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なろラジ7参加作品

私は私じゃないふりをする。でも。殿下は、そんな私のホットケーキがお好きらしい

掲載日:2025/12/14

 ドンッ!


 突き飛ばされ、尻餅をついた私の頭上に降ってきた声は、尊大だった。

「お前、女のクセに生意気だぞ」


 その日は散々な一日。

 侯爵家の息子と()めたことが母様の耳に入り、()()いた手の治療を終えてもお説教が続いた。


 総括すると。とにもかくにも"男を立てろ"と。


 なんでよ。格上の貴族ならまだしも、同格の、しかも年下相手になんで私が折れなきゃいけないの? そもそもウチのメイドを虐めた、あっちが悪いのに。


 私はおかしなことを言ってない。

 メイドに謝れと言っただけだ。


 そしたら今度は、"相手にも体面がある。メイド如きに頭を下げるわけにはいかない"ですって。

 なら最初から、悪さをしなきゃ良い。


 でも私はいずれ嫁ぐ身だから。


 聞こえ良く振舞い、家のためになる縁談を呼び込むことこそが、貴族の娘の務め。


 言われ続けて早十年。


 日々心を押し殺し、私は私じゃないふりをする。


 お(しと)やかで控えめで、はにかむように微笑むアルゼ侯爵家のマーガレット。

 殿方より常に一歩下がり、相手に合わせて、追従して。


 私はこの偽りの自分を、マギーと呼んでいる。


 口うるさい母様も、仕事一筋父様も、交流相手も。

 皆一様に愛称で、マギーと呼ぶから。


 彼らが望んだマギーの裏で、本当(ほんと)の私は息も絶え絶え。(あえ)ぎながら生きている。

 私が私を忘れてしまいそう。


「結局皆、綺麗なホットケーキが好きなのよね。焦げた裏面を隠して、完璧な焼き色だけを求めてる」

「……うん」

「口に入れたら、裏の焦げはバレるのに」

「まあ……、僕は焦げの苦みも個性だと受け止めるけどね」


 向かい合わせで彼が笑う。


「焦げの重要性を聞くのも楽しいけど、手作りが嬉しいからもう気にしないで」


 彼の前には、私が作ったホットケーキ。

 滑らかなきつね色の表。でも裏は……。


「ね、マーガレット。うちに嫁いできなよ」

「はあ? 冗談。王子妃業なんて、さらに自分を偽る職業じゃない」

「でもこの国の人間は、誰も君に頭が上がらなくなるよ? 王になったら、僕がそうする」

「誰もは無理よ。夫が王なら、頭下げなきゃ」

「王でも尻に敷けばいいだろ。夫なんて、妻を引き立てる皿みたいなものなんだから」


 フォークを置いた幼馴染が、真剣な表情(かお)で私を見る。


「僕の妃になって欲しい。王の妻は、"はい"というだけの女性じゃ困る」

「殿下……」

「僕は君のホットケーキが、大好きなんだ」



 私は王子の隣に並び立ち、誰も私をマギーと呼べなくなった。

 私は今、マーガレットとして生きている。




 お読みいただき有り難うございました!

 なろラジは…5作書いたらお休みするはずだったんですが…!

 6作目をつい書いてしまいました(´艸`*)


 この世界にホットケーキ(という名前)があるのか!

「ホッとするケーキだから、ホットケーキ」という、そんな概念を書き込もうとしたのですが、親父ギャグ過ぎて殿下に言わせるのは気が引け…。

 でも言わせたかったかなぁ(∀`*ゞ) ←ヤメロ


 殿下はマーガレットのことを一度も「マギー」と呼んでない部分にも注目いただけると嬉しいです♪

 小さい頃からの幼馴染なので、彼には猫かぶりがバレてるマーガレットでした。仲良し。


 お話をお気に召していただけたら、下の☆を★に塗って応援くださると励みになります!(∩´∀`*)∩ よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
マーガレットのキャラクターがすごく良かったです。ラスト1行が好みです。1000字でしっかりまとまっててさすがみこと。さんだと思いました。会話も楽しい。
うわー!好き!!! 裏が焦げてるホットケーキが好きだなんて!! 君の、ね!!!!!!王子!!!! すっごいセリフで、すごかったです!!(語彙)
「僕は君のホットケーキが、大好きなんだ」この決め台詞がそこまでの伏線回収になっていて凄く素敵でした。 読ませて頂き、ありがとうございました。
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