ゲームの説明
「ゲームってなに?」
舞は俺の言葉の意味が分からないのか先ほどの俺と同じように首をかしげていた。
「詳しく説明させてもらうぞ。まず、ゲームの期間はそうだな・・・今この瞬間から2学期いっぱいとしよう。舞の勝利条件は『澪と淳の信頼を勝ち取ること。』反対に敗北条件は2学期の終わりまでに勝利条件を達成できなかったら舞の負けだ。簡単なルールとしてはこんな感じなんだがどうだ?」
「それだと私が有利過ぎないかな?」
俺が説明を終えると舞は質問をしてきた。
「まぁ、そう思うのは個人の勝手だがそう思っている間は絶対に勝てないから安心しろ。」
俺が『絶対』と言い切ると舞がムッとしたのがよくわかった。
「絶対なんだ。」
「あぁ、絶対だな。」
お互いにしっかり目線を合わせながら会話していく。
「それに分かってるんだろ?淳はともかく澪に全部を話してもらったわけじゃないって事は。」
「・・・うん。」
俺が問うと、舞はあからさまに表情を暗くした。
「じゃあ、何があったか知りたいのなら勝ち取るしかないだろう。」
「うん、分かった。そのゲームを受けるよ。」
舞は言葉を続けた。
「あ、そうだ。もう一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「なんだ?」
俺の疑問の声を肯定と受け取ったのか舞はこんな質問をしてきた。
「翔君は私のことを信頼してくれてるのかな?」
舞は分かりきっていることを聞いてきた。
「はっ、それこそまさかだろう。」
俺はその淡い希望を無情に切って捨てた。
「どうせ、澪と淳があの二人にやったことも電話越しに聞いてるんだろう?」
二人というのは藤本とお嬢様のことだ。澪はいつも通りの態度で俺に察せられることはしなかったが、舞は別だ。舞は、あれ以来俺たちの前に姿を見せなくなった。最初は俺たちのことを嫌いになったのかと思ったが様子を見るにそうではないと思った。ならばなぜ俺たちから距離をとったのか。
答えは簡単。彼女もあの日の出来事を知ってお嬢様や藤本と同じように考える時間を欲したためだ。
「澪ちゃんから聞いたの?」
「いや、お前の様子から見れば簡単に想定がついたよ。もっとも、澪がなぜそんなことをしたのかは知らないけどな。」
俺がそのことを暴露しても舞にはまったくと言っていいほど驚いた様子がなかった。
「それといい忘れていたが今回のゲームに関して言えば俺はお前にアドバイスをすることは出来ない。」
「うん、それは分かってるから大丈夫だよ。」
「・・・だが、気が変わった。一つだけアドバイスをしてやろう。」
「・・・。」
舞は俺の言葉を聞きのがさまいと耳をすませる。そして俺は立ち上がると同時にそのアドバイスを送る。
「あの日、電話越しに聞いた言葉の意味をよく考えればおのずと答えは出てくるはずだ。」
あの日から俺は全てを捨てた、喜びも怒りも哀しみも楽しいという感情でさえも。
”俺には何もいらない、絶対的な信頼などこの世には存在しないのだから。”
最後の翔斗の意味深な言葉が今後にどう関係してくるのか楽しみに。




