第65話「規律高き聖庭、凱藍神国」
船着場を踏み締めた瞬間、頬を撫でる爽やかなそよ風。
それはまるで山の小川に飛び込んだように、冷涼で優しく和やかに髪を揺らす。
『凱藍神国』。
中央大陸の西端に位置し、その豊かな自然と高純度な水質のため、さまざまな固有生物の生息する、世界で最も美しい自然を持つ国。
また生息する神獣の数も世界一であり、聞いた中じゃ、前の世界でも有名なものたちがいくつもいた。
ミフターフのすぐ隣なのに文化色は全然違うんだな。
こっちは完全にアジア、言えば古代中国のような神秘的な様子。
埠頭を行き来する人々も、現地人と思われるヒトは皆伝統的な民族衣装に身を包んでいる。
「すごいや。この埠頭だけで凱藍の伝統がこんなに詰まっているなんて」
ジュリアーノは敷き詰められた石畳や立ち並ぶ街灯を眺め、目を輝かせている。
確かに先週までいた鎧銭に比べ、こっちは何もかもが伝統的様式に沿っていて、異文化の色がほとんど無い。
文化を厳重に守っているこの景色は美術的観点から見れば二重丸だが、どこか後進的な印象も受けてしまう。
色々と厳格な国だと聞いたけど、もしかすると伝統も強く重視しているのだろうか。
船から荷物を下ろし終えると、船員に言われた通り港入り口の建物を訪れた。
中へ入ると渡航者と思しき人々が短い列を作っており、その先では兵士の装いをした十数名の男女がそれぞれひとつの長机の前に立っていた。
その景色はまるで空港の保安検査所。
渡航者一人一人が椅子に座らされて目の前で荷物の中身を調べられ、問題がなければ奥の門から出ていく。
厳しいけど、前の世界じゃ普通のことだったもんな。やましいことは何も無い、いつも通りにやっていけばいいさ。
「こちらへ渡航なされた理由は?」
「友人が面倒な呪いを受けてしまいまして、それを浄化するためにこちらの薬師さんにまじないを拝受したく」
「なるほど、ご職業と身分を証明できるものはございますか?」
「冒険者ギルドのギルドパスポートで大丈夫ですか?」
「はい、構いません」
そんな問答を数分続けた間に手荷物検査は終了。何の不届きもなく無事解放された。
それにしてもずいぶん厳しかったな。
前の世界じゃ怪しまれでもしない限り、あんな質問攻めなかったのに。手荷物検査もなにか探知機のようなものを使っていたし……。
まあ文化や価値観の違いは多少あって仕方なし。これが凱藍の常識でルールなのだろう。
郷に入っては郷に従えだもんな。
とりあえず他の皆が終わるまで、先に出ていたジュリアーノと待合室でしばらく待っていた。
数分待った後、空いた扉からやっと見知った顔が出てきたと思った……がしかし。
「あれ、ガイア?それどうしたんだ?」
出てきたガイアの装いが、いつもと少し変わっていた。さっきまで和装にホットパンツを履いていたのが、凱藍風の衣服に代わっている。
具体的には、ズボンの丈が長くなってハーフパンツほどになっていた。
「足出しすぎって、おじさんに怒られちゃった。こっちにしなさいって」
「出しすぎ……そんなにか……?」
予想外の答えに俺とジュリアーノは首を傾げる。
ガイアの見た目の年頃ならよくあるファッションだったと思ったけど……。
「凱藍はそういうところ結構厳しいからね。知らないで捕まっちゃうよりは良いよ」
「いやいや、さすがに厳しすぎやしないか……」
「ホント!短いの気に入ってたのにぃ〜!!まあ、ダダこねたら新しいお洋服くれたから良いんだけどねぇー」
確かに色々厳しいとは聞いていたが、まさかここまでとは……。まあ性癖なんて千差万別、国ごとに猥褻の基準が違うのも納得っちゃ納得か。
すると再び扉が開き、今度は経津主が出てきた。
しかし振り返り彼の姿を見た瞬間、俺はたちは一斉に面食らってしまった。
「ふ、経津主!?」
なぜなら、彼もまた、装いがいつもと違ったからだ。
通常彼は上着の上部分を完全にはだけさせ下着一枚の状態でいるのだが、今は腕を通しちゃんと着込んでいる。正式な着方ではあるのだが、いつものに見慣れると違和感がすごいというか……なんだか経津主らしくない。
「なんか、肩出すンが破廉恥だとかなんとか言われてよォ」
「ありゃりゃ、経津主もお説教食らっちゃったかぁ〜」
「ハレンチィ?経津主が?そんなバカな……」
「なんで?なにか変なことしたの?」
「ンなもん俺様が訊きてェよ」
ガイアは女子だし、かなり短いパンツだったしまあまあ納得がいく。
だか、経津主は何故?????
価値観は人それぞれ国それぞれだろうけど、さすがにいい年の男がノースリーブで町を歩いたところで何の問題もないと思うのだが……。不思議なこともあるもんだなぁ。
その日は港へ着いた時点で既に夕方だったので、近くの繁華街で夕食を取ることにした。真っ先に目につき繁盛している様子の店へお邪魔し周りのテーブルを眺めると、やはりというべきか卓上に並ぶ大皿はどれもこれもうっすら見覚えのある料理ばかり。
あれは……エビチリ?あっちはニラレバに天津飯っぽいやつと青椒肉絲みたいなのと……あ、水餃子もあるじゃん。鎧銭にもラーメンやら焼き餃子やらはあったけど、やっぱこういうのも食べたいよな。
料理を注文し、テーブルへ運ばれてきた大皿を箸でつつき合いながら、今後のことについて話した。
「雀亨山の中腹だったよね。祝融が住んでいるのは」
「ああ。ここからずっと離れた郊外で、麓はほぼ治外法権って話だ。明日は気を引き締めていかないとな」
「そのためにも、今日はたくさん食べて精をつけないとねっ!」
そう言ってガイアは大皿からダックを一本掴み取り、脂の乗ったもも肉へ豪快にかぶりついた。口いっぱいに肉を頬張り、心底幸せそうにほっぺたを染めてもぐもぐと口を動かす。
そんな姿を見ていたその時、不意の脳裏に去来するのは俺の手料理をいつも美味しそうに食べてくれていた、ベルの姿。
「ベルにも食べさせてやりたかったな……」
あの子は今、どうしているだろうか。
正直ヤクザは信用できないけれど、龍兵さんたちとはなんだかんだ長いし、いいヒトたちだとは思っている。あの人なら、きっとちゃんとベルの面倒を見てくれると信じている。
だが、心配がひとつもないと言えば嘘になる。
彼女は元々少し変わった子だ。突拍子もない時に予想だにできない行動をとるし、半年以上付き添った俺たちでも予測ができない。
俺はレンゲにとった天津飯を見つめながら、ふと小さなため息をこぼした。
「心配ねぇだろ」
頬張った水餃子を飲み込んで、経津主が言う。
「留守番できるって、アイツ自身が言ったんだ。信じてやれよ」
「……そうか……ああ、そうだな」
そうだ。あの子は俺たちの成功を願ってくれている。
いたいけな少女の決心を無碍にすることなんて、許されない。
俺は天津飯を口運ぶ。
美味いな。
よく混ぜられて空気をはらんだふわふわの卵と、味の濃いあんが最高にマッチしている。
ベルも今頃、美味いもん食ってるかな。
――同時刻、鎧銭荒若家――
「ほら、食え」
そう言って龍兵がちゃぶ台においたのは、味噌汁と大皿いっぱいに盛られた焼き飯。
ベルは目の前に置かれた古い子供用のスプーンを持ち両手を合わせると、「いただきます」と言って焼き飯を頬張った。
「悪りィな、雑なもんしか作れねぇで」
「んまい」
「そうか」
目を合わせずボソッとそう言い、龍兵は自分の分の皿を持ってきて口に運ぶ。
沈みかけの夕焼けがさす部屋の中、一切の会話もなく、ただ時計の針の進む音と食器同士のぶつかる音だけが響き渡る。
大盛りの焼き飯が残り半分ほどになった頃、向かいに座る龍兵の顔が見えた。火傷痕の張り付く右側に夕陽が当たり、まるで煌々と燃える炎のように彼の顔が照らされている。
「お前、なんで旅なんかしてんだ」
不意に飛んできた質問に、ベルは食べる手を止めた。
「魔族の子供は外見が早熟だって言うし、お前さん見てくれよりも若ェんだろ」
目線は合っていない。気力も篭っていない。
ベルは口の中身を咀嚼し飲み込むと、答えた。
「おうちに、かえる」
「お家ね」
龍兵は焼き飯を口に運び、続ける。
「追い出された口か」
「ううん。おにごっこしてたら、まいごになっちゃった」
「そりゃ、ご両親はさぞ心配だろうな」
「パパとママ、いない」
「……そうか、そりゃ悪いこと訊いたな」
龍兵は空になったベルの湯呑みに茶を注ぐ。
「りょうへいさん、パパとママいないの」
「いねぇよ。いたら俺ァとんだ親不孝者だぜ」
「じゃあ、きょうだいは」
『きょうだい』。
その言葉を訊いた瞬間、龍兵の箸が止まった。
彼の瞳は何かを思い出したかのように一点を見つめ、動こうとしない。そんな龍兵にベルは不思議そうな様子で首を傾げる。
「……いねぇよ」
その声は低く、微かな怒気が篭っていた。
ベルは「そっか」とだけ言い、再びスプーンを動かす。
龍兵も何も言わず茶を飲み干し、焼き飯を掻き込んだ。
――凱藍、冒険者ギルド宿舎――
「ああーー、久しぶりの揺れない寝床ぉーー」
床へ丁寧に並べた布団にダイブする俺に、ジュリアーノが笑みを送る。
後を追うようにガイアが飛び込んできたと同時に、入り口の戸が開いて風呂上がりの経津主が帰ってきた。
陸地って良いもんだなぁ。
ここ1週間ほど落ち着いて熟睡することができなかったからか、布団に寝っ転がっただけで急激な眠気が襲ってきた。
だが今日まだ眠るわけにはいかない。
俺は窓際に置いて置いた鞄を取り寄せると、金具を外して口を開いた。
「そうだケンゴ、手紙届いてたの?」
カバンの中に手を突っ込んだその時、ジュリアーノが思い出したように言った。
「フフーン」
無邪気な様子でポカンとするジュリアーノに、俺はキメ顔でカバンからあるものを取り出す。それは可愛らしい花柄の便箋に包まれた、一通の手紙。
それを目にした瞬間、一同から歓声が湧く。
何を隠そう、この手紙の主はルジカなのだ。
ルジカと手紙のやり取りをする約束をしたあの時、少しの間 凱藍へ行くことも伝えておいたから、わざわざこっちのギルドに送ってくれたんだ。
蝶々柄の封蝋を丁寧に剥がして、いざ中身を取り出す。ふたつに折られた手紙を開こうとすると、「どれどれー?」とガイアが俺の手元を覗き込んだ。
だがしかし、そんな彼女をジュリアーノが後ろからひょいと抱え上げる。
「ダメダメ。ケンゴ宛の手紙なんだから」
「ええ〜」
俺は2人の様子に苦笑いを見せつつ、手紙を読んだ。
ああ〜〜丸文字じゃんかわいいぃぃぃいい。
しかも端から端までこんなにびっしりと。
内容はいたって普通。ミフターフへ無事着いたことなどの近況報告と、アウローラの知り合いたちに関すること。そして最後に、俺への個人的なメッセージ。
ラブレター……って、言っていいのだろうか。こんなに愛の溢れる手紙は初めてもらった。
返事は後できっちりせねば。
「……で、なんて書いてあったの?」
「結局気になンのかよ」
「当たり前じゃない。ね、当たり障りのないところでいいからさ」
「仕方ないなぁ……えっと……ミフターフには無事に着いたらしいぞ。けどあんまり暑いんで、ディファルトは着いてすぐバテちゃったんだって」
「ありゃりゃ」
「ディファルト大丈夫かな」
「あのガタイなら平気だろ」
ディファルトは体格こそいいが、部分部分で虚弱なところがある。
まあルジカがついているし、きっと大丈夫だろう。
「あ、あと、ジネットがアスガルド総合学院の芸術科に受かったってよ」
「え!?アスガルド総合学院の芸術科に!?ジネットが!?」
ジュリアーノが突然身を乗り出し、驚きの声をあげる。
「ジネット?ンなやついたか?」
「もー、経津主忘れちゃったの?ほら、アンジェリカのとこの魔導士だよ」
ジネットは俺たちがアウローラにいた頃に仲が良かった冒険者の1人。冒険者として依頼を受けながら貯金をして、将来的にはマエストロの元で修行を積みたいと言っていた、彫刻家志望の女の子だ。
「そういえば、ジュリアーノのことめっちゃ敬愛してたよな。将来はベラツィーニ家の専属彫刻家になるんだ、って」
「そうそう、ジュリアーノ様ぁ〜なんて呼ばれちゃってねぇ〜」
「やめてよぉ……。でもすごいな、アスガルド総合学院に受かるだなんて」
「トップオブトップの学校じゃねぇか。アイツ学費払えんのかよ」
「ウチは国主催の芸術コンクールで優秀賞以上になると、公王直々に友好のある学校に推薦が出る場合があるんだ。そうすると学費は国が免除するから、もしかするとそれかも……」
「え、めっちゃすごいじゃん!正真正銘の実力勝負で勝ち抜いたってことでしょ?」
「凄いどころじゃないよ、もしコンクールで入賞して兄さんがジネットをアスガルド総合学院に推薦したってのなら……一昨年1人推薦したばかりなのに、まさかこんなにすぐ2人目が出るなんて。それでちゃんと試験に受かってるからね、近年の若者は優秀だなぁ……」
驚きすぎて言動が爺さんみたいになっているのはさておき、確かに芸術の国アウローラの国主催のコンクールで優秀賞以上を取ったとなれば、とんでもないことだ。
16歳……だっけ。天賦の才か、はたまた努力の証か。
俺とそんなに歳変わらないのにすごいなぁ……。
そんなふうに談笑しつつ、明日も早いので床に入って翌日。俺たちは街の外れで馬車に乗り都市部を離れた。
途中通った郊外の町の景色は、華々しく栄える都市部とは打って変わって荒れていた。スラム街という言葉が実にピッタリで、とても同じ国とは思えない。
「聞いた話とまるっきり同じだね」
「お前ら、カバンはしっかり持っとけ。馬車に乗っててもスられるもんはスられる」
さすがにホトケは転がっていないが、行き交う人々の視線は、歩きながら談笑をしつつもどこかこちらを怪しい目で見ている。こういうとこじゃ外国人は格好のカモだ。気を引き締めていかなければ。
そのまま馬車に揺られて2時間ほど。町の端まできたところで馬車を降りた。
わかりやすい木柵の境界線を越えて少し進むと、景色は一気に一変。若緑色の山々に野鳥が飛び交い、静かな小川のせせらぎが心地良い雄大な自然が現れた。
川を覗けば銀色の小魚や小さな虫が透き通った水の中で悠々暮らし、周りを見渡せば、うさぎのような猿のような見たことのない神秘的な生き物が木に登って果実をかじっている。
その景色はまさしく、昔話に出てきた桃源郷そのもの。
「『世界で最も美しい自然を持つ国』か。確かに、これは納得だな」
不死身が解けた暁には、こんな場所でゆったり暮らすのもアリかもしれないな。
雀亨山はここから北の山を一つ超えた先にあるらしい。幸いこの辺りは比較的高低差の優しい土地なので、山を一つ越えるのにも2時間とかからなかった。
仙果の香る、いかにも薬師の住んでいそうな山。
雀亨山の景色は他の山と少し違って、山道が石階段で綺麗に整備されていた。
祝融は作った薬を企業へ卸しているっていうし、多分社員が通りやすいようにしているんだろうな。
ここまでの道のり、街を抜け山を越えすでにへとへとだが、もう一踏ん張りと皆で声をかけ合って階段を登った。
一段一段を踏み締めるごとに重くなる足に喝を入れ、山を登ること30分ほど。ようやく開けた場所が見えてきた。
「ハァ……ハァ……やっとついた……?」
「……あ、あれ家じゃない?」
ジュリアーノの指さす先を見てみれば、そこには煙立つ一軒の茅葺きの民家。周りには小さな畑と井戸があり、洗濯物も干されている。
山の中腹、民家、確かな生活感。きっとこの家に祝融が住んでいるに違いない。
戸の前に立ち、右手を握って叩きの姿勢をとった。
「何も連絡してないけど、大丈夫かな……」
「あー、っても今更な……」
「ごちゃごちゃ言っててもなんにもなんねェだろうが」
確かに、経津主の言う通りではある。俺は深呼吸をし、右手の握る力を強めた。
扉の奥にいる人物でわかっているのは、ただ気が短く難しいということだけ。
正直怖い。だが経津主に言うように、何もしなきゃ始まらない。
俺は意を決し、冷たい木の戸を敲いた。
「帰れ」
一拍を置いて聞こえてきたのは、実に冷たい一言。
あまりにド直球なせいで、俺たちは一瞬困惑して固まった。
「あ、あの、いきなりすみません、」
「帰れ」
「その、俺たち」
「何度も言わせんな。許可なんざ出さん。帰れ」
許可?許可ってなんだ?まさか勘違い?
「ち、違います!俺たち会社とかじゃなくて、祝融さんに個人的な用事があって……」
「なら帰れ」
「え、あ、いや……」
なんだこの人。
気難しいどころの話じゃねェぞこれ。
「まるっきり聞く気がないねぇ」
「これ以上刺激しても機嫌を損ねられたらもっと交渉が難しくなるかもしれないし、どうするか……」
「ここまで来たんだぜ、今更引き下がるなんざ男のすることじゃねェだろ。こうなりゃ蹴破るか」
「馬鹿!んなことしたら迷惑だろうが!そもそもアッチは無関係なわけだし、言動を過激にするんじゃなくて寄り添うような形とかに変えないと……」
「俺様は400年の因縁と愛刀がかかってんだ。相手が強く出たんならコッチはより強く出るのが道理ってもんだろうがよ」
「交渉の場でヤクザ魂なんか出すな!」
「ヒカリモン抜かねェだけマトモだぜ」
俺と経津主の言い合いはヒートアップし、ジュリアーノがどうにか止めようとするも効果はない。
すると、扉の奥から何やら足跡が近づいてきた。それにも気付かず、俺たちは言い合いを続ける。
とその時。
頑なであった戸が突然ガラッと開き、
「帰ェれェエエ!!!!!!」
間髪入れず、とんでもない怒号が飛んできた。
あまりの怒声に周辺の木々が揺れ、俺は思わず尻餅をつく。
「こンのグソガキどもがァア!!他人ン家の前でギャーコラ騒ぎやがって!!ブチ殺すぞ!!!」
目の前に仁王立ち、迫真の怒号に暴言を乗せて吐き出す男。
日に照って紅に光る潤朱色の髪の毛に、燃える炎のような真っ赤な瞳は、見つめるだけで体の芯から消し炭にされそうなほどに力強く燃えている。
圧倒的な威圧感、向き合うだけで熱く湧き立つ熱気。
彼こそが浄化の炎を司りし賢神、『炎神・祝融』。




