計画(第3段階)
藤本と別れた後、そう時間もたたないうちに俺たちは自宅に到着した。藤本に動きがあれば連絡をする約束をしてから俺達3人は解散した。
「どうかしたのお兄ちゃん。」
俺の膝の上に頭をのせながらソファに寝転っている結衣がそんなことを聞いてきた。
「・・・なんでもないよ。」
「嘘だよ。」
俺はなんとか悟られまいと作り笑いを浮かべながら答えたがあっさり否定された。
「・・・。」
「ふふんっ、私に隠し事ができると思わないほうがいいよお兄ちゃん。」
俺があっさり否定されたことに呆然としていると結衣はどこか誇らしげにその言葉の理由を言う。
「そっか、結衣に隠し事はできないな。」
俺は観念してこれからのこと、そしてこれから起きるであろうことをすべて包み隠さず話した。結衣は話を聞いていくにつれて次第に表情を暗くしていった。
「・・・そっか、そんなことがあったんだね。」
「あぁ。」
結衣の呟きに同意の言葉を返すと突然、頭が何か暖かいものに覆われた。一瞬、戸惑ったが疑問の声は割とすぐに出てきた。
「でも、仕返しをされちゃうのはその人たちの自業自得じゃないの?」
「それでも、俺は・・・。」
俺が言葉に詰まっていると結衣は俺の頭をさらに強く抱きしめた。
「私はね、そんな誰にでも優しいお兄ちゃんが大好きだよ。」
「・・・。」
俺は何も喋らずされるがままにされる。
「大丈夫、お兄ちゃんは間違ってなんかいない。澪さんも淳さんもきっとそう思っているはずだよ。だから、お兄ちゃんはそのままでいいんだよ。私が保証する。」
そういい終えてから結衣は俺の頭を開放した。
「・・・ありがとな。」
俺が気恥ずかしくなり短めにお礼を言うと結衣は「うん!」とうれしそうにまた俺の膝の上に頭をのせてソファに寝転がった。
5分ほどそのままでいると淳からメッセージが届いた。
淳『さっき藤本さんから電話で告白されたよ。』
澪『計画通りだね。』
俺は特に返事をすることもなくただそのメッセージを見ていた。
淳『・・・どうしたの翔斗?』
俺『もうやめにしないか?』
澪『じゃあ、約束はどうするの?』
俺『もう終わりで構わない。』
澪『・・・私は構わないよ。』
澪は間髪入れずに返事を返す。
淳『僕は許さないよ。』
しかし、淳はその提案を是としなかった。
淳『次からは別にこの約束を終わらせてもいい。でも、今回だけは駄目だ。あの二人だけは許さない。』
淳は珍しくそう断言した。メッセージなので淳の顔を見ることはできないがおそらく俺たち以外のクラスメイトの誰にも見せたことのないくらいの険しい顔をしていることだろう。
俺『わかった。それで構わない。』
淳『うん。じゃあ、計画を実行するのは明後日という事で。』
そこで俺たち3人の会話は終わった。なんとかこれから起こる悲劇を回避しようと思ったが俺にはできなかった。
「お兄ちゃん・・・。」
会話をしている時の俺の会話からすべてを察したのか結衣が心配そうに俺の手を握ってきた。
「大丈夫だ、心配いらないよ。」
俺も結衣を安心させるために手を握り返す。
そして、俺は心を締め付けられるような感覚にあいながら夜は更けていった。




