その1 目覚め
はじめまして、作者の古時計です。
小説を書く創作活動は初めてなので緊張しています。
ソウルストーリーの物語は大半が主人公の視点で進んでいきます。
前書きには前回のあらすじを、そして後書きにはソウルストーリーの設定(歴史など)を書いていきたいと思います。
読んで頂けると励みになります。
自分は島国であるノフィン国、その帝都オーディエに住む一人の冒険者だった。
何年か前に傭兵稼業禁止令という法令が発せられてから、急速に冒険者組合というものが発足され、自分を含む傭兵達が挙って冒険者という職についたのは記憶に新しい。
冒険者……聞こえはいいが、その実やっている事は傭兵稼業の時と何ら変わりなく、結局のところ冒険者とは聞こえの良いだけの傭兵なのである。
そんな冒険者の自分にある一つの依頼が舞い込んだ事が、全ての始まりだった。
依頼の内容は畑を荒らす害獣の退治……それだけの筈だった。
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依頼主である村の領主が馬車を手配してくれて、自分は目的の村へと揺られていく。
陽の光を遮る幌の中に自分一人が座り、ガタゴトと揺れる心地のいい振動にうつらうつらとし、瞼が落ちてくる……そして、眠りに落ちるその瞬間──
──突如こめかみに冷たく硬い感触を感じ、一気に意識が覚醒する。
「そのまま下を向いていろ」
「今、アンタのこめかみに銃を突きつけてる、妙な動きをしたら、アンタの脳漿で馬車が汚れることになる」
声の主はカチリと撃鉄を起こし、底冷えする様な声でそう告げた。
唐突な出来事に混乱しつつも、自分は両手を挙げ降参の意を示すと、声の主が言葉を続ける。
「アンタ、依頼である村の害獣駆除に向かうんだろう?」
「悪いがその依頼は嘘だ、本当の依頼をこれから説明する」
「……本当の依頼?」
「そう、アンタにはある人物を目的地まで届けて欲しい」
「その人物は橙色の長い髪をした女だ。目的地はこの袋にある」
そう言うと声の主は、袋を自分に手渡す。
袋の中には何か硬いものが複数入っているのか、ジャラリと音がなる。
「それは報酬の前払い、とでも思ってくれ」
「あぁ、それと……」
そう付け加えると、自分のこめかみに突きつけていた銃を徐に離し、その銃口を御者席の方へと向ける。
「……この馬車はこれから大事故に遭う、馬車を引く馬が暴れ出し、制御を失った馬車は崖の下に真っ逆さまだ」
「その際、何人か下敷きになるだろうが、アンタは気にしなくて良い」
声の主がそう言い放ったその瞬間、銃口から一筋の閃光が放たれ、銃声と共に打ち出された弾丸は幌を突き破る、すると御者席の方から馬の嘶きが聞こえ、馬車が大きく揺れる。
自分は揺れる馬車に体勢を崩し床に倒れ込むと、直後馬車はガタンと一際大きな音を立て急加速する。
すると一瞬だけ、暴走する馬車から飛び降りようとする白いローブを身に着けた男の姿が見えた。
男は持っていた銃を自分に投げ渡し、自分は慌ててそれを掴んだ。
「一つ忠告をしておく」
「彼女の意思を尊重してやれ」
男はそう言って馬車から飛び降りる。
次の瞬間、馬車は大きく傾き、自分は崖の上から馬車と共に投げ出された。
視界から遠ざかっていく空と、希薄になっていく自身の感覚を最後に、自分は意識を手放した──
─ノフィン国─
この世界は、幾つもの大地を人が国という形で支配している。ノフィン国という島国もそのうちの一つである。
ノフィン国には人間の他に二つの種族が存在する。
自身の意思と供物により奇跡ともとれる現象、魔法を操る亜人『エルフ』
母なる海より生まれた大樹の獣、その血肉を喰らい獣の力を宿した獣人『アルマ』
この三種族の歴史は、ノフィンの大地の覇権を目論む人間同士の長き戦いで彩られている。
そしてその戦いが終わった今、この三種族はノフィン国という三種族の統治の元、共存している。




