その25 顔合わせ
─前回のあらすじ─
銃の詳細を知る為に、育ての親であるエイディを頼る。
その後、エルフの少女ギブルがヨミエルを訪ね、ある依頼を出すのだった。
三途の対岸を抜け、帝都の大通りを行くと、人通りの少ない富裕層の区画へとたどり着く。
「……一つ、忠告しておく」
先導していたギブルが口を開いた。
「これからアンタには評議会の場で顔合わせをしてもらう」
「……は?」
「その際、カチカ執政官の事は当てにするな、オマエを部外者として扱った時点で、もう気づいていると思うが……あの人は少し抜けている」
「ハッキリ言えば、執政官としては力量が足らん」
ちょっと待て、評議会に参加するのか?一介の冒険者がか?
何故だ?意味がわからない。
「少し前、ラナを『アヴァロン浄化作戦』に組み込む議題があったが、賛成多数で可決された」
「それぞれの派閥の代表者達で出立の準備……その検討も終わった」
「……ったく、冒険者の中から護衛を選出するというのなら、最初からコイツを連れていけば良いだろうが」
ぶつくさと文句を垂れるギブルは、巨大な鉄柵の門を潜り、宮殿とも思える巨大な建物の中へと足を運んでいった。
……評議会、自分の前には、今まで無縁だった政治の本山が目の前に鎮座している。
自分は今からその場に向かう羽目になる……魔物大戦の戦場に赴くよりも、進む足が重く感じた──
──宮殿の中に入り、絨毯や絵画、高価そうな花瓶が彩る長い廊下を抜けていくと、ギブルが立派な木製の両扉の前で立ち止まる。
「ここだ……中に入れば、旅の参加者が貴様に注目する」
「私がお前をラナの護衛として推薦してやる」
「……後は適当に、上手い事口を回せ」
言うが早いか、ギブルは扉を両手で押し、議会の場へと足を踏み入れた。
扉の内側から、ムワリと生暖かい熱と絨毯の匂いが飛び出し、そして重苦しい場の空気が全身を襲う。
円状に広がる、厳かな議会の場、円で囲う様に、そして階段状に議場机が設置され、議会の中心には、数人の人が立っていた。
評議会……貴族の代表者として選ばれた議員達で会議を行い、法律の制定などを行う会議の場……自分は、文字通りの意味でその議会の中心に向かっていた。
そして自分が議会の場、その中心に到達すると、執政官と、見知った顔が、驚いた顔をして自分を見つめる。
「ギブル……何故その人を……」
「ヨミエル……!?」
「……一日も経たずに再開してしまったな、ラナ」
自分とラナとの間に、気まずい空気が流れていると、一人の代表者が咳払いをして、自分を見つめる。
「あなたがギブル殿が推薦する冒険者ですか?」
眼と鼻の間に不思議なあざが見え、眼鏡をかけた青年……身体的獣の特徴と、その眼鏡の内側から見える赤い瞳から察するに、アルマの青年だろう。
「私は白狗商会会長に推薦され、今回の旅に同行するオタニアと申します」
そう言ってオタニアは自分に手を差し出し、自分はそれを手に取ろうと手を差し出す。
するとオタニアは急に手を引っ込め、驚いた顔をして自分の手を見つめる。
「……あの、失礼、手から何か垂れてますよ」
「わわっ!ちょっとヨミエル、手出して!!治してあげるから!!」
──そういえば、手から血が流れていたのを思い出した。




