ローランド王国史
マリーさんは書庫の中までは来てくれなかった。当たり前か……
一人でがんばるしかないね。
それにしても、文字も言葉も同じってのはありがたいなぁ。うちの国は多少なまってるぐらいで。
私にできること……
農業も漁業もうちみたいな小さい国よりよっぽど専門家がいそうだし……
力仕事は……できなくはないけど男に負けるかな?
私の魔力は低いし……
困った……
とりあえずローランド王国史でも読んでみよう。
へぇー! 現国王のサイファル陛下のご結婚って二十六年前なんだ。当時はまだ王太子だったんだぁ。ほへぇー! しかも王妃のタスクレア様って七色の魔法使いイタヤ・バーバレイ様のお孫さんだったの!? 勇者王ムラサキ公と共に大陸の統一に尽力した四英雄の一人イタヤ様の!
ナジーラのお母上ってそんなすごい方だったんだ……そりゃあ私なんか相手にされないよね……はは……はぁ。
ふーん、ナジーラが生まれたのが二十年前か。えらく遅いんだね。あいつ第一王子だよね? 実は夫婦仲が良くないとか?
ていうか勇者と英雄の血筋って反則だよ……あいつどんだけすごいの……そりゃあ私の微妙な魔法にも気付くのも当然なのか。すごいなぁ……はぁ……
「何ため息をついている?」
「うひゃい!?」
ま、また出たナジーラ!
「さっそく勉強か。やるではないか。で、ため息などついてどうした? 何か困っているのか?」
「べ、別に困ってはおらぬ。そなたこそ……このような場所で何をしておる……」
「本を探してるに決まっている。書庫だからな」
そりゃそうだ……
「なんだ? お前に会いに来たとでも言って欲しかったか?」
「ち、違う! 別に妾はそなたのことなど……」
「俺のことなど? おっ、ローランド王国史を読んでるのか。感心だな」
「ふ、ふん。そなたと結婚する身なれば当然であろう……」
なんで私なんかと結婚するんだよ。美貌も魔力もまるで足りない私なんかと……
「それもそうか。それなら教えてもらおうか。結婚するのだから構わぬだろう?」
な、何を……?
私の経験を聞かれても何もないのに……初恋だって記憶にないぐらいだし。
「何なりと言うがよい。妾達の間に隠し事など必要なかろうて」
つい……強がってしまった。そりゃあ聞かれたら何でも話すつもりだけどさ……
詳しいローランド王国史はこちら。
https://book1.adouzi.eu.org/n5466es/934/




