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ヘタレの努力家  作者: りばーしゃ
第2章 王都〜ミーション〜
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ギルドの日常




「だーっくそ!負けた!」




 一人の男がガラ付きのカードを数枚、丸いウッドテーブルに叩きつけて叫んだ。


 それに対して対角線上に座る男は笑みを浮かべてそのカードを集めながら口を開く。




「へっへっへっへー。わりぃな、この楽な依頼は貰ったぜ」




「おお、ならオレと一緒に行こうぜ。夕飯奢ってやるからよ」




「おいおい、お前便乗かよ。さぁ、行くぞ。俺らはめんどくせー採取だ。日が暮れる前にな」




「うげー…ちくしょう。今度こそ勝てると思ったのに…さらば簡単な護衛依頼……」




 がたがたと騒がしくカードや飲み物を片付け、男達はその場を後にする。


 各々の装備(あいぼう)を腰に、胸に、肩に、背中に(たずさ)えて。


 これはギルドの日常にある例の一つである。




「おーい、飲みもんこっちにたのむわー!エール頼むー!」




 からりとした笑顔で、黒髪の女性が手の開いた店員らしき人に注文を飛ばした。


 艶やかなウェーブが付いた黒髪は肩には掛からないほどの長さであり、急所のみを防ぐだけの露出の多い鎧を身に纏った傷だらけの身体は筋肉質で、可愛さよりも美しさの方が勝る。


 はあい、と店員の簡単な返答の後に続いてその女性に声を飛ばしたのは筋肉でギチギチの黒い腕を剥き出しにしたゴリラの獣人の男性だった。




「お、ポプラの(あね)さん今日はもう仕事終わりかい?」




 真っ白なノースリーブにゆったりめのサイズで動きやすそうな深緑色のツナギを来たゴリラの彼は気さくに、よう、と片手を上げる。


 上半身のツナギははだけ、紐のように袖部分を腰元に結んで邪魔にならないようにしてあった。




「おー、カルロ。今日は依頼のヘビーベアーぶっ倒したからもう上がりよ。〝例の四人〟が良いオトリになってくれたから楽だったよ。あっはっは」




「ああ、〝例の四人〟と一緒だったのかい。ヘビーベアーとは災難だったろうに。彼等はどうしたんだい。ん、乾杯」




 女性等よりも太い腕やがっしりとした体格よりも知的な雰囲気を漂わせ、店員から香りのよいエール注がれたジョッキを受け取った〝姉さん〟に自分のをガチンとぶつけた。


 ヘビーベアーとは中型の魔物で生態を荒らす、害ある種類である。


 大きさは普通の熊より一回り程大きく、その重く、痛みの感じにくい体質で獲物をひたすらに(むさぼ)り続ける。動きの遅い家畜や、装備で動きの鈍った人族はひとたまりもない。


 また厄介な事に猫足のように〝足音〟がしにくく、少し発達した知能で背後から襲いかかる為、そのデカい図体の割りに森などでは強敵となる。


 (ゆえ)に馬車の護衛などがしばしば餌食になる事も多く、害ある魔物として度々ギルドでは発見されしだい依頼が来るのだ。


 したがって素人には荷が重く、玄人(くろうと)も油断は出来ない。




「乾杯。アイツらなら全員無事だよ。流石大会に出ようとしただけはありやがる。心配しなさんなカルロ、そろそろ来るさ…んっ……っくーーー!美味い!!やっぱここのエールは格別だねぇ!!」




「ほらツマミやるよ、木の実の塩焼き、燻製(くんせい)仕立て」




 流し込むエールの余韻(よいん)にテーブルをぱんぱんと叩く〝姉さん〟に、〝カルロ〟と呼ばれたゴリラの獣人は自分も一口食べながらその皿を進めた。




「さんきゅー。多分バルムん所で飯でも食ってんだろ。『男にゃあ心より舌を掴め』って死んだばーさんが言ってたのが良く分かるよ。あたしゃー無理な話しだけどね。魔物をこの戦斧でかち割って酒飲んでる方が性に合ってさ」




「ああ、なるほど。ちょっとした祝勝会か。姉さんはそれで良い、それで助かった人等がいるんだ。やさぐれる必要は不要だ」




「ありがとよ。そういや〝例の奴隷商〟の手がかりが見つかったって?」




「ああ、ギルドマスターが持って来た。〝噂の異世界人〟が奴隷を運良く助けた際に保存しておいたらしい。今も調べている最中だ」




 ちょうどポプラが来る前にそうギルドマスターから直接聞いていた。


 ようやく──掴める、ヤツらの実態を、と。




「【異世界人】ねぇ……てっきりあたしゃー〝あん時〟みたいなバカばっかりだと思ってたよ。まぁ、この国で真面目に働いてる奴もいるのも分かってるけどさ。大会の仲間が欲しいだとかで女ばっかり声かけてる【異世界人】以外のちんこ野郎も居たし。次会ったら潰してやろうかな、玉を」




 その言葉と同時に木の実を指でパキンと砕く姉さんにカルロは苦い顔で笑う。


 ああ、あの赤髪の男の事だろうなと。




「彼は今もその助けた鬼人族の少年と一緒に行動してるらしい。少年はナギナのいとことの事だ」




「へぇ!ナギナのかい。あの純情バカのねぇ……そうか、通りで近頃のあいつのツラが余計青く見えたワケだ。あいつも出るんだろ?大会」




「ああ、今回はヴィレットともう一人牙狼族の男性を入れた三人組で出場するらしい」




「…そのもう一人の牙狼族がすっごく不憫(ふびん)に思えるよ。さっさと爆発しねぇかなあの二人。前回みたく、ヴァネッサ姉さんとヴォルグのコンビにぼこぼこにされりゃあ良いのに」




 前回大会優勝者は牙狼族副隊長であるヴァネッサと特攻隊長であるヴォルグのコンビだ。


 ヴァネッサはその大会優勝の景品としてオーダーメイドの武器を手にし、ヴォルグは現在の妻であるヴェリスリアに告白し、後にヴァインを授かった。


 なお、初代大会優勝者は牙狼族族長ヴァサーゴと鬼人族族長タナ、亜人混成国【ミーション】ギルドマスターであるファウスト、そして国王ハウィ・ロクソドンタの四人組である。




「今回はヴァネッサ姉さんとヴォルグは不参加だからなぁ。いやぁ、今でも思い出せるよ。あの狂狼ヴィレットの猛攻を捌ききり、鋭い蹴りを繰り出したあの一瞬の戦い。ナギナとヴォルグのお互いが思う愛がぶつかり合うような激しい戦いも見事だった」




「あれは熱かったねぇ…ボロボロになりながら勝利しての告白…あんなんされりゃあそらぁ堪んないね。知人でもあるギルド員にとっちゃあ伝説の試合だよありゃ。はぁ〜あの二人の子供なんてそらぁ良い子だろうねぇ〜」




 エールとツマミを交互に口に運びながらポプラはぐでんとテーブルにもたれかかった。




「今度連絡してみようか?ちょうど趣味の燻製を送ろうと思ってたんだ」




「本当かい?そりゃありがたいねぇ〜…あー酔って来た酔って来た。あ〜〜」




 と、そんな会話やらが交わされる中、ギルドの扉が開く音と、男と少年、謎の生き物の声が聞こえて来た。




「にゅ?にゅ?ふにゅー?」




「こらシラタマ、キョロキョロしないの。ああ、いい匂いが…そう言う事かー」




「おお、ここがギルドか…!……ん、なんでみんなこっち見てんの?」




カナタ


「この雰囲気どう思うルギくん」




ルギ


「どう思うシラタマ」




シラタマ


「にゅ?」

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