077、お料理の腕があがりました
まあ、いろいろありましたが泉に到着しました。いろいろで片付けていいのか分からないけど、片付けます。
「ふわぁ、きれい」
泉には、精霊がたくさん飛んでいた。まるで、入学式の時みたい。あの時も精霊が沢山飛び交っていた。ソフィアを囲むように。
今回もそんな感じにキラキラしている。まるで泉が光っているように見える。
「きれい……」
これを綺麗と言わずに何を綺麗というのだろうか。神秘的だけど、どこか馴染み深い。アル様はこんな綺麗な所にいつも来ているなんて羨ましい。
でも、この泉、何だか変。引き寄せられる。足が勝手に泉の方に向かっている。『帰って来た』と感じる。まるでここが私の居場所だったかのように。もう、この場所から……
「この場所から離れたくないって感じてる?」
「!」
どうして私の思ったことが分かるんだろう?
「僕も同じように感じているからね。シルフィーも一緒だなんて嬉しいな」
アル様も一緒…?
「ここはね、精霊の住処ともいわれているんだ。実際に住んでいるわけではないと思うけど、ここには精霊が沢山いるから、住処だね」
「精霊のおうち…」
「うん」
だからこんなに精霊がいるんだね。私もここに住みたい。住んじゃおうかな。住もう。
「シルフィーは精霊との親和性が高かったね」
「はい」
精霊さんとは仲良しよ。たまに話しかけてくれるのは楽しい。特にお姉様とお歌を歌っている時が一番話しかけてくれる。
「何故か、精霊との親和性が高い人はここをとても居心地がいい場所と錯覚するんだ」
錯覚…?
「私もだけどね。だからこうして何度も何度も来てしまう」
そっか、だからアル様は何度も来るんだね。ここはとても居心地がいい。私だって何度も来たいと思える。
「まるで、湯舟に入っているような感じもするんだ」
アル様はこの居場所をそんな風に感じているんだ。私は少し違うかも。私はどちらかというと、
「アル様にぎゅってされているような感じがします」
「んぐっ!か、可愛すぎる!」
「ふみゃ」
アル様がぎゅーってしてくれました!そうそうこんな感じ!はぅ、幸せ!
「どうして親和性が高い人がこの場所を好むようになっているかは分かっていないんだ」
アル様は私を抱きしめたまま会話を始めました。あ、離してくれないんですね。私はこのままでも全然いいですよ。
「このような場所はこの国にもいくつかあるんだよ。ただ、他は少し遠いからなかなか行けないけどね」
「それなら、ここに来ちゃいますね。こんなに近くて素敵な所なら」
「そういう事」
それにしても
「風がきもちいですね~」
「今日は涼しくて良かった」
アル様がここに来るのは自然が気持ちいいって理由もあるよね。
「シルフィーがこんなに気に入るならもっと早く連れてこれば良かった」
本当にもっと早く連れてきてほしかったです。
「でも、シルフィーは気に入りすぎて帰りたくないって言いそうだなぁ」
さ、さっき思いました。ここに住みたいって思いました。帰りたくないって思いました。アル様もエスパー……。
「そういえば、アル様はスティラお兄様と一緒に来たって言ってましたよね?お兄様も精霊さんと仲良しなのですか?」
ここは話をそらしましょう…。
「あー……、スティラというよりは、ディーアがね…」
「え、ディー?」
「うん。何故か、ディーアがすっかりこの場所を気に入ったみたいでね」
流石私の友達!ディー好きよ!
「じゃあ、私も今度ディーと一緒に来たいです!」
というか来る!でも、お兄様、ディーと一緒に来たって言ってたけど、どうやって連れてきたんだろう?馬の上にディーを乗せてきたのかな?ふふ、何だか面白い!私がディーと来るには歩いてくるしかない。私とディーだけで来ることを許可してくれた時の場合だけどね。
「そして不思議な事に、ディーアは精霊の姿も見えているようなんだ。精霊と一緒に遊んでるから」
「え、精霊と…?」
精霊は普通にしていると見えない。ただ、沢山集まった時とかは普通にしていてもそのあたりが光っているように見える。……事もある。だから、ディーもその光を追いかけているんじゃないのかな?
と思ったけど、
「……犬って魔力を持たないから精霊を感じることもできないはずなのに…」
確かに魔力が無かったら精霊の光でさえ見る事が出来ないもんね。私達が魔法という形に変換する事でやっと見ることが出来る。
「ねぇ、一応聞くけど、ディーアって犬だよね…?」
「ディーは私が小さい頃からずっと犬です!」
「だよね…」
アル様の言葉に断言したけれど、少し心配になって来たよ…。犬だよね?
「……流石ディー!」
「シルフィー、今その言葉で片付けようとしたよね?あぁ、でも片付けよう。うん、そうしよう。結論なんか出ないもんね」
そうですよね片付けましょう。分からない事は分からないでいいんです。それを解き明かすのは私達の役割じゃないもん。
おまかせおまかせ。
さてさて、お昼ですよ~。ちゃんとシートも持って来てたから、敷いてその上に座ります。流石私、準備がいい。
「今日のお昼は、キッシュです!」
ね。料理っぽいけど、パイ生地ってお菓子っぽいでしょ?あ、ちなみにどこにお昼ご飯を持っていたの?っていう疑問もゴミ箱に捨てましょう。ご都合主義です。
「シルフィーが作ったの??」
「はい!」
うちの料理人のリンに教えてもらいながらだけど、ちゃんと自分で作ったよ。リンは口では教えてくれたけど、手は出さなかった。リンは、私が自分の手で作りたいって言う気持ちを分かってくれていた。だから頑張りました。
「正直驚いた。シルフィーがこんなに上手になってるなんて……」
「えへへ」
褒められちゃった!
「初めてシルフィーがクッキーを作ってくれた時から上手だと思っていたけど…」
あ、あれは私が作ったというより、ほとんどリンが手伝ってくれたんですよ…?でも、あの時も上手と思ってくれていたなんて嬉しいな。
「アル様、食べて下さい!」
「うん、楽しみだ」
ちゃんと切り分けてきていたから、それをそのままアル様のお皿に移す。
「ありがとう。いただきます」
ついつい、アル様が食べる所を見ちゃう。おいしいかな?ちゃんとできてるかな?不安で思わず眉がへにゃりと下がる。
「おいしいですか…?」
「びっくりした。すごくおいしいよ!」
「ほ、ほんとですか!」
「うん、おいしい!」
よ、よかったぁ。
自信はあったけれど、緊張してた。おいしいって言って貰えてよかった。安心したので、私も食べよっと。そう思って、自分のお皿にキッシュを取り分ける。
自分で作ったものを食べるのも少し緊張するんだよね。いただきます。そろーりと口へ運ぶ。
「あ、おいしい!」
びっくりした。自分でもすっごくおいしいと思う!
「何でこんなに美味しいんだろう?」
本当に申し訳ないけれど、今まで食べたどんなキッシュよりも美味しい気がする。
「それは勿論、シルフィーが心を込めて作ったからだと思うな」
だといいなぁ。でも、それだけじゃない気がする。
「そっか、アル様と一緒だからだ…」
思えばいつもそうだった。ケーキとかもアル様と一緒に食べるのはいつもおいしいもん。
「ぐっ。か、かわい…」
何やらアル様の方から何か聞こえる。あ、いつものやつですね。アル様はほっときましょうかね。私はキッシュをもぐもぐ食べますよ~。
「ふわぁ、ごちそうさまでした」
「美味しかったよ。ごちそうさま」
少し多めに作って来たんだけど、アル様が全部食べてくれました!流石食べ盛りの男性。そう言えば、アル様も20歳だもんね。あ、でも、身長はこれ以上伸びないで欲しいな。私との身長差が………。
あ、そうだ。
「アル様、あのね。お願いしたい事があるの」
「聞かせて」
……?何だかアル様凄く食い気味…?
「アル様と膝枕がしてみたいの」
アル様の頭に、はてながいっぱい飛んでるのが見える。そうだよね、急で意味が分からないよね。
でも、アル様は合点がいったみたいに、シートの上に座った。そして、膝をとんとんと叩く。それはまるで、「いつでもどうぞ」といって言っているみたい。
ふら~と思わずアル様の膝に吸い寄せられそうになるけどそうじゃない。
「あ、えっと。違うの。私がアル様にしたいの」
「僕がシルフィーに膝枕してもらうって事?」
「そうです!」
だって憧れてたんだもん!スティラお兄様がマリーお姉様にして貰ってたんだもん!お庭でしてるのこっそり見てたんだもん!私はシリアお姉様にして貰った事はあるけど、したことないもん!
「め、ですか…?」
「だ、ダメな訳ないよ!……ただ、少しでもしんどくなったら言ってね」
そう言って座っている私の膝にそっと頭をのせる。
「アル様が私のお膝の上にいるの何だかドキドキします!」
「僕は落ち着かない。シルフィーの方を見ようとしたら別のものが目に入ってしまうから見れない。いつの間にか大きくなって……」
「?」
大きくなったって言われました。私、身長そんなに変わってないのですが……。もしかしてお胸の方を言っていますか……?まさかね。アル様に限ってそんな事いう訳ないもんね。
「アル様、頭なでなでしてもいいですか?」
「ふふ。うん、いいよ」
アル様の髪の毛はさらさらでいいな。私は自分のふわふわの髪も好き。でもアル様のさらさらの髪も好き。
「いつも私がして貰ってるので、アル様にもしてみたかったんです」
「ふふ、シルフィーの手は気持ちいね」
「そうですか?私もアル様の手、気持ちいいので好きです」
「一緒だね」
「はい」
ふふ、両想いね。
「ふふ、何だかアル様可愛いです」
「……シルフィーの方がずっと可愛いよ」
「じゃあ、アル様は可愛くて格好いいから最強ですね」
「もうやだこの子可愛すぎる」
可愛いのはアル様の方ですよー!
そして驚く事に、アル様は私のお膝の上で寝てしまいました。私が寝る事はあるけど、アル様が寝る事はない。私の傍にいることに安心してくれているみたい。なんだかうれしい。
こんな風に二人でゆっくり過ごすのもいいな。また行こうねアル様。
あ、ちなみに。私の膝は無事しびれました。起きたアル様が申し訳なさそうに謝って来たけど、私的には楽しかったのでまた膝枕されて欲しいです。
もし、少しでもこの小説をいいなぁって感じたら、☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらてると、すっごく嬉しいです!




