもじゃない!
誰ですか、「シルフィーがお姉さんぶってる」って言ったの。私はお姉さんですよ。皆と同じ年齢ですよ。子どもじゃないですよ。
「へー、可愛い!」
内装を見たお客さんは皆こういってくれる。その言葉を聞いて嬉しくなる。そして、お菓子を見てそう言ってくれると、より嬉しくなる。皆で頑張ったかいがあったなって嬉しくなる。嬉しくなった皆の笑顔を見るだけで心がほわほわする。
さてさて、子連れのお客さんがいなくなってしまったので、再び接客に戻りますよ。あ、新たなお客さんが来ました。お出迎えです!
「いらっしゃいませ!」
「あら?」
「まあ!」
ん?見覚えがあるお姉様方?
あ!リリーお姉様のお友達のお姉様方!
「お久しぶりです、お姉様!」
「まあ、可愛いうさぎさんのお出迎えね!」
「へへ…」
可愛いっていわれちゃった!あ、そうだ
「リシュー!」
「ん、どうしたの?」
近くにいたリシューに呼びかけると不思議そうな顔をした。でも、お姉様方の顔を見て誰が来たのか分かったみたい。
「あ、お姉様方。お久しぶりです!入学式の日はお世話になりました!」
リシューはそう言いながら私の隣に並ぶ。
「まぁ!リシュハルト様は猫さんなのね!」
「相変わらず、二人ともかわいいわぁ」
そう言ってお姉様方は私とリシューの頭をなでなでする。やっぱり、背は高くなってもリシューは可愛いんだね。流石私の幼馴染。
そして、流石お姉様方、撫で方が完璧です。私のうさ耳カチューシャをつぶさないように上手に撫でてくれる。
「ふにゅう」
気持ちいな。リシューは何だか恥ずかしそうな顔をしている。
「シルフィー、ほわほわしてる場合じゃないよ。席に案内しないと」
あ、そうだった。席に案内しないと。
「お姉様方、こちらへどうぞ!」
「ええ、ありがとう」
席が空いててよかった。私とリシューでお姉様方の椅子を引いて座りやすいようにする。いつもしてもらっている事をするのってなんだか楽しい気がする。
「ご注文はお決まりですか?」
このカフェはこの教室の外にもメニュー表を置いているからメニュー決めてるかな?
「それでは、ガトーショコラをいただこうかしら」
「わたくしはチーズタルトがいいわ」
あ、決めてた!
「飲み物は何にされますか?」
「アイスティーと、ミルクティーをお願いするわ」
「かしこまりました!」
裏方行くと調理スタッフがケーキを焼いている所だった。思ったより売れていて足りなくなってきているからね。
「注文はいりました!」
「「はーい」」
それでも、まだ結構在庫があるみたいで、ケーキはさっと出てくる。朝に早く来て作ってくれていた人達はいったい何人分焼いてくれたんだろうね。多分すっごく大変だっただろうけど、お陰で今、売り切れずにお客さんにケーキを出せる。
「シルフィー」
「あ、ソフィア!」
そっか、ソフィアも調理班を手伝ってるんだね。
「これ、注文のお菓子ね」
ソフィアはそう言って二つのおぼんを渡してきた。私は片手でおぼんを一つずつ持つ。
「あ、待って。シルフィーは絶対零す」
「え?!」
そ、ソフィアが渡してきたのに?
「リシュハルト様、シルフィーのおぼんを一つ持ってあげて」
「うん、わかった」
えー…?
「私持てるよ?」
「やめておきなさい」
「やめておこうか」
………はーい
「お姉様、お待たせしました!」
「お待たせしました」
「「ありがとう」」
私とリシューでお菓子と飲み物を机に置いていく。
「可愛いわ!」
「素敵!」
ふへへ、この言葉が一番うれしい!
「こちらは黒猫かしら?」
「こっちはクッキーの動物が沢山いますわ!」
「はいそうです!森をイメージして作ったんですよ!」
味もすっごく美味しいんだから!
「では頂こうかしら」
「はい!」
お姉様達はケーキを切り分けて口に入れる。可愛い猫さんとかが切り分けられるのは少し悲しいけど是非食べて欲しい。
どきどき
どきどき
おいしいのはわかっているけど、どきどき。
「おいしいわ!」
「ええ、本当に!」
よ、よかったぁ!リシューと二人でほっと息を吐きだす。
「これならお客様は沢山来そうね」
「はい、そうなんです。ありがたい事に沢山来てくださってます」
「ふふ、でしょうね。けれど、私達の方からも宣伝するわ。こんなに美味しいんだもの」
「ありがとうございます!!」
さて、売って売って売りまくりますよー!




