その17 凶刃
─前回のあらすじ─
フローシフの教祖、ダアムが一行の前に立ちはだかり、異形の魔物、がしゃどくろを召喚するのだった。
──ヨミエルと分断されたラナたちは、がしゃどくろに対峙し、それぞれ武器を振るっていた。
「おりゃあ!!」
ラナが肋骨に対し、剣を振る!しかし、肋骨の中から槍が飛び出し、ラナの刃を防いだ!
見ると、肋骨の中には笠のような兜を被った骸骨の兵が、所狭しに敷き詰められていた!
「うそぉ!?そんなのあり!?」
『じゅゥウずゥじいぃいイん!!』
がしゃどくろが叫び声をあげると、肋骨の間から骸骨の兵が這い出し、ガシャガシャと戦場へと、骨を鳴らしながら落ちて来た。
「キメェ!!カマキリの卵かよ!?」
「……あんな装いの兵士、ノフィンでは見た事ないね……何処の兵士だ?」
「今はそんな事いいから!とにかく数を減らさないと!!」
骸骨の兵士がそれぞれ武器を構えると、ラナ達に向かって突進しだす!
「ハッ!戦って死んだ奴が戦いで生きた俺に挑むか!おもしれぇ!いくぞぉッ!!」
ミライが先陣を切り、骸骨の群れへと突撃する!
「オラァッ!!」
ミライが右腕を横に広げながら、大振りに拳を放つと、数体の骸骨を薙ぎ倒しながら包囲の中へと突っ込んでいった!
「ミライさん!?ヤバい、助けに行かないと!」
「彼なら大丈夫だ!よく見な、ラナちゃん!」
援護に向かおうとするラナをシェリーが引き留める。
「どうしたァ!?目ん玉ねぇから自分より強え奴がわからなかったか!?」
ミライは襲いかかってくる骸骨を殴り倒し、地に伏した骸骨を、鎧ごと踏み壊し、無手で幾多の兵を薙ぎ倒すその姿は、まさに天下無双の大立ち回りだった。
「すっごーい!?ミライさん強すぎない!?」
「雑魚は彼に任せよう、私たちが狙うのは……あの巨体、大将首のドクロだ」
シェリーはがしゃどくろの巨大なドクロに対し、銃口を向け、発砲する。
閃光と共に弾丸が放たれ、がしゃどくろに命中する!
しかし、弾丸が弾かれる音が響き、がしゃどくろには傷ひとつ、ついていない様子であった。
「そりゃ、あんなでかいドクロしてたら硬いか!」
「どうしよう!?私の剣でも斬れなさそうだよ!?」
「安心して、ゴリ押しだが作戦がある……ラナちゃん、コレを」
シェリーが鞄から何か取り出すと、ラナに渡した。
手で握れるほど小型で、一本の線を伸ばしたそれは、どことなく、危ないもの……ラナはそう感じた。
「コレは『手持ち式小型炸裂弾』……まぁいわゆる爆弾だ」
「その紐を抜けば四秒で爆発する、コレをあのドクロの眼窩……目の中に向かって投げるんだ」
「目の中に?普通に投げればいいんじゃ……」
「この爆弾は二つしかない、一つは目眩しとして、もう一つは確実に倒せるよう、ドクロの内部から爆発させる」
「そっか!なら任せといて、シェリーさん!」
「任せた、私が爆発を投げたら、走るんだ」
シェリーが爆弾の紐を引き抜き、がしゃどくろ目掛けて投げつける!
爆弾は放物線を描きながらドクロへと向かい、目の前に到達すると、爆発音と共に爆炎が巻き上がる!
「今だ!行け!」
ラナはシェリーの合図と共に走り出し、骸骨兵の間を駆け抜けた!
『ムぁあアアモォおレェええ!!』
爆煙の中から、がしゃどくろが号令を下すと、肋骨からガシャガシャと骸骨兵が這い出し、がしゃどくろの周りを守るように立ちはだかる。
「邪っ魔!!」
ラナは、がしゃどくろの前に立ちはだかる骸骨兵に斬りかかる、その剣技は流麗であり、刹那。
瞬く間に骸骨兵の防御網を突破し、がしゃどくろの肋骨を足場に、ドクロの前へと飛翔する!
「くらえ!」
ラナが爆弾の紐を引き抜き、がしゃどくろの眼窩に投げ入れた!
そしてラナが着地すると同時に、がしゃどくろの眼窩内で爆弾が炸裂し、ドクロを支えていた身体が吹き飛び、巨大なドクロが転がり落ちた。
『ウぅチいぃい死ィにいぃ……』
がしゃどくろが力無くそう呟くと、辺りの骸骨兵が動きを止めた。
「倒した……!ヨミエ──」
ラナがヨミエルの元に走る……そして、ラナの視界に映ったのは。
「うそ──!」
──ダアムの凶刃に倒れ、地に伏したヨミエルの姿だった。




