080、森のお菓子が完成しました
「案が出来たから、見て欲しいんだけどいいか?」
今はクラスの出し物を詰めていく段階。それぞれの班に別れて準備をしている。衣装班も内装班も作ったり借りたりし始めている。そして私達売り物班は、ジョシュア君が考えてきてくれたケーキの案を見る所です。
あ、前に言っていたお婆さんのクッキーは無事、注文出来ました。お婆さんに学園祭で売ってもいいか聞きに行くと、笑顔で了承してくれました。何でも、ナイア学園の学園祭は有名らしく、そこに出店となると、すごく名誉のある事みたい。小さなクッキー店だったから、そんなのとは無縁だったみたいだけれど、私達さえ良ければ是非って事だった。良かった。
「これなんだけど…」
皆でジョシュア君がデザインしてくれたケーキを見た。……んだけど、皆の口から一つも言葉が出てこなかった。勿論私の口も開いたまま閉じなかった。
「か…」
「か?」
それでも、思わず口から出た言葉をジョシュア君が不安そうに聞き返す。でも、そんなの気にしていられない。だって、
「可愛い!!」
可愛すぎるんだもん!私の声に同調するように、皆も興奮しながら頷く。
ケーキの種類は、ブッシュドノエル、チーズタルト、ガトーショコラ、苺ムース、抹茶パウンドケーキ、オレンジゼリー。
ブッシュドノエルは木をイメージ。
チーズタルトは上にうさぎと猫とリスの形をしたクッキーを添えて、森の動物が遊んでいるみたいにしている。
ガトーショコラは白のチョコペンで顔を描いて黒猫をイメージ。
苺ムースはウサギ型で作ってウサギをイメージ。
抹茶パウンドケーキは葉脈をチョコペンで描いて葉っぱをイメージ。
オレンジゼリーは子どもが楽しめるように、周りに森で取れる様な果物(苺、ブドウ等)を添えている。
思ったより、テーマに沿った食べ物を考えてきてくれていてクラスのみんなで驚いた。しかも、こんなに可愛いデザインが出てくるなんて!
「ジョシュア君凄い!天才!」
「だな!すげえよ!」
「ええ、本当に可愛いわ!」
皆からも絶賛だね!その騒ぎを聞きつけた委員長やリシューも来たけれど、二人ともジョシュア君の才能に驚いてた。
それで後日、材料を持ち寄って、皆で手分けしてそれを作ってみることになりました!作るのは売り物班の人と、当日の料理班。あと、全体を把握しておきたい人とかリーダーとか。
作るのは、ブッシュドノエル、チーズタルト、ガトーショコラ、苺ムース、抹茶パウンドケーキ、オレンジゼリーの六種類だから、6班に分かれることになった。今回ジョシュア君は全体の監督。うろうろしながら困ったら助けてくれるみたい。でも、ジョシュア君が渡してくれたレシピは簡単で分かりやすいから何とかなりそう。
あ、ケーキの上に乗せる動物の形のクッキーとかは、クッキー屋さんのお婆さんに注文したみたい。会計をするところでもお婆さんのクッキーを売るみたいだけど、実際に食べた方が売り上げに繋がると思うからだって。本当によく考えているよ。
私はリシューやソフィアと一緒にガトーショコラを作る事になりました。何で二人と一緒かというと「子どもにはお守り役が必要でしょ?」って言われたからです。……失礼すぎません?!
リシューやソフィアと一緒の班なのは嬉しいのよ?でも、私料理は割と得意な方なのに!家でよく作ってるから!もう少し、私の意思を聞いてくれてもいいと思いません!?……でも、今回はリシューとソフィアと一緒だからいいかな?
「それじゃあ作るわよ」
「はーい!」
「うん、頑張ろう」
今世ではガトーショコラを作るのはお初。食べるのは全然お初じゃないけどね。ガトーショコラを作るのって腕が疲れるイメージ。だって卵白をふわふわに泡立てるんだよ?ハンドミキサーが恋しい……。今度作ってみようかな、前世の知識を活用して。……あ、ダメだ。私あれの構造分からない。もし、私みたいに転生してきている人いたらお願いします。ハンドミキサーを作って下さい。
「じゃあ、まず、材料計って…」
ソフィアが材料の名称と分量を読み上げてくれるので、リシューと一緒にそれに沿ってぶん量を計っていく。お菓子作りは分量をちゃんと測らないと失敗に繋がるからね。妥協せずにちゃんと測りますよ。
「じゃあ、チョコレートを溶かす人、粉をふるう人と、卵白を泡立てる人で別れた方がいいわね」
「じゃあ、僕卵白を泡立てるよ」
「「おぉ」」
一番大変な作業に一番に手をあげたリシューに思わず拍手を送る。
「僕は何度もやっているからね」
その時、リシューがジーっと私を見てくるので、私はそーっと目をそらします。そうです。私がリシューにさせているんです。
家で私がお菓子を作る時に、何故かそこにリシューがいることが多い。ケーキ好きの共鳴かな?と思ったけど、理由は分からない。でも手伝ってくれるから文句はない。そしていつも卵白を泡立ててくれるからありがたい。リシューは剣の稽古を始めてから、筋肉がついて簡単に卵白を泡立てるようになってきた。羨ましい。その筋肉が私にもあれば…。私は剣を扱う事は出来るけど、何故か筋肉はつかない。悔しい。
「なら私が粉をふるうわね」
「じゃあ、チョコとかそうかな」
これなら簡単だから良かった。そういえばチョコを溶かすときにボウルごと氷水に付けたらテンパリングをしたみたいにチョコがサラサラになるって聞いたんだけど、どうなんだろうね?ほんとかな?でも、今回はしなくていいかな。家で作る時に実験がてらやってみよう。
ぼーっとかんがえているうちに、それぞれの分担作業も終わったみたい。相変わらず泡立てるの早いね、リシュー。可愛い顔してかっこいいね。
「じゃあ、次。シルフィーこれ混ぜて」
渡されたのは私がさっきまで溶かしていたチョコレート。そこにバターとか卵黄とか、ソフィアが振るっていた粉類を入れて混ぜていく。
そういえば、前世で見た子ども番組で料理をしているシーンを見た事があるな…。懐かしい。どんな感じだったかな。私みたいに何かを混ぜているシーンも出てきてたな。確か、おまじないをしながら混ぜてた気がする。私は魔法の呪文って言ってたけど。確か、
「おいしくなーれ、おいしくなーれ」
って言いながら混ぜていた気がする。懐かしいなぁ。
…と、そろそろいいかな?
「ねぇ、リシュー、これ…」
これってこのくらい混ぜたらいいのかな?って聞こうと思ったのに、すぐ横にいたはずのリシューはいつの間にかいなくなっていた。仕方なくソフィアに聞こうとしたけれど、ソフィアもいなかった。
「あれ?」
二人は…?そう思って探してみると、二人がいたのは、床…。
「え、何で?!」
しかも、床に寝そべっているのは二人だけじゃなかった。クラスの何人かも二人と同じ状態になっていたり、机に手をついて苦しそうにしていた。
「な、なに?どうしたの?何か悪いものでも…、も、もしかして毒?!」
でも皆が何か食べたような形跡はない。という事は空気感染?!それなら大変だよ!あっという間に学園中に広がってしまう!いったいどこから広がったの?!
あれ、でもどうして私は平気なんだろう?
すると、ソフィアがのそっと起き上がって来た。
「ソフィア、大丈夫なの?」
「あー、大丈夫よ。皆シルフィーの魔法の呪文にやられただけだから」
「ま、ほうのじゅもん……」
それってもしかしてさっきの?!
「も、もしかして、声に出てた…?」
は、恥ずかしい!顔が真っ赤になっている自信がある!
「ふ、ふえぇ」
変な事考えるんじゃなかった!
そんなこんなでひと悶着ありましたが、無事、美味しいガトーショコラを作る事が出来ました。
作る過程についてはあとは端折ります。
出来上がった六種類のケーキたちを並べて皆で試食をします。
結果。
「ふにゅぅ」
美味しすぎて、ほっぺが落ちました。
あと、すっごく可愛かった!可愛いのに、材料少なくて初心者でも簡単に作れちゃう!もうジョシュア君天才だね。作ってる自分達も自分達がお菓子作り得意になったような錯覚を受けるから余計に楽しい。
それから会計の人と予算を確認したり、作る時間がどれくらいかかるのかとかを確認していって、委員長から問題ないとのお言葉を頂いたので、このデザインで行きます!
飲み物はコーヒー、紅茶、ジュースをそれぞれ数種類そろえる事になりました。はぁ、学園祭楽しみだなぁ。……勿論運営者として頑張るよ?美味しいものを狙っているわけじゃないからね?
もし、少しでもこの小説をいいなぁって感じたら、☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらてると、すっごく嬉しいです!




