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早朝訓練

 翌日、朝食を終えた私は訓練場に向かった。


「遅い! 朝イチだと言っただろう!」


「ナジーラが早いんだよ! 私だって朝ごはん食べてからすぐ来たんだから! あ、もしかしてそんなに楽しみだったの?」


 にやにや。


「当たり前だ! 日の出前に目が覚めたほどだ。さあ教えてくれ! まず何からやればよいのだ!?」


 日の出前って、それ普通だよ。でも何だか嬉しいな。こいつって意外に素直なんだね。


「じゃあ昨日は火の魔法を見たから今日は水の魔法を見せてくれる? もちろん最低の威力でね?」


「任せろ。おっと、あの上まで離れておいてくれ。あそこだ。あの高い所にな」


「あんなところまで?」


 言われたからには行くけど……


「そこでいい。では見ておいてくれ!」


水滴(みなしずく)


 え……何これ……

 一面水びたしになってる……まるで池みたい……こんな広い訓練場なのにナジーラの首まで水がきてるよ……

 初級魔法の水滴だよ? 私だったら手から水が一、二滴しか出ないような魔法なのに……


 あ! もしかしてこれ? おねしょで火事を消したっていう……


「どうだ! いつもより被害が少ないぞ! 魔力も二割は残っている!」


 いつもはどんだけなの!?


「すご……いやいや! 全然だめ! じゃ、じゃあ私がやるから見ててよ!」


「くっ……いいだろう。見本を見せてみよ!」


「その前に……この水どうする気?」


 これじゃあ降りられないよ。それに、いくら広大な王城だからってこれだけの水が漏れたら大変なんじゃ……


『魔力消散』


 あ、消えた。今のは誰の声だろう?


「マナドーラ、ご苦労であった! よし。これで文句はなかろう?」


 マナドーラ……? まあいいや。


「だいたい横着して詠唱しないのがだめなんだよ。丁寧にやらないとさ。」


 うふふー。私偉そーう。わざわざ詠唱なんてするのは習いたての子供ぐらいのものなのに。


「見ててよ!」


『キーミョーム・リョージュ・ニョーライ

 水よ その姿を表せ 水滴(みなしずく)


 私の指先から水滴がぽた……ぽた……とわずか三滴。我ながら情けなくなるけど……


「うぬぬ……なんという繊細で丁寧な魔力行使を……もう一度だ! もう一度やってみせてくれ! 今度はその魔力の流れをしっかりと感じ取ってみせる!」


 うわぁ! 手! また手を握ってくるし! ま、まだ結婚してないのに! ナジーラ大胆だよぉ!


「よし、これでいい。さあボニーよ! もう一度だ!」


 あ、そっか。魔力の流れを感知するためね。べ、別に勘違いなんかしてないもん……


『キーミョーム・リョージュ・ニョーライ

 水よ その姿を表せ 水滴(みなしずく)


 今度は二滴……


「ほう……やはり素晴らしいな。これほどに繊細な魔力制御はかの七色の魔法使いイタヤ様にもできまい……だが、もう一度だ。お前の魔力は繊細すぎて俺でも感知が難しいからな」


 繊細なんじゃなくてしょぼいだけなんだけどな……うわぁ! ちょっ! 顔! 近いって! 額が! コツンって! うわうわうわ!


「さあやれ! こうやって直接魔力の流れを感じ取ってくれる!」


 あ、そ、そうだよね……体内の魔力の流れを感じ取るには額かおへそが一番だもんね。でも普通は手を当てるんだけど……どんだけ私の流れを見たいのよ……ちょっと恥ずかしいんだけど。


『キーミョーム・リョージュ・ニョーライ

 水よ その姿を表せ 水滴(みなしずく)


 あっ、六滴も出ちゃった! な、ナジーラがいけないんだから!


「なるほどな……興味深い流れだったぞ。針のように、いや、もっと細い。魔力回路を極限まで絞り込むことで繊細な魔力制御を可能としているわけか……」


 知らないって! 六滴でもかなり多い方なんだから!


「ま、まだやるの?」


「当然だ。俺が満足するまで付き合ってもらうぞ! さあ次だ!」


 だから顔が近いって! もう! あ、よく見たらギョロっとして変な目だと思ってたけど……意外と凛々しくない? なんというか……意志の強さを感じるっていうか……うわぁ肌も超きれい……すべすべしてそう。私の黒い肌とは大違いだな……


 やっぱりナジーラにはトレイナちゃんみたいな白くて丸い子がお似合いだよね……

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― 新着の感想 ―
[一言] おもしれー女( ˘ω˘ )
[一言] どハマリされてますね。 本人は気づいてませんが。
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