文化祭1日目(後編)
今回は今までとは一味違う感じになっております。ぜひ、お楽しみください。
「何というか嵐みたいな人だったな。」
俺は佐々木の消えていった方向を見つめながら無意識に呟く。
「田宮くーん、ご指名だよー。」
すると、メイドの女子生徒が俺のことを呼んだ。俺は内心、誰かなと思いながらそちらに向かう。
「悪いな、少し休んでた。それで、俺をご指名って誰なんだ?」
すぐに客席に戻った俺は声をかけてくれた女子生徒にそう聞いた。すると・・・
「あっ、田宮君!こっちこっち!」
呼ばれたので振り返るとそこには席に座りながらこちらに手を振っている海原さんとその友達らしき女子生徒の姿があった。
「海原さんとそちらは?」
「あぁ、有栖のこと?」
俺の質問に海原さんがそう聞き返してきたので頷く。俺が頷いたのを見た海原さんは深く溜息をつき、その『有栖』さんに生易しい視線を向けた。『有栖』さんは視線を向けられると同時に苦笑いを浮かべていた。
「?」
「えっと、田宮君と私は一応、去年に一緒のクラスになったよ?」
「えっ。」
俺がどこかで会ったことがあるかと過去の記憶を探っている間に、『有栖』さんは説明してくれた。
「マジ?」
「マジ、だよ。」
『有栖』さんの返事を聞くと同時に俺は深く頭を下げる。
「・・・誠に申し訳ありませんでした。この身は煮るなり焼くなりお好きなように。」
「いいよ、いいから!とりあえず、目立ってるから頭をあげて?ね?」
『有栖』さんは慌てた様子で立ち上がって、手と首を勢いよく横に振った。
(・・・今日から彼女のあだ名は『女神様』だな。)
「本当に悪いな女神・・・有栖さん。」
「どういたしましてって、今なんて言おうとしたの?」
誤って『女神様』と呼びそうになり、冷静に取り繕うもダメだったようだ。
「それで?わざわざ指名してまで俺をここに呼んだ理由はなんだ?」
俺はすぐ隣で「ねぇ、ねぇってば。」と言っている女神様もとい有栖さんを無視しつつ海原さんに話を振る。
「準備期間の時の約束を果たしに来たんだよ。」
海原さんは俺の意図を察してくれたのか持ち前の意地の悪い笑顔を浮かべながら俺の質問に答えてくれた。
「あぁ、そういえばそんなことを言っていたな。」
俺はリハーサルの時に海原さんと話した内容を思い出す。
「そそっ。と、いう訳で注文をお願いしようかな?」
「別に約束したわけではないんだが・・・。まぁ、いいか。」
海原さんには何を言っても無駄という事がこの半年でそれなりに分かっているつもりなので俺は言い訳を言いかけてやめた。
「・・・うぅ~~。」
無視され続けていた女神さまはというと、こちらをジト目で見つめながら唸っていた。すると、今度は海原さんをポカポカと叩いていた。・・・あぁ、癒される。
「ごめんごめんって。」
海原さんも笑いながら誤っていた。
「そういえば、女神様の苗字は何て言うんだ?」
「そういえば、言ってなかったね。有栖の苗字は『神代』だよ。」
どうやら有栖さんのフルネームは『神代 有栖』というらしい。何という事か、性格や容姿だけでなく名前にまで「神」と入っていたか。
「田宮君に至ってはもう隠すつもりすらないよね。」
「そんなことはないぞ、女神様。」
おっと、口が滑ってしまった。滑ってしまっただけだからそんな目で見つめないでくれ。
「それでは、ご注文はお決まりになられましたかお嬢様方?」
話をごまかすために口調を執事風に切り替えそう切り出す。
「私はこれと、これで。」
海原さんは一度、同じやり取りをしているのでスラスラと注文を教えてくれた。一方で・・・
「・・・。(ポカーン)」
女神様は先ほどのジト目から一転してくりくりとした目をパチパチして固まっていた。
「どうかなさいましたか、お嬢様?」
「あっ、いえ!何でもありません。」
その後、女神様の注文も聞き、俺は厨房にそのオーダーを伝えに行った。
「ねっ、すっごくカッコよかったでしょ!?」
「うん、すごくカッコよかった・・・。」
俺がいなくなった後に、二人の間でそんな会話があったのは知る由もない。
どうだったでしょうか。普段とは少し違った感じの文章にしてみました。なぜ、こんな文になったのかというと、女神様こと有栖の話を書いているうちに作者の内なる何かが解放されてしまった結果ですね。
読みずらかったら申し訳ありません。




