旧王家の姫トレイナ
うふふー。お昼の食事も美味しかったなぁ。だいたい朝と夜だけで足りるわけないんだからさ。それにたくさん食べてキャサリン姉上みたいに丸くなりたいしなぁー。
さて、また書庫に戻ろうかな。まだまだ面白そうな本がたくさんあるし。
ん? 前から集団が歩いてくる。うわぁ、真ん中の女の子ったらキャサリン姉上より丸っこい。いいなぁ……素敵だなぁ。ああ言うのを古い言葉で『こんころ丸い』って言うんだよね。私もあんな風になりたいよ……おっと、端に寄っておこっと。
「待て。そなた最近来た女子よの? 名は何と申す?」
うわぁ! 話しかけられちゃった! 声まで丸っこくて可愛い!
「妾はボニベリア・グレブリントである。そなたこそ名を聞かせてくれぬか?」
友達になりたいよぉ。なのについよそ行きの喋り方しちゃった……
「まあ! 旧ドナハマナ王家の姫たるトレイナ様をご存知ないなんて!」
「グレブリントですって! 絶海の孤島じゃない! 田舎者ね!」
「うわぁ、それでよくトレイナ様に対等な口をきけたものね!」
は?
「よいよい。知らなば教えてやろうではないか。妾の名はトレイナ・ド・ドナハマナである。グレブリントのような田舎から来たばかりなら右も左も分からぬであろう。どうじゃ? 妾が導いてやろうではないか。ん?」
えぇー……
「トレイナと申したか。妾もそなたと仲良くしたいのは山々なのだがな。取り巻きの躾がこうも悪くては友誼を結べぬ。真っ当な躾が終わったら声をかけてくれるか?」
「なっ!? そ、そなた! ドナハマナ王家の血を引く妾に対して何たる不遜! 何たる無礼! そのような態度で後宮で生きていけるとでも思っておるのか!」
私だって仲良くしたいよぉーー! でもこいつら最低だよ! グレブリントを田舎だって! そりゃあ間違ってないけどぉ! だからって面と向かって言うなんてあんまりだよぉ! せっかく友達になれると思ったのにぃ! ぐすん……
「これ以上話すことはないようだ。トレイナよ、躾が終わる日を楽しみにしておるからな」
「田舎者の分際でぇ……覚えておれよ?」
うう……怖いよぉ。いじめられたらどうしよう……トレイナちゃんって旧王家だけあって魔力が大きいし。その気になったら私なんか一瞬で殺されちゃうよぉ……
ああっ……そんなに睨まないでよぉ……丸くて可愛いお顔が台無しになるよぉ。
はぁ……嫌なことはあったけど、本っていいなぁ。大昔の出来事なのにこうやって知れるって最高だね。楽しいなぁ。
それにしてもナジーラにどうやって教えようかな。繊細な魔力制御って言われたけど……とにかくケチってるだけなんだよね。とりあえずそこからかな? 魔力が大きい人って後先考えずにあるだけ使いがちだから。倹約ってものを教えてあげないとだめなのかな?




